第十七章 毒入りキス事件
「…なんの用だ。」
ピンクサファイアの瞳をかすかに細めて男が私を見つめる。
「あ、あの小娘!!」
「プミラ…!!プミラ…!!!」
「プミラさん!!!?」
パレードをみていたやつらはぽかんとしているし、バルコニーの上や王族のいるほうからなにやらわーぎゃー聞こえるが、知った話ではない。
「あぁん?なんのようだだってぇ?そいつぁ、自分の胸のなかに聞いてみなよ。」
「…おまえたち、この女はなにやら錯乱しているようだ。即刻つれだせ。」
「はっ!承知いたしました。」
ちっ。知らんぷりを突き通すつもりか。
「錯乱してるのはそっちだろうが。」
手裏剣をとりだし、あたしを囲んだ男の部下たちになげつける。それらは見事に洋服にひっかかった。
「痛くもかゆくもないな。」
部下たちはにやにやと笑いながら洋服にささった手裏剣を撫でる。
「…その手裏剣をはずせ!」
「ばちばちしちゃいな!!!!!」
男の言葉は間に合わず、男の部下は全員地に伏した。
「次はあんたの番だよ。いいか?あんたには手加減なしだからね。。」
羽化直前のセミと人間を混ぜたような不思議な半透明の存在が男にまとわりつきながらこちらを心配そうに見つめてくる。
…能力…ではないが、能力に近いあの力を使うつもりか?
「………。」
男はあたしを冷たい目で一瞥すると、あたしに一歩近づいた。
「……なんだ?今更あたしと和解しようってか。」
あの力を使う場合、至近距離では自分もまきこまれるので近づいたりはしない。
「…私の能力を忘れたか。」
…しまった!!!いつもコイツ自身の能力をあんまり使わないから忘れてた!!
「おやすみ。」
その言葉とともに唇が重ねられる。突き飛ばしたが、すでに手遅れで花の蜜のような甘い味が口の中に満ちる。
「わすれたかっ、って、ことはっ!!やっぱお前!!あたしのこと、忘れて、ない、じゃないかよ!!!」
上がった息からは噎せ返るほどの花の芳香がこぼれる。
「…連れていけ。」
体のコントロールがとれない。意識が、もうろうとして…
「プミラ…!!!!」
グラリ
「ミコ、なにも、しちゃ…だめだ。」
あたしの目の前は真っ暗になった。




