第百九話「謎の組織 タランチュラ」
次々と報告される衝撃すぎる報告に続く最後の衝撃の報告。
それは、まさかの謎の組織という本当に謎の回答である。
「もう薄々分かっていると思うけど・・この世界・・もう普通じゃないのよ・・もちろん現実って事には変わりないのよ?ファンタジーになったとか・・急にSFが始まったとかじゃない・・私の世界は正真正銘・・裏組織によって日常を阻害されてんのよ」
「日常の阻害?!」
「堕舞黒は根っからそういう腐った野郎なの・・私達の人生がどうなろうと知ったこっちゃなし・・だからこそ・・裏社会の番人とも言われている【タランチュラ】・・まあテロ組織みたいなモノよ、内実は金の変わりになんでも引き受ける野郎だとか聞いたけど」
タランチュラ・・恐ろしい組織だというのは名前だけでも十分伝わる。
彼の様な奴に平気で従うどころかそのテロだとか金で動くというだけでも。
十分すぎる悪臭・・というより悪ソノモノの組織と見て良いだろう。
なるほど、俺達の学園生活も理事長の親子も果てに施設の子も。
みんな・・みんなそいつらに・・本当に許せない。
「・・分かったかしら・・まるで夢の様な絵図であり・・現実性のかけらもない話だけど・・これが【現実】よ・・私達は・・事実・・堕舞黒に支配されたの」
「・・ありえんな・・ちょっと頭が割れそうだよ」
「分かるわ、私も最初はこんな内容受け止められないって思ったの・・けど仕方がないのよ」
「・・お前の場合は・・人質がいる・・もんな」
「ええ、そう・・あの子達は・・あの人達は・・私の可愛い可愛い子供同然・・家族みたいなモノよ・・私が見捨てられるはずもない・・エロガキにたとえ肉便器にされても最後まで守り通すわ・・私は・・これでもあの子達の家族なのだから」
家族・・か。
俺にも妹が・・今でもいるよな。
きっとコイツの下の子達、そして上の人達。
きっと全部コイツの家族だ。
コイツにとってかけがえのない人達。
いつまでも一緒にいたい人達。
そうに違いないんだ。
「・・ごめんなさいね」
「えっ?」
急に静かにほくそ笑み、また悲し気に顔を下に向ける。
とても切なそうにする海王咲。
「難しい・・話・・させちゃったわね」
「いや・・全然そんな事・・ねぇけど・・」
「そう?ならいいんだけど・・」
「・・・」
俺はどうしても突っかかる部分がある。
それはコイツが家族の為と思って必死になる理由の他に。
実はもう一つ、コイツの中で何か引っかかる部分がある。
そう、動機だ。
それ以外にも何か・・大切な動機があるんじゃないか?
俺にはあの悲し気な顔がどうしてもそう見えた。
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