第3話 天才魔女、学校へ行く
学校。
私の苦手な場所だ。
「嫌だなぁ」
と呟く。
昇降口の近くあとちょっとで着くというところ。
ザバァッ
思いっきり水が上から落ちてくる。
…忘れていた。
魔法のない世界への好奇心から、すっかり忘れていた。
私、ルーナこと瑠奈はこの学校でいじめを受けていたのだ。
ケラケラとうるさい笑ごえが響く。
「ごめーん手が滑っちゃてぇ〜」
「いるの気づかなかったぁ〜」
わざとらしい声。
頭上から降ってくる、軽い嘲笑。
「ちょっとぉかわいそぉじゃん〜」
「びしょ濡れでネズミみたぁ〜い」
「はぁ」
とため息をつきながら濡れた前髪を指でかき上げた。
反射的に結界を使って鞄を守ったので教科書類はきっと濡れてないだろう。
「めんどくさぁ」
とつい呟く。
2階にいる彼女らには聞こえてないだろう。
視界の隅に、無視されたのが気に障ったのかこちらを睨む彼女らの姿を見て見ぬふりをして、そのまま保健室へ直行する。
反応してもめんどくさいだけだ。
「すみませーん」
とドアをノックしてから保健室のドアの前で待つ。
反応がないので開けてみる。
誰もいない?
中に入り周りを見渡すがだれもいない。
「…うるさい」
「っ」
急に声がして声を出さずに驚く。
シャァーっという音とともに誰もいないと思っていた休養ベッドのカーテンが開く。
「ひゅっ」
と驚きのあまり、喉が変な音を出す。
そっくりだ、あの子に
「あ?」
何も言わない私に不思議そうな顔をする少年。
その表情さえも、あの子にそっくりだ。
似ても似つかない真っ黒な髪と瞳をしているというにも関わらず、原色の赤の髪に真っ赤なルビーを嵌め込んだような瞳の少年がチラつく。
「えっと、制服が濡れちゃったから着替えに来て、保健室の先生、どこにいるか知らない?」
「知らねー」
とぶっきらぼうな返事が返ってくる。
「そっか」
「…お前なんで濡れてんの?」
と思い出したかのように聞いてくる。
「…ドジっちゃって」
聞かれたくない。
情けないところは、見せたくない。
だって。
目の前の少年は、あの子にそっくりだった。
――私の弟子の一人に。




