第60話 流星光底メンバー、敵との対峙
下北沢ダンジョンが封鎖されて数時間後、ネットの海に潜むアンダーグランド系の掲示板にて。
——ありのままさっき起こったことを話すぜ
——お、どうした? その前にスレ主のスペックよろ
——俺は友人と一緒にダンジョンを探索している者だ
——fmfm それで何が起きたんだ?
——今は封鎖されてるけど、その前に下北沢ダンジョンに潜っていたんだ
——突然の封鎖だったし、知らない探索者も多かっただろうな
——そこで、でかい蛇のモンスターと遭遇して、必死に逃げてたんだよ
——下北沢ダンジョンで蛇モンスターっていったら、サーペントあたりか?
——とにかく俺と友人は必死で逃げたさ、でも奴の足は早くてダメかと思ったんだよ
——おいおい、蛇に足なんかないぞ
——揚げ足とってんじゃねーよ、足だけにな!
——で、どうなったんだ? このスレ立ててるってことは生き延びたとは思うけど
——聞いて驚くなよ、あの女剣客さんが現れてそのモンスターを一撃で真っ二つにしたんだぜ
その後、スレを見ていた住民の驚くスレが次々と書き込まれていった。
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「うわ!? アングラ掲示板がすごいことになってる!」
下北沢ダンジョンを進んでいると、後ろでシオンが大声を上げていた。
すぐに後ろを振り返ると、シオンがスマホを見ていた。
「……そうなの?」
彼女の言うアングラ掲示板っていうのがどんなものかわからないけど。
『ホントだね、話の内容からしてさっきオルハちゃんが助けた探索者じゃないかな』
「そんな感じがしますね……」
「どうするの? あの男エルフは隠密に進めろって言ってたけど」
「……でも、あの状況で放っておくことはできなかった」
『まあ、オルハちゃんの性格上そうだよねえ』
インカム越しにアイリスのため息が聞こえてきた。
『まあ、入り口は管理局の人間が封鎖してるから入ってくるようなことはできないから気にすることでもないし』
「アングラ掲示板がこれだけ賑わってるなら配信したら今まで以上に再生数が伸びそうなのに」
『今から戦う相手がダンジョン内にいるモンスターとかなら、許可するところなんだけどね……今回の件に関しては管理局からお金がでるからそれで我慢してもらえれば』
アイリスの懇願にシオンは渋々了承していた。
『って、そろそろボスの間に到着するよ!』
アイリスの言葉に私含め全員が身を引き締める。
そしてついに、大きな扉の前に辿り着いた。
「……2人とも大丈夫?」
扉に手をかけながら後ろの2人に声をかける。
「大丈夫よ」
「だ、大丈夫です!」
自信たっぷりなエンジュさんに対してシオンは声も体も震えていた。
「……それじゃ開けるよ」
力を入れて扉を押していくと、ギギィと鈍い金属音を立てながらゆっくりと扉が開いていく。
『……物理反応!? オルハちゃん気をつけて!』
暗闇の中で、アイリスの叫び声が聞こえると同時に目の前で何かが光出した。
そしてヒュンヒュンと空間を切る音が徐々に大きくなっていた。
「……はっ!」
すぐに月華を振り上げるとこちらに近づこうとしていた物体とぶつかりギィィィンと耳を塞ぎたくなるような音を立てる。
その直後、カランと乾いた音を立てて何かが私の足元に落ちていった。
「そのまま切り裂かれればこのあと苦しまなくても済んだのに、ふふっ」
暗闇の中から、聞き覚えのある女の声。
それに反応したのは、エンジュさんだった。
「……ベローズッ!!」
エンジュさんは大声を上げながら光の矢を作り、声のする方へ投げつける。
放たれた光の矢は何かに弾かれ、淡い光となったが部屋中に広がっていき、部屋全体に灯りが照らされた。
その先に立っていたのは、ベローズと見知らぬ男が立っていた。
そして私の足元には見覚えのある大きな鎌が無造作に落ちている。
「せっかく私が闇魔法を教えてあげたのに、そんな魔法を使うなんて悲しいわね」
ベローズは自身の手を頬に当てて、うっとりとした表情でエンジュさんを見ていた。
「辛気臭いのは嫌になったのよ」
それに負けじと皮肉を返すエンジュさんだった。
「なるほど、あなたが噂の女剣客さんか!」
ベローズの隣に立っていた男が私を見て微笑んでいた。
決して友好的ではない、こちらを見下したような雰囲気を醸し出している。
「初めまして、僕はガーベラ。 以後お見知り置きを」
ガーベラと名乗った男は紳士がみせるような自身の胸元に手を添えるような仕草をしながら、こちらへと頭を垂れていた。
『……見た目や口調に騙されないで、こいつも魔族だよ!』
インカム越しにアイリスの声が聞こえてきた。
「本来であれば、ティーパーティでもして親睦を深めたいところだけど、こいつが待ってくれそうもなくてね」
そう告げたガーベラが左手の指をパチンと鳴らすと、その後ろに黒い巨大な物体が姿を現し、地面を大きく揺らしていた。
『……ノワールドラゴン! やっぱり魔族が……!』
「勝てるなんて思ってないけど、万が一勝てたら祝杯を兼ねてティーパーティでもしようじゃないか!」
ガーベラは高笑いをしながらベローズと一緒に姿を消した。
その場に残されたのは私たち3人と目の前の巨大な黒いドラゴン。
「グギャアアアアアアアアア!!!」
黒いドラゴンはギョロっとした目をこちらへ向けながら大きな雄叫びを上げていた。
『みんな、こいつは今までのモンスターとは比にならないぐらいの強さだから……気をつけて!』
アイリスの言葉を皮切りに、私たちは各々の武器を構えていった。




