画家の秘密
明咏は憔悴しきっており罪を認めず、牢に拘留されている。
次の日の昼頃、花宋は野次馬精神が駆り立てられ、村人の世間話にしれっと混じっていた。
明咏への愚痴やら奥さんへのお悔やみの言葉ばかりの中で澄んだ声で一人の男が尋ねた。
「なぜ画家が殺したと言いきるのですか?」
群衆が一斉に振り返り目線の先には真っ白な道衣を着て、黒曜石のような長い髪と瞳を持った男道教が立っていた。
村人は当然といった口調で応えた。
「昼過ぎの丘の上にいる二人の姿を見たからだ。その後、誰もそこに行っていない。つまり錦子が死んでいたなら犯人は必然的に一人しかいない!」
「錦子は眺めの良い丘で編み物をするのが日課だからいつもどおりそこに居るのは俺達も知ってる!」
「私も錦子が木の下で休んでいる様子を見て、その後明咏が横で絵を描いているのを見た!」
「ずっと支えてくれた奥さんの思いを裏切るなんて!彼女は苦労を負って精神を病んでたってのに…許せない!」
「邪魔になったんだろう!彼は有名になって金持ちになった。どうして精神病の妻を置いておく理由があるのか!他の女を作って邪魔な妻を殺したんだ!」
男道教はまた口を開いた。
「画家が有名になったのはいつですか?」
「つい最近だよ。半年も経っていない」
男道教は疑問を並べた。
「二十代後半になるまで才能がなかったのに、なぜ突然才能が開花したのか?山の奥の村に住む無名の画家が急に評価されるなんて…奇妙じゃないでしょうか?」
その言葉のあと少しの沈黙と重々しい空気が流れ、やっと村人が口を開いた。
「あいつは神の目を貰ったんだ…」
村人の言葉は馬鹿げたていたが、けしてふざけているわけではないのが、その青ざめた表情から見て取れる。群衆も黙って頷いた。
花宋は意味がわからず男道教の言葉を待った。男道教はすでに理解したようで最後に尋ねた。
「この村に神様はいますか?」
村の丘に着くと遮るものがなく、男道教の長い黒髪と白い袖が風に吹かれて瞬いた。この丘を越えた先に神像があるらしい。花宋は気になり彼の後ろに堂々と着いていったが、彼は咎めることをしなかった。
木の下には草花が生い茂り、花宋の目は一面の緑で覆い尽くされた。
突然彼は頭部を殴られたような衝撃が走り、目を収縮させた。
真っ赤な血。
青々しい草花の緑と同じぐらい強烈な血の赤色が飛び散っている。花宋は思い出した、この丘が殺害現場であり、血がまだ残っていることを!
錦子の死体は回収されており、腹部が切られていたらしい。この光景は彼女が出血死で死んだのだとひと目でわかる。それほどの血だまりを一面に作っている。




