第十九章 思い出のウィンクル
「…はい、終わり。これでいい?」
あたしはウィンクルたちと一緒に盗賊をやっていたこと、何年もの付き合いだということ、最終的に捨てられてここにいること…それをまぁ…あたしの恨み言も含めてたらたらと話した。
「…あいつがメギのお貴族さまだなんてさぁ、知らなかったよ。」
それなり…以上の知識に教養があるから、きっと生まれは悪いとこじゃないんだろうなぁ…ぐらいには思ってたけど。実家や母国を異様に嫌っているってことは知ってたけど…メギの生まれだってことすら知らなかったし。つまり、あたしはあいつのこと…なんも知らなかったんだな。
「…なるほど。ローズペリウィンクルが一時期姿を見せなかったのはそういうわけがあったんですね。」
家出、だったのかな。
「表向きには病気療養のため、と言われてましたけど…魔道具とか能力を使って治らない病気なんてめったにないし、怪しいなって思ってたからなんか納得できました。」
まぁ、盗賊やってて家にいないので表には出せません…とはいえないよな。普通。
「まさか盗賊をやってたとは。」
「まぁ、盗賊っつても、腐りきった金持ちからしか盗まなかったしほとんど失敗だったけどね…。」
言い訳みたいだけど…盗んだものは売り飛ばして、その金の半分を活動資金に、半分を孤児院に寄付してた。
「…なんで、なにもしちゃだめだったの?」
「ん?」
なんの話だ?
「きみは…たおれる前に、なにもしちゃだめ、って僕にいった。でも、そんなひどいことされて、どうしてそんなこといったの?プミラがそう言わなければ、僕はまちがいなくあの人をころせたのに。」
………。
「記憶がないから…なんともいえないけど…。あたしの復讐をかわりにミコにやらせるってのはお門違いだ、って思ったんじゃないかな。」
あいつとのことは自分で完結させたいし、ミコを巻き込みたくない。
「ほんとうに?それだけ?」
ミコはあたしの目をじぃっと見つめている。その瞳をみてると、なんだか後ろめたくなってきてなんとなく視線をずらしてしまった。
「…ああ。」
「…そう。」
べつに、
「え、ウィンクルさんのことがまだ大切だからじゃないんですか?」
とかってわけじゃない。もう、あたしはあいつが…
「は?」
「いや、嫌い嫌いいってるけど…普通にまだウィンクルさんのことが大好きなんだと私はすっかり…。」
………。
「んなわけないでしょ!」
「それはすみません。」
なんてことをいうんだヒメユリちゃんは。あたしはあいつらにもう見切りをつけてる。
「…プミラは、もどりたいの?」
「なにに?」
「盗賊に。」
「……んなわけないでしょ。」
それは…ない。
「最終的にこの国からは出てって母国に帰るつもりだけど、盗賊には戻らないよ。」
「…ぼこく、に帰る。」
「うん。」
「ぼこく、ってどこ?」
「…モチノキって国。」
ユリの地図だとね、すんごくすんごく南の方にかかれてるかかかれてないかってぐらいの小さい国。
「あ、知ってます。」
「さすがだね。」
こんな国、知らない人のほうが多いよ。
「なんというか…その…
「極貧国、ってよくいわれてるね。まぁ、あっちの方の国は貧しい国ばっかだけど。」
「あの国が…母国だったんですね…。」
「…大っ嫌いな国だけど、残してきた人がいる。あたしはこれまで色んな人間を踏み台にしてきた。だからそのぶん…いや、それ以上に誰かを救いたい。」
悪いことばっかりしてきた。弱者を踏みにじるような本当に酷いこと。それが悪いことだと知らずに。十五歳ごろにあの国からなんとか逃げ出して、一瞬だけ優しい人に拾われた。そして、その時にはじめて自分が行ってきたことが”悪いこと”だったのだと知った。後悔が先にたつわけもなく、無知は罪なのだと過去の自分を呪うことしかできなかった。
ユリにきて、教師というものを見た時に「ああ、あたしが幼い頃にこんな人がいればよかったのになぁ…。そうすれば、こんな思いしなくてすんだのに。」と思った。これ以上無知や貧困による犯罪を起こさせない、妹分やほかの子供たちにあたしみたいな思いをさせない…それがあたしのせめてもの罪滅ぼしであり、願いだ。それを叶えるため、あたしは教師になるのだ。
「…プミラさん願いをかなえられるようになるべく私も協力します。」
「ありがとう。」
「だから、今回のようなことは二度としないでくださいね!」
「記憶が飛んでるから知らないよ。」
「とにかく!二度とウィンクルさんを襲ったりしないでくださいよ!」
「………。」
それは難しいかもなぁ…。
「…駄目ですからね?」
「あはは。」
あたしはちゃんと未来に一歩踏み出したい。だから、過去に決着をつける。




