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4章 Debris(3)
何もなかった。
――正確には『何かだったもの』はあったけれど。
実際、アナンはその焦げて燻る木片を生家だと認識するのには多少の時間を要した。
壁も床も屋根さえも、ありとあらゆるものは炎に食べつくされた後だった。
そして、父さえも。
「……父さん」
異質な棒のような何か。それの正体に気付かないような子供でいられたらよかったのに。
ぬるい涙が一筋頬を伝う。嗚咽とも慟哭とも違う静かな悲しみがそっと彼を包んでいく。
衝動に駆られるようにアナンは瓦礫をどかして地面を掘った。微熱を帯びた大地の下の冷たい土に届くまで。
一掬いの土をそっと大切な人の亡骸に被せる。焼け残った木片を墓標のように立てて、アナンはやっと立ち上がった。
「父さん……ごめんな、必ず戻るから。だから……」
今はどうか、安らかに。
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