悪魔は美しかった
カイ!初陣は俺に任せとけ!悪魔どもをぶっ殺してやるよ!
俺の手は震えていた
突撃してきたソーヴァ自由国の兵士を撃ったからだ
訓練では平気で何千発と撃っていた機関銃
なのに本番になると引き金を引くのに数秒かかった
俺は…ジェス・モーゲルは…初めて人を殺した
「ジェス!初めての初陣なのに一個小隊規模の突撃を防いじまったな?流石だ!」
親友のカイが話してくるが反応できなかった
ソーヴァ自由国の人間
だがその姿を見た時、俺は…美しいと思ってしまった
最初に目に入った白髪ロングの悪魔は目に涙を浮かべ叫びながら一直線に突撃してきた
涙を浮かべていた目には憎悪もあったが…
それよりも生きたいと言う感情がその目にはあった
美しかった、顔立ちも揺れる髪もだが…その目が青く透き通るような目が美しかった
俺は美しい悪魔を撃ったのだ
「おい!お前らも手伝え!次の攻勢が来るまで片付けねぇとダメだからな!」
上官の声が耳に入った
カイの手が俺の肩に置かれる
「ジェス、行くぞ」
機関銃を置き腰の拳銃を取り出す
「あ、あぁ…分かった」
俺とカイは土嚢を飛び越え死体の山に近づいていく
死体はソーヴァ自由国の人間ばかりだった
四肢が無い死体、頭が吹き飛んでいる死体、銃を握ったままの死体
自分が撃ったやつも撃ってないやつもいる
だが機関銃手の自分が撃った奴が殆どだろう
そんな事を考えながら死体を漁る
カイは死体からタバコを発見して吸っていた
「1本吸うか?」
カイが箱から1本タバコを出しジェスに渡す
何も言わず俺はそのタバコを取り口に咥える
そしてマッチを取り出し火をつける
煙が上がっていく
(クソ不味い…だけど落ち着く)
タバコを吸いながら周りを見渡す
周りでは生き残ったソーヴァ自由国の兵士を要塞に連れて行ったり助からない奴にはナイフでトドメを刺している
死体の物を漁って笑って戦利品を自慢している奴もいた
俺はタバコを捨て立ち上がり、あの死体を見に行く
陣地から三十メートルぐらいに美しい悪魔は居た
うつ伏せになっていたが髪の色で分かった
肩、足、腹から血が出ている
美しい悪魔の前にしゃがみ仰向けにさせる
「…若いな」
その顔はまだ若かった
18歳になったばかりなのか…それとも詐称で入ったのか…
俺は無意識に手を伸ばしていた
顔に触れた時、気付いた…
「ッ!?まだ生きてる?!」
急いで脈を測る
弱い、ものすごく弱い脈だが生きていた
「おい!まだ生きてるヤツがいる!衛生兵呼んでこい!」
周りの兵士が怪訝そうな顔で見てくるが腕に赤十字マークを付けた衛生兵のおっちゃんが走ってくる
「どいつのことだ?まさかこの嬢ちゃんじゃないよな?」
ゆっくり首を縦に振ると衛生兵のおっちゃんはため息をつきながら応急処置を始めた
「綺麗な嬢ちゃんじゃねぇか…死ぬには勿体ねぇな」
応急処置を終えた衛生兵のおっちゃんは立ち上がり俺の方を向いた
「良いか?生き残るかは分かんねぇ、この嬢ちゃん次第だ」
衛生兵のおっちゃんはそれだけ言い終えると腰に装備していた
スキットルを手に持ち飲みながら要塞に帰っていった
俺は美しい悪魔の装備を外し、瀕死な体を背負って要塞に歩き始める
捕虜として連行されてる中には小隊長クラスの奴もいた
あいつらがもう一度、攻めて来たら俺は…
撃てるのだろうが、今背負ってる悪魔達を…
…悪魔は美しかった




