第2話 天才魔女、現代に転生する
「…ぅっ」
と少女が唸る。
日の光に晒されたことがないかのように白い肌。
乱雑に結ばれた長い銀髪。
そして、気だるげな青い瞳。
日本人の両親を持つ彼女だが日本人離れした容姿をしている。
「ねむい」
ぼそりと呟きながら、少女はゆっくりと身を起こす。
そして
「……は?」
目に入った髪に、思わず固まった。
そこにあったのは、自慢だった艶やかな黒髪ではない。
色素の抜け落ちたような、銀色の髪だった。
「なん…で」
少女はドタドタと洗面所に走り、鏡で姿を確認する。
前世と顔立ちこそ変わらないものの黒かったはずの瞳はありきたりな青い瞳になっていた。
「うっ」
小さくうめく。
頭の中に映像が浮かぶ。
「…失敗、した?」
彼女が思い当たるのは自らの生に区切りをつけるために使った転生の魔法だった。
「……術式は合ってたし、失敗するはずは……」
ぶつぶつと呟きながら、少女は眉をひそめる。
そして、ふと周囲を見回した。
「……あれ? ここどこだ?」
開きっぱなしのドア、少し湿っている洗面台。
洗面台の傍にはコップに刺された歯磨きと歯磨き粉。
「っ」
再び、頭の痛みとともに記憶が流れ込んでくる。
馴染み深い記憶。
学校、家族、そして、私のこと。
「…そっか、成功してたんだ」
呟きながら納得した。
転生の魔法は使用された痕跡こそあったものの、成功したと書かれたものがなかった。
魔法は成功していたのにも関わらず、だ。
「……同じ世界に転生してなかったから、記録がなかった」
口に出してみると、不思議なほど腑に落ちる。
記録がなかった、いや、できなかった。
魔法のないこの世界で転生したなどと言っても、ほら吹きだと思われるのがオチだろう。
「るな?るな〜?」
と呼ぶ声がする。
夜桜瑠奈
それが私の今世の名前だ。
「はーい」
と返事をする。
この家は3階建てで、私の部屋は2階にある。
1階におりると母が夕飯をテーブルに並べているところだった。
「手伝うよ」
と言い、台所にある皿たちを並べる。
私にそっくりな顔立ち、いや、似ているのは私の方か。
違いは髪色と瞳の色ぐらいだろう。
前世も今世も私はどうやら母親似らしい。
黒髪黒目が羨ましい、記憶の中の私もそうだった。




