第11話 ぼっち陰キャとマドンナの拒絶
「え〜〜〜〜〜〜〜〜」
と教室中を驚いた声が包んだ.そして教室の後ろの方にほとんどの生徒が集まってきた.男子は主に龍弥の方に、女子は由紀の机の周りに集まりそれぞれに質問攻めをし始めた.
「お前、高野さんと付き合い始めたってどういうことだよ!」
「どういう経緯でそうなる⁉︎」
「催眠術か⁉︎催眠術なのか!」
と、失礼極まりないことを言ってくる連中の声を聞き流しながら適当に相手し、主に女子たちの質問攻めにあっている由紀の方を見ながらその質問内容に耳を傾けていると、
「ねぇ、どういうこと!昨日何があったの?」
「男だよ!大丈夫なの?」
「それより、昨日の先輩は?」
とこちらの内容とは打って変わって大体は由紀の心配をしたものであり、その他も普段一緒にいるのに教えてもらえなかった人たちの質問などであった.それに対して由紀は、
『ごめんね、みんな.こういうことは直接伝えたくて』
『あと、龍弥は大丈夫だよ!』
といった感じで返事していた.
何人か龍弥と同じように由紀達の方の会話を聞いていた、男子は由紀の口から『龍弥』と呼び捨てかつ下の名前で呼んでいることを聞き、膝をゆっくりと曲げて崩れ落ちていった.
そんな調子で騒がしくなった教室に、8時半から少し遅れて担任の桂井先生が入室し
「お前らぁ!何をそんなに騒いでいる!HRを始めるぞ、早く席につけ!」
と、注意をしたために、まだ不満のある生徒も多くいたが担任に逆らうわけにもいかず渋々それぞれの机に戻っていった.
一時的であるが質問攻めが終わったためにため息をつく龍弥を見ていた由紀が、こちらに少し机を近づけて、本日の連絡事項を行なっている桂井先生にバレないような小さな声で話しかけてきた.
『ごめんね.こんなことになっちゃって.』
と申し訳なさそうに謝ってきた.
「そんな、由紀が謝ることないよ.」
『でも朝からこんな感じだと、多分今日は一日中こんな感じだよ.』
そのことを聞いて、嫌な気分になったり優越感が芽生えたりした複雑な気分になったが、ここで少しでも嫌な態度を取ると由紀を悲しませてしまうのが目に見えてわかってしまったため、
「いいよ、由紀は気にしないで!由紀とのことだから全く嫌じゃないよ.」
とできるだけ明るく答えた.その解答が正解であったのかはわからないがそれを聞いた由紀の頬が真っ赤になって、下を俯きながら『そっか、嫌じゃないんだ.』と小さな声でこぼしていたため悲しませなくてよかったと安堵していた.
由紀と話しているうちにどうやら連絡事項が終わったようであり、桂井先生が教室を出て職員室に戻っていった.そのことを引き金に先程のクラスメイト達だけでなく、龍弥と由紀がともに登校してきているところを見ていた他のクラスの人たちまで廊下からこちらを見物していた.
そんな中、龍弥に迫っていた生徒のうちの1人が、
「なんでお前如きが由紀さんと付き合えるんだよ!お前顔もそんなに良くないし、ただのぼっちの陰キャだろ!お前と高野さんじゃ不釣り合いすぎるだろ!」
と、龍弥に怒鳴るように言った.龍弥も自身が不釣り合いであることは理解しているため、黙り込んでしまった.そんな様子を見ていたのか由紀が自身も多くの質問攻めにあっている中、勢いよく立ち上がった.
由紀の突然の行動に、龍弥と由紀の周りに集まっていた人がみんな驚いて、もう何度目かもわからない静寂が教室を包んだ.そんな中立ち上がった由紀が、俺が不釣り合いだと言った男の前に立った.
『今龍弥が私に不釣り合いだって言った?それはいったいどこが?』
とその男に質問した.少しばかり語尾が強くなっているため怒っていることが誰の目から見てもわかった.それに驚いた様子のままであった男子生徒が少し怯えた様子で
「こいつのどこにいいところがあるって言うんだよ.顔も平凡.友人もいなくぼっちで、誰かと一緒にいるところも見たことねぇ.頭もそんなによくなさそうだし、俺に勝っているところがどこにもねぇ.そんな奴がどうしてお前と付き合える!俺をふったお前がこんな奴と付き合うなんてありえねぇだろ!」
しゃべっているうちに怯えが消えたようで、だんだん言葉が強くなり由紀に詰め寄り始まった.龍弥は昨日のことを思い出して、すぐに立ち上がって由紀と男子生徒の前に割り込んだ.
