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4章 Debris(1)


 翌朝、二人は連れ立って家を出た。

「いってらっしゃい、お兄様、アナンさん」

「ああ、行ってくる。悪いが、イスフィを頼むよ」

 見送るユリアもどんどん遠ざかっていく。まとわりつくような朝霧の中、これといって話すことも思いつかない。昨晩見た少年の話を聞いたキケが万が一のために、と持ってきた剣が小刻みに揺れる。

「……そういえば、仕事はどうなんだ?」

 当たり障りのない話題を出したのはアナンの方だった。

 村を出てから、キケは鉱物を売って暮らしている。石のことなどさっぱりわからないが、どうやら彼は腕が立つほうらしい。

「贅沢できるほどじゃないが、まあ順調といったところかな」

「それは何よりだ。……それにしても都会に住む人ってのはどうして変な装飾ばかり欲しがるんだろうな」

 彼らが言っては元も子もないが、実際魔物の牙やら爪やらを加工したものを有難がる人というのはどうにも理解し難いものなのだ。きっと彼らはとどめを刺した時の夥しい量の血や耳を劈くような唸り声も聞いたことがないからに違いない、というのがアナンの持論である。

「いやいや、なんだって飾りにするわけじゃないぜ。例えば鉱物には収集家がいるんだよ。この辺りの鉱物は珍しい種類だとかで、そういう人達に人気があるのさ」

「そういうもんか……」

 この世はまだまだ広いらしい、とお洒落にも学問にも興味のないアナンは思う。なんとなく彼は目の前の小石を爪先でつついた。道端に転がるこの小石すら、誰かにとっては価値があるものなのだろうか。その行方を目で追いかけて、アナンは気付いた。

(あれ……)

 見慣れた帰り道。そのはずなのに、知らない山が、木が見える。

「……アナン」

 二人は気付いた。今までそれらを覆い隠していた人工物はたった一夜で灰と化してしまったのだ。

(もうこれは……俺の故郷ではない)

 呆然と立ちすくむキケの前でそんなことを言えるはずもなく、ただただアナンは歩みを速めた。


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