4章 Debris(2)
ほどなくして彼らを出迎えたのはかつて門だったものの残骸だった。
門は現世と異界を繋ぎ隔てるものだとどこかで聞いた。白昼の下で見るそれはもはやその役目を終えた亡骸と呼ぶに相応しい。
空だけを見てなんとかそこを潜り抜ける。一息つきかけたのも束の間、乾いた枝の折れるような音が響いた。
「……え……」
恐る恐る足を上げたキケの顔が引きつっていく。それだけでアナンには全ての事情が察せられた。
「……人の骨だ」
瓦礫の中から覗く、空をつかむような誰かの指の残り。これが昨夜の大火事のせいでないと、誰が断言できるだろう。
「あ、……ああ……」
キケの声は誰へ向けられたものでもない。強いて言うなら空だろうか。
「……なあ、信じられるか? 先代の長老が亡くなった時にさ、三日三晩かけて燃やしただろ。それが、たった一晩で……人が骨になるなんて……」
「……」
信じられない、いや、信じたくない。村人達の顔を一つづつ思い浮かべる。あれだけ見知った人達のはずなのに、目の前のこの残骸が誰なのかさっぱりわからないのだ。
何か言う代わりにアナンはしゃがみこんでそっとそれに土をかけた。
「……キケ。行こう」
親友がとぼとぼと後ろに着いてくるのを確認しながら、できるだけ下を見ずに歩く。
寝付いていたであろう子供達が、足の悪い父が、逃げることなど出来ただろうか。
不吉な、しかし恐らく確実なその考えを追い出すように頭を振って、アナンは自宅へ、キケは孤児院へと足を進めた。
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