第62話 女剣客、ノワールドラゴンを撃破す……?
「……体が熱い」
体が燃え上がるような感じがしている。
まだまだ続く、茹だるような夏の暑さが生ぬるいと思えてくる。
「はぁ……はぁ……!」
熱いと同時に息苦しくなってきた。
全速力で走った直後でもないのに……何でこんなに息が切れるのか。
それに心臓が今にも体を突き破るのではないかと思えるほどドクドクと大きな音を立てていた。
「……私に何が……おきてるの?」
たしかさっきまでノワールドラゴンと戦っていたはず。
それで、シオンとエンジュさんの声が聞こえてきて、たしか……ノワールドラゴンが炎を吐き出して……
もしかしたら体が熱いのはノワールドラゴンの炎で私の体が焼かれてしまったから。
だとしたら、2人は……
シオン!!
エンジュさん!!!
2人を守るのは私なんだ……!
今まで私のことを助けてくれたのに……私は何もできないのは……!
お願い! 私にもう一度戦う力を……!
2人を助けることができる力を……!
——届け! 悪しき龍を滅する力、ドラゴンスレイヤー!!!
突如、私の頭の中に2人の声が響き渡っていく。
私の意識は遠のいていく——
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「オルハさん!!!!!」
オルハさんの体はノワールドラゴンが吐き出した炎に包まれていった。
ドラゴンスレイヤーの魔法は成功して彼女の元に届いたはず。
けれど、肝心のオルハさんが無事でなければ意味がない……。
「アイリスさん、オルハさんは……!」
『何度も呼んではいるけど、反応がないの!!』
アイリスさんの返答を聞いて、頭の中が真っ白になっていく。
「しっかりしなさいよ!」
後ろに倒れそうになるところをエンジュさんが抑えてくれた。
「で、でも……オルハさんが!」
「……大丈夫に決まってるでしょ!」
エンジュさんは必死に私を励ましてくれるが、声が少し震えていた。
『2人とも……ノワールドラゴンが!!』
アイリスさんの声に合わせるように顔を上げると、黒い巨体が目の前に存在していた。
ギョロリとした目がこちらを捉えている。
「光の……壁ッ!」
エンジュさんが体をふらつかせながら魔法で白い光が私たちを覆いはじめた。
ドラゴンスレイヤーで大量の魔力を消費しているから体がふらついていた。
「グオオおおおおおおおっ!」
ノワールドラゴンは目の前で咆哮を上げると、覆っていた白い光が散っていくのが見えた。
同時に私たちの体も吹き飛ばされてしまう。
「……え、えんじゅさん」
かべに打ち付けられることは避けれたが、立ち上がる力は残されていなかった。
隣にいるエンジュさんに声をかけるが、反応はない……
『シオちゃん、エンジュさん!!!』
インカム越しにアイリスさんの叫び声が聞こえてはくるが、もう反応することもできない。
そしてドシンドシンと地面が揺れだし、大きな影が私とエンジュさんの体を覆っていく。
「お……る……は………さ……」
目の前が真っ白になっていく。
これで終わってしまうんだ……まだ、目的は果たせてないのに……!
ごめん……アヤ姉。
私の目の前は真っ暗になっていく。
「うわああああああああああっ!!!!」
突如聞こえてきた叫び声に真っ暗になりかけていた視界が晴れていった。
「……何よ、せっかく気持ちよく寝ようとしてたのに」
声をかけても反応がなかったエンジュさんが立ち上がっていた。
そういえば立つ力もなかったのに……立てる!?
『シオちゃん、エンジュさん大丈夫なの?!』
「は、はい! なんかすごい声が聞こえたと思ったら……!」
アイリスさんと話していると、部屋の奥で立っている姿を発見した。
「……オルハさん!!!!」
私の叫び声にエンジュさんも同じ方を見ていた。
「よかった……!」
「だから言ったじゃない……大丈夫だって」
私もそうだが、エンジュさんの目から涙が流れている。
「グオオオオオオオオオッ!」
ノワールドラゴンもオルハさんの存在に気づいたのか、咆哮をあげると、ドシドシと大きな巨体を揺らしながら彼女の元へと走り出していく。
「グオオオオオオオオッ!!!」
長く、そして太い尾を体を捻りながら振り回し、オルハさんにぶつけようとしている。
だが……。
振り回した尾が空中を舞い、無造作に落ちていった。
元々あった尻尾の部分からは大量の紫の液体が流れ出していく。
「ぐぎゃあああああああああ!!!!」
ドラゴンにも痛覚があるのか、叫び声をあげるノワールドラゴン。
無防備になっているところを見逃すことなく、オルハさんは刀を構え、駆けると同時に目の前の巨体を真一文字に切り裂いていった。
「ぐ、グォオオオオオ!!!」
斬られた黒い巨体は断末魔の雄叫びを上げながら、黒い霧となって散り散りになっていった。
『あれ、ノワールドラゴンの反応がなくなったけど……もしかして!?』
「はい、オルハさんが真っ二つにしました!」
『うそ……! オルハちゃん! すごいよ!!!』
嬉しさのあまり、アイリスさんはいつもの倍以上の声で叫んでいた。
いつもならオルハさんが苦言を呈するところだけど……
「うわああああああああああああッ!!!!」
だが、オルハさんは大声をあげていた。
先ほどまでいたノワールドラゴンの咆哮のような……
その直後……
地面が崩れていき、私たちは成す術もなく地面の奥へと飲み込まれていく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あれ、おかあさん! あそこに何かおちてるよ?」
「ホントだね、ゴミだったら拾って捨てておかないと汚れちゃうね……」
「あれ、これゴミじゃないみたいだよ? ってお母さんどうしたの?」
「……何で、ここにいるの?」
——シオン!?




