第61話 流星光底メンバー、ドラゴンスレイヤー発動まで……
「グギャアアアアアアアアア!!!」
ノワールドラゴンが雄叫びを上げると、ビリビリと音を立てて一帯が震え出す。
その余波がこちらにも押し寄せてきて、普通に立っていることが困難になる。
『エンジュさん、シオちゃんはドラゴンスレイヤーの構築を始めて!』
「わかったわ……」
「は、はい……!」
『そしてオルハちゃんは——』
「——わかってる、それまで2人を守ればいいのね」
『うん……一番大変なことをお願いすることになるけど』
「……大丈夫」
それはずっとやってきたことだから問題はない。
それに、『龍桜神妙流』は力を求めるだけではなく『人を助け、人を活かし、人を導く』ことにあるのだから。
「そうだよね、おばあちゃん……!」
そう呟きながら、月華を鞘からとり、両手で力強く構える。
「グオオオオオオオオオ!!」
私が刀を構えたことでノワールドラゴンが再び雄叫びをあげた。
先ほどは何もなかったが、部屋の壁がピシピシと音を立てている。
「……はっ!!」
掛け声と同時に黒い巨体目掛けて駆ける。
ノワールドラゴンは首をのばし大きな口で私を捕えようとするが、巨体ゆえの動きの鈍さからそれは叶わなかった。
「……支えとなる足を斬ってしまえば!」
素早い動きでノワールドラゴンを翻弄しながら足に向けて刀を薙いでいくが、鋼のような硬さに刃を通してはくれなかった。
「……でも絶対に折れないものはない!」
これは昔、祖母に言われた言葉だ。
どんなに強靭で太い大木も斧で同じところを狙っていけばいずれは斬れてしまう。
——無駄な努力など存在はしない。
言われた時もそうだが、ついさっきまで理解できなかったがこの状況になってようやくわかった気がした。
今は……祖母の言葉を信じてみようと思う。
「たぁぁぁぁぁぁッ!」
ノワールドラゴンの捕食行動を避けながらも同じ場所に向けて刀を横薙いでいく。
「グギャアアアアアアア!!!!」
何度目になるかわからないが、刀の刃先がノワールドラゴンの足に触れた瞬間、叫び出した。
先ほどまでのとは違い、苦しみが混じったように聞こえていた。
現にノワールドラゴンの体が少しふらついている感じにも……。
「グオオオオオオオッ!!」
それでもノワールドラゴンは攻撃を止めることはなかった。
首を上にあげ、大きく息を吸い込むとこちらに向けて炎を吐き出してきた
「『龍巻』ッ!」
すぐに体を捻らせながら刀を振り、風の渦を起こすことで吐き出された炎は私の目前で消滅していった。
だが、その隙を狙ったのかわからないが、横から風を切る音が聞こえていたが、気づいた時にはすでに遅く……
「ぐっ……!!」
気がついたら私の体は壁に叩きつけられていた。
目の前では何重にも巻いた綱のような黒い尾が何度も床を叩きつけていた。
『オルハちゃん……!!』
「……大丈夫」
音がした時点で刀を前に出して防御姿勢をとっていたので、致命的なダメージを負うことはなかった。
無防備の状態だったら致命傷になっていたかもしれない。
「それよりも、エンジュさんとシオンの様子は?」
『オルハちゃんが奮闘してるおかげで、今のところは構築できてるみたい……だけど、いつ終わるかは本人たち次第だよ』
「……わかった」
『オルハちゃん……!』
インカム越しにアイリスの叫び声が聞こえてきた。
「……前にシオンが言ってたけど、魔法の構築は自分との戦いで、世界で自分一人みたいな感覚になって辛いって言ってた」
辛いのは私だけじゃない……
シオンもエンジュさんも辛い思いをして、今まで戦ってきたんだ。
——だからこそ、勝った時はみんなで喜びを分かち合いたくなる。
「……2人のためにも今、私が頑張らないと」
『……ごめんしか言えない自分が情けなくなるよ』
「アイリスのフォローがあってここまでこれたんだよ」
『……そう言ってもらえると助かるよ』
「……たまにうるさいと思う時もあるけど」
私の皮肉めいた言葉にアイリスは笑っていた。
「……アイリスは2人を見てて、私はなんとかして敵をひきつけるから」
『わかったよ……オルハちゃんも気をつけて』
「……うん」
アイリスとの会話を終わらせると、もう一度月華を構え……
「はぁぁぁぁぁッ!!」
気合いを入れるために声を上げた。
それに対抗するかのようにノワールドラゴンがギョロっとした目でこちらを見ながら雄叫びをあげる。
雄叫びに耐えられなくなったのか、壁や床に亀裂が入り始めていた。
「……『龍桜神妙流』、桜坂織葉、参るッ!」
もう一度ノワールドラゴン目掛けて駆け出していった。
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「グオオオオオ!!!」
「ぐっ……」
もうどれくらい時間の間死闘を繰り広げているのかわからなくなっていた。
1時間間かもしれないし、日を跨いでるのかもしれない。
時間の感覚がおかしくなっていて、1分も経っていないのかもしれない。
——ただもう、私の体は限界を迎えようとしていた。
いつ倒れてもおかしくはない、2人の構築が1秒でも早く完了するのを願うばかり。
それまでは倒れてはいられない!
「グオオオオ……ッ!!」
だが、対峙するノワールドラゴンも同じなのか、先ほどよりも動きが鈍くなっていた。
最初は微々たるダメージだったと思うが、それが蓄積されていったのかもしれない。
そうだとすれば……祖母の教えは正しかった。
ここから無事に帰った時は直接言ってあげたいな……。
「まだ……まだ、私は終われない!」
体が悲鳴をあげてはいるが、もう一度月華の柄を両手で握りしめる。
それに気づいたのか、ノワールドラゴンは上を向き、大きく息を吸い始めた。
「……それは、させないッ!」
炎を吐き出される前に阻止しようと地面を蹴り上げようとするも、力を入れることができなかった。
そして、大きな口から炎が吐き出された。
「「オルハさん!!!」」
その時、構築を続けていた2人の声が聞こえた。
「「届け! 悪しき龍を滅する力、ドラゴンスレイヤー!!!」」
2人の叫び声と同時にノワールドラゴンから吐き出された炎が私を包んでいった。