その様子を見た由紀の顔が少し赤くなり、
『ありがとう龍弥.でも大丈夫だよ.』
っといって龍弥を軽く退けて再び男子生徒と向き合った.
『えーと、確か西山くんでしたよね.まず、君は恋人を顔の良さで決めるのですか?それはなぜ?』
「そ、それは顔がいい方がいいだろ.わざわざ、顔が悪い方を選ぶ奴はいないだろ.」
『ふーん.それならもし恋人ができて、その人の顔が悪くなったらどうするのですか?顔なんてケアしてないと、すぐ荒れてくるものですけど?』
「そ、そんな話今関係ないだろ.今作った恋人なんてどうせいつか別れるんだから.お前らも、どうせいつか別れるんだよ.それともなんだ?まさかお前らは将来的な付き合いをしてるなんて言わないよな!」
『え、言いますけど.』
と、キョトンとした様子で答えた.
「そんなのはありえねぇだろ.そんなの今はなんとでも言えるだけだろ.」
『なんであなたがありえないって言えるの?そんなこと私たちしかわからないじゃないですか.それに、今後何があっても私は別れるつもりはないですよ.どんな一面を知ってもそれはその人の持っている一面でしかないですよね?私が知っている彼の魅力に変わりはないわけだし、その一面も好きになれると思います.そりゃあどうしても龍弥が別れたいって言ってきたら、少し考えますけど...多分結局別れないですよ.私はそのくらいこの人を愛しています.』
そう言って龍弥を指さしたが、その龍弥の顔は真っ赤であった.それもそうである.突然、逆プロポーズをされたのである.さらに、改めて愛しているといろんな人がいるところで言われたのである.恥ずかしい気持ちが溢れて倒れそうであった.その様子に由紀は気付きこちらを見てにっこり笑ったあと、再び西山の方を向いて言葉を続けた.
『次に逆に質問するけど、あなたはもし誰も知り合いがいない学校に編入して、すでにその学校の人はみんなどこかのグループに属していたら、すぐに友達を作ることはできますか?』
そのことを聞かれた西山はあっけに取られたような様子であった.
『口で言うのは簡単ですが、そんなに簡単なことではきっとありません.確かにコミュニケーション能力が高い人にとっては、そう難しいことではないですし.でも、それ以外の人にとってはとても大変なことだと思いますよ.自分がどんな人かも知られてないわけですから周りも話かけづらいでしょう.しかも、まだ1ヶ月です.彼が、ぼっちであるなんて決めつけるのは早すぎる気がしますが.』
そう言うにつれて段々西山は否定できなくなっていき黙り込んでしまった.
『それと、あなたが彼に何も勝っているところはないと言いましたが、私からしたら、あなたの方こそ彼に勝るとことがないのですけど.』
と言うと、そのことは流石に納得がいかないようで
「俺のどこがこいつに劣っているって!」
『それこそあなたが気にしている顔から、頭の良さから、性格の良さまで、なんでもです.他の人がどう思っているかは知らないけど、彼の顔は世界中の誰よりもかっこいいし、彼はきっと頭もいい.すごく知恵が豊富ですし.それに先程のように彼は常に私を気遣ってくれている.少なくともあなたにはできなさそうですが.目に見えているものでしか人の判断ができないあなたには、絶対に.そんな人と付き合うのはどう考えても無理です.今後もあなたのように相手のことを気遣えず、他人の幸福を非難する人と付き合うなんてありえません.諦めてください.』
そう言って、由紀は西山とその同じようなことをする人たちとの今後の可能性を断ち切った.
自分が告白した相手から再度振られ、今後の可能性も断ち切られた西山は悲しみのあまり崩れ落ち、その周りで先ほどまで龍弥を非難していた人たちも崩れ落ちていった.
由紀の長文で龍弥の周りに多くの人が倒れこみ、多くの尸が転がっているような様子であった.
その時1時間目開始のチャイムが鳴り響き、他クラスの生徒はそれぞれ教室に戻っていき、クラスメイトは席に戻っていった.尸のようであった生徒はとぼとぼと戻っていった.
(また、由紀に庇ってもらうなんて男として情けねぇ.)
と、龍弥はがっくりしていた.




