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第48話 女剣客、女3人で憩いのひと時

『どうやら姫様は無事だったみたいだな』

 「まさか、あの人送ってくるとは思わなかったけどね」


 目の前のディスプレイには終始膨れっ面の男、バルムが映し出されている。


 「にしてもさ、一体どんな心境の心変わり?」

 『……何がだ?』

 「槐堂円珠のことだよ、魔族と接触したものは処分確定でしょ?」


 魔族は私たちエルフもそうだが、他の種族からも敵対視される存在だ。

 また、魔族に協力したものはどんな理由があっても処分される。

 例えそれが、同族、家族であっても……

 

 『これが特別な力を持たない無能な人間なら即刻処分している』


 バルムはくだらない質問だと言いたげにこちらを睨みながら答える。


 「たしかにさっきバル兄が送ってくれたデータ見たけど、今までにない魔力を持っているけどさ……」


 最近は魔力を持った人間が増え始めているが、彼女は群を抜いて魔力が高い。

 魔族と血の交わりをすることで膨大の魔力を得ることも可能だが、失うものが多い。

 バルムが送ってくれたではそれは行なっていないとのこと。

 

 ——普通にオルシオの2人と接触してくれたなら両手をあげて喜びたいところだけど。


 「ってか大丈夫なの?」

 『……あのなアイリス、何度もいうが主語が——』

 「あの子が裏切る可能性は考えられないの?」

 『そのために爆破魔法を埋め込んだアイテムを身につけさせてると説明しただろ』


 たしか彼女の首元につけているネックレスだったはず。

 もちろん彼女自身で外すことはできないもので、こちらから発動させるものだ。


 「……聞いたけど、それじゃずっとバル兄が監視してるってこと?」

 『そんなことを暇があると思ってるのか?』


 バルムは最後に大きくため息をついていた。

 ダンジョン管理局捜査局長であるので、常に多忙であることは承知だ。


 「それじゃ誰がしてるの?」

 『お前以外に誰がいる?』

 「はい……?」

 『今回はお前の手際の悪さが原因で姫様を窮地に陥ったんだろう? それを助けてやったのだから監視ぐらいで済むのなら軽いものだろう』

 「うっ……」


 ぐぅの音がでないほどの正論に私はディスプレイに睨みつけるぐらいしかできなかった。


 「もしかして、これからずっと私が監視するの?」

 『あぁ、どうもあの女は姫様と一緒にいたがっているから、お前にとっては都合がいいだろう?』

 

 私の仕事はオルハちゃん——桜坂織葉の監視。

 あの子の側にいてくれるなら手間が省ける。

 ——素直に納得はできないが。


 「それなら、1つだけやりたいことがあるんだけど?」


 私の言葉にバルムは面倒だと言わんばかりの顔で「何だ?」と口にしていた。



 「……どうみてもエロいわね」

 「これは配信でのせたらBAN確定ですね」


 下北沢のダンジョンを出てから、30分ほど歩きエンジュさんが住むマンションへと到着した。

 ダンジョンで染み付いてしまった悪臭を取るためにすぐにお風呂に入ったまではよかった。


 お風呂を上がった後、エンジュさんの持っている服を着せられることになったのだが、好き勝手言われる始末。


 「……オルハさん、どうしたらそんな体になれるのかしら?」

 「それは私も気になります!」


 エンジュさんとシオンは少し食い気味にこちらへと顔を寄せていた。

 ふと視線を下に向けると、お酒の缶が置かれているので、酔った勢いだろうか……


 「……大学の資金を稼いでるときにオルハさんみたいなスタイルのいい子に群がる男を見て吐き気がしたけど、なんか今ならその気持ちがわかってきたするわね」


 エンジュさんは真剣な表情でお酒を飲みながらじっくり見ていた。

 主に胸元を……。



 「……風が気持ちいい」


 ベランダに出ると、心地よい風が体に触れる。

 昼間は茹だるぐらいの暑さだったが、夜中だからか風が心地よかった。

 

 あれからもエンジュさんとシオンはお酒を飲みながら話していたが、気がつけばシオンが寝てしまったため、終了となった。すぐに布団を用意してくれ、シオンをそこへ運ぶと解読不能な言葉を口にしていた。

 お酒を飲むと気分が良くなるっていうから、シオンもそうなのかもしれない。


 シオンが寝ると空き缶やお菓子の袋などエンジュさんが片付けていた。

 手伝おうと思ったが、すぐ終わるからゆっくりしててと言われてしまったため、何もできず。


 部屋でボーッとしているときに、ベランダがあることに気づいて出ることに。

 外に出ると、夜空には満月が煌々と照らしていた。


 「あら、ここにいたの?」


 見上げていると、声をかけられた。

 振り返った先には、ベージュ色のネグリジェ姿のエンジュさんが立っていた。

 

 「ホント、どんな服を着てもスタイルがよく見えるわね」


 私の目の前に立つとすぐにため息混じりに呟くエンジュさん。

 ちなみに今の私は真っ黒の無地のTシャツにジャージのズボン。

 

 「夜中なのに随分と明るいとおもったら、満月だったのね」


 エンジュさんは夜空に浮かぶ満月を見て、ふふっと微笑む。

 その姿が少し妖しく見えていた。

 

 「……エンジュさん」

 「どうしたの?」

 「……今日はありがとうございました」


 言葉にすると同時に頭を下げる。


 「別にそこまでかしこまって言われることなんて何もしてないわよ」


 少し照れくさそうな表情を浮かべながらエンジュさんは私の隣に立った。


 「むしろ、礼を言うのは私の方よ……」

 

 そう告げると私の顔をじっと見つめていた。


 「……私は何も——」

 「——あの時、あの道の駅でオルハさんに出会わなければ私は今でもダンジョンで探索者を殺めてたかもしれない」


 そう告げながらエンジュさんはふふっと微笑む。

 その顔は少し寂しそうにも見える。


 「だからお礼を言わなきゃいけないのは私のほうよ」

 

 再度微笑むエンジュさん。先ほどと違い今度は笑顔そのものだった。

 

 「って、さすがに外にいたら冷えるわね……」


 エンジュさんは体を震わせていた、言われてみればたしかに自分の体の冷えを感じていた。


 「今日はそろそろ寝ましょうか、狭いから3人で雑魚寝に近い形になっちゃうけど」


 申し訳なさそうに話すエンジュさんだが、むしろ休める場所を用意してくれるだけ有り難いと思える。

 部屋に戻って寝室に向かおうとした時、テーブルの上に置いていた自分のスマホが震えているのに気づく。


 「……何だろう?」


 手にとると、画面にはダンジョン管理局からのメッセージが届いていた。


 ==========

 ギルド『流星光底』

 桜坂織葉様


 お世話になっております。

 ダンジョン管理局です。


 以下のギルドメンバーの新規追加の処理が完了いたしました。

 ・槐堂円珠カイドウ エンジュ

 ==========

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