第11話 天才魔女と、幼馴染紫苑
なんとか1日をやり過ごした。
あの後、紫苑と一緒に昼を食べ、4限のチャイムと同時に椅子に座った。
結衣たちは睨んできたものの先生の前なので特に突っかかってこない。
…授業に遅れた日に髪が濡れているのをみて察してるとは思うが、介入はしてこない。
まあ、最初から期待してないが。
授業終了のチャイムが鳴る。
「起立、礼」
号令と共に教室がざわつき始めた。
皆が友達同士で集まり、部活や遊びの話をしている。
結衣たちがこちらにきているのを見て、私は鞄を持ち上げ、足早に教室を出ようとした。
「るな!」
聞き慣れた声。
振り返る前に、肩に重みが乗った。
「一緒に帰ろ!」
紫苑だ。
相変わらず距離が近い。
「うん」
なぜか嬉しそうに笑う。
そんなに嬉しいことだっただろうか。
不思議に思いながらも、私はそのまま歩き出した。
廊下に出ると、周囲の視線が一気に増える。
紫苑は目立つ。
顔が良いし、成績も良いし、運動もできる。
本人は気にしていないが、女子からの人気は高かった。
だからだろう。
私の隣を歩くたび、こうして注目される。
私の隣を歩くたび、こうして注目される。
「今日も見られてるね〜」
紫苑は気楽そうに言う。
「原因は紫苑だと思う」
「えー?そうかな」
「そうだよ」
即答すると、紫苑は楽しそうに笑った。
本当に自覚がないのだろうか。
昇降口へ向かう途中、何人かの女子が紫苑に声をかける。
「紫苑くん、またね!」
「うん、また明日〜」
にこやかに返事をしながらも、紫苑の足は止まらない。
そのまま私の隣を歩き続ける。
まるで離れるつもりがないみたいに。
「人気だね」
そう言うと、紫苑は少しだけ首を傾げた。
「そう?」
「うん」
「興味ないや」
あっさりとした返事。
本当に興味がないのだろう。
昔からそうだった。
誰に好かれても、誰に囲まれても、紫苑はあまり変わらない。
そのくせ――
「瑠奈、今日の夕飯なに?」
「知らない」
「じゃあ当てる!」
私には妙に構う。
「当てられないと思う」
「えー」
不満そうな声を出しながらも、紫苑は楽しそうだ。
校門を出る。
夕日が街を橙色に染めていた。
隣を歩く紫苑の横顔を見上げる。
前世でも。
今世でも。
こうして私の隣にいる。
それが当たり前すぎて、考えたこともなかった。
だから私は気づかない。
紫苑が時折こちらを見る視線に。
まるで、そこにいることを確かめるような。
失くしものを見つけた子どもみたいに、少しだけ安心したような顔をしていることに。
そして、その瞳が向ける感情が。
幼馴染へ向けるものではないことに。




