第9話 天才魔女と、ルカと瑠夏
「ねえ、予備の制服がどこにあるか知らない?」
そう聞くとめんどくさそうにベットからおり、薬品や絆創膏がある戸棚をガサガサと漁る。
「これか?」
とこちらに制服を持ってきてくれる。
「あ、ありがとう」
「ん」
と彼は短く返事をする。
お礼を言われて照れているのか、耳が赤い。
「…私、夜桜瑠奈。あなたは?」
「あ?俺は赤峰瑠夏」
同じ、名前。
ルカかもしれない、違うかもしれない。
でも、急に自己紹介してきた私を不思議そうにみる彼はやっぱりルカに似ている。
「…ねえ、友達になって?」
前世も今世も含めて、初めて踏み出す一歩。
「…は?」
瑠夏は面食らったような顔をする。
「急になんだよ」
「ダメ?友達」
「だから、それが意味わかんねぇって」
即答。
少しだけ間が空く。
瑠奈はそれでも引かなかった。
「友達になって欲しいの」
「なんで俺が」
「ダメ?」
「まずまず、おれお前のこと知らないし」
「中学2年B組33番夜桜瑠奈。趣味は読書、好きな食べ物はしょっぱい物と甘い物」
「いや、そういうことじゃねぇ」
瑠夏はため息をついた。
「知らねぇやつといきなり友達になれるわけないだろ」
「じゃあ知ればいいじゃん」
「簡単に言うな」
「簡単だよ」
即答だった。
瑠夏は一瞬言葉を失う。
「……お前、変わってんな」
「よく言われる」
「褒めてねぇ」
「知ってる」
会話が噛み合っているようで噛み合っていない。
でも不思議と途切れない。
瑠夏は少しだけ頭をかいた。
「……はぁ。好きにしろよ」
「うん、好きにする」
いつも前を歩くのは私で、みんなが後ろからついてきた。
「くっしゅんっ」
とくしゃみをしてしまう。
着替えるの、忘れてた。
瑠夏が一瞬だけこちらを見る。
「着替えてねぇだろ」
「……うん」
「はぁ……」
深いため息。
でも、呆れているだけで、怒ってはいない。
瑠夏は戸棚の奥をもう一度探り、タオルを投げてよこした。
「使え」
「あ、ありがとう」
「ん」
短い返事。
言葉は乱暴だが、やっぱり優しい。
瑠奈はタオルを受け取って、少しだけ瞬きをする。
「……優しいね」
「は?」
即座に不機嫌に感じる声。
「違う」
「違うって何がだよ」
「別に」
瑠奈は笑ってごまかしながら、タオルを肩にかけた。
その横で、瑠夏はもう興味を失ったようにベッドに腰を下ろす。
「……変なやつ」
ぽつりと落とすように言う。
その声は小さくて、悪口みたいで。
でも少しだけ、困っているみたいにも聞こえた。




