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Machine Smith  作者: 真田 貴弘
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 何処かの薄暗い部屋。 丸い頭に白いボディを持つ其れは、2mもある二つの透明なカプセルの前で恭しく膝を付き、そのカプセルの中のモノに対してまるで祈るようにブツブツと呟いている。


『……もう少しお待ち下さい。 もう直ぐです。 もう直ぐ……』


 そして、それは表情を変える事が決して無い顔で、しかしその中には熱い思いを回路(むね)に秘め、己の望みを叶えてくれる神の下へと向かうのであった。


✦


 俺は深夜、ベランダで星空を見ながら毛布に包まっていた。

 環境が変わり中々寝付けないでいたので気分転換も兼ねてそうしていた。

 此の神域とやらは温暖で夜でも外では快適に過ごせる。

 

 星が瞬いてとても綺麗だ。 俺がガキだった頃の日本の星空を想い出す。

 その頃はまだ、光の弱い等級の星の輝きも肉眼で良く見えた。

 特に夏の夜空はミルキーウェイが圧巻であった。


 故郷を思い、少し感傷になっていると扉をノックする音が響いた。


『マサキ様、起きてらっしゃいますか?』


どうやらシナモンが部屋を訪ねてきたみたいだが今は放おって置いて欲しい。


『マサキ様、ミルクセーキをドアの前において置きます。 宜しければお飲み下さい』


「……」


足音が部屋から遠ざかる。


 あのペッ○ー――いや、シナモンはどうやら俺がまだ起きているのに気づいている。

 先代のマシンスミス、確かジルさんだっけか? シナモンを作った女神様は中々優秀な方だった様だ。

 一度くらい会ってみたかったな。


 シナモンが気を利かせて入れてくれた暖かいミルクセーキを飲み干し、床に就いた。


 ――翌日、ユティーファが嫁入り道具を持ってやって来た。 と、いっても小さな革のカバン一つだけ。

 不思議に思い、他に荷物が無いか聞いてみたら、


「このカバンは工芸の女神様から頂いた物で、どんな物でも際限なく入れることが出来るんです!」


 と教えてくれた。


 何其れ、凄い便利! 俺も一つ欲しい!


 俺の心の声が顔に出ていたのか隣に居たシナモンが、


『其れなら確かジル様の工房に一つ、素材採取用の物がありますので後でお持ちします』


 と気を利かせ言ってくれた。


  工房か……。 昨日シナモンが部屋を案内してくれた時、チラッと見てみたが色んな物が置いてあった。 どんな物があるのかじっくり見てみたい。

 

「それなら俺も一緒に行ってもいいかな? 俺も先代がどんな物を作っていたか興味があるから」


『承知しました。 ジル様が御作りになられた物をワタクシが御説明致しましょう』


「頼む」


 ユティーファは早速、実家から持ってきた荷物を自分の部屋に置きに行く。

 一応、俺はユティーファの夫として家具等大きく重い物をユティーファの希望する場所に動かし配置してから先代の工房に向かった。


 此の家は中世ヨーローッパ風の石造りの建物で、地上三階、地下三階の構造になっている。

 工房は家の地下部分にあり、作業は地下一階、図面や資料は地下二階、素材や先代が作った絡繰りの完成品は地下三階の棚に収められていた。


 シナモンの話しでは先代のジルさんは手先が器用で精緻な小物を中心に作っていたらしい。

 

 先代が使っていた採取用の入れ物――革製のポシェットも地下三階の収納棚にあった。


 シナモンの説明では先代は武器も作っていてハンドガンやライフル、鞭のように変形する剣や銃と剣が一体化した物等の絡繰り武器が保管されてあった。


「ん?」


 その中にどう見ても武器には見えない一揃の白色の指貫グローブが、棚の奥の隅っこにポツンと仕舞われていたのを偶然見つけ、手に取って見る。


 俺の心の中の好奇心が刺激され、試しに手に嵌めてみる。

 矯(た)めつ眇(すが) めつしていたら行き成り手の甲と前腕に白銀色の金属製の手甲が展開した。


「うわっ、ちょちょっ!?」


 驚いて思わず頓狂(とんきょう)な声を上げてしまった。

 そんな俺に此の道具についてシナモンが解説してくれる。


『其れはウエントリヒと申します武具です。 手の甲に回路が刻まれた核が装着者の思考を読み取り、手甲が展開し其処から理力を吸収、理力を半物質(此処では半分理力、半分理力の塊が結晶化した物)に変えて様々な武具を瞬時に生み出す手袋型の道具です。 威力や強度は装着者の位階に左右されます。 ちなみに此のグローブは戦神アーダ様の御子息であらせられる武神ソーダ様、闘神コーダ様の二つの神器を参考にジル様が御作りになられました』


 試しに刀を想像すると手の中に薄紫に淡く輝く鉱物の様な結晶製の刀が瞬時に形を成した。 要らないと思うと結晶の刀は瞬時に消滅する。


「これいいな……」


 腕に装着された手甲をしげしげと見詰めながら思わず呟く。

 持ち歩くにも嵩張らない護身用の武器には最適だ。


『では、マサキ様がお使い下さい。 その方がジル様もお喜びになられますから』


「じゃあ、有り難く使わせてもらうよ。 ……只、サイズがちょっと小さいな」


 先代のジルさんの手に合わせて作られている為か、ウエントリヒは俺の手より一回り小さかった。


『工芸の女神リンド様にお願いしてサイズを直して頂きましょう。 そのグローブ部分はリンド様が御作りになられたものですから』


俺はユティーファに工芸の女神リンドさんの所に行く旨を告げ、シナモンの案内でリンドさんの下へと向かうのであった。


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