第十一章 アマデウスは電気娘の夢を見るか?
「………。」
足音の主はクリスタルの髪とクリスタルの瞳を持つ少年……そう、ミコだった。
「…いる?」
「………。」
「ねぇ、プミラ…ここなの?」
…まともに名前を呼ばれた初めての場所がこんなところだなんて。
「ねぇ、プミラ…。」
「…そうだよ。いるよ。ここに。」
「………。」
目が金色になっていないということはきっと今は目が見えていないのだろう。…最近発見したことだが、目が金色のときは目が見えているようだ。…まぁ、今となってはなんの意味もない発見だったが。
「なにしにきたの?」
あたしをこんなところにぶち込んだ張本人ともいえるヤツが一体なんのようだ。
「…おしえてほしくて。」
なにを?まさか、勉強か?あんたは勉強する権利を放棄したんじゃなかったのか?だから、あのとき首を縦にふったんだろ。
「僕は…それが正しいことだと大神官さまがいったから…僕はきみの罪と僕の罪について話した。そして、きみをとらえる協力をした。」
…罪、か。
「大神官さまは僕がなにかを得ること、知ることは悪いことだって…罪だっていう。でも、これが罪だとしても…僕はしりたい。」
……。
「…きみが部屋にこなくなってから、なぜだか胸がちくちくするんだ。きみがのこしていったプリンをたべても…ぜんぜん心がふわってしなくて…むしろ…ぎゅって心臓をつかまれる感じがする。」
……。
「なんだかずっと痛くて…どうしたらいいのかわからなくて…。この気持ちはなんという名前なの?この痛みはどうすればなくなるの?」
「…………。」
それは…
「プリン…さいごの二個、のこしておいたんだ。いっしょにたべようと思って。でも、二個ともあげる。あげるから…教えてほしいんだ…。」
…ったく。
「あたしはプリン二個ごときで買える安い女じゃないよ!!」
そもそもあたしはあんたほどプリン好きじゃないから。
「でも、特別におしえてあげる。その感情はね、悲しみ。」
んああっ!!自分でいうのは照れ臭いな!
「あんたは、あたしをうしなって…あたしと会えなくなって悲しいって思ってんの!!そういうこと!!」
わかったか!!!
「かなしみ…。」
そう!!
「…どうやったら、なくなるの?」
「…悲しみはつらい感情だけど、なくしちゃいけない。つらい感情も人間を人間とするために必要な感情なんだ。だから、なくすことはできない。」
むしろ、明るい感情よりこういう感情のほうがより人間らしいかもね。
「でも、今の悲しみの場合は…まぁ、あたしと会えばそれなりに少なくなるんじゃないの。」
たぶんね。……そういえば、
「あんた、勉強は本当に嫌なの?」
あんときは権利を行使しないとかいってたけど。
「…ううん。色んなことを知られてたのしいよ。」
「そっか。」
本当に嫌なわけじゃないのか。よかった。
「あとね…きみがいろいろ教えてくれたからこそ…こうやって、大神官さまのことばに背いてじぶんで行動できるんだと思う。それは、大神官さまや神にとっては悪いことかもしれないけど…僕にとっては…いいこと、なんだとおもう。」
……もしかして、あたしの言葉は…あたしの思いは…ちゃんと、ミコに届いていたのかもしれない。あたしは、ミコの松明に…まだ、小さな火だけど…灯せているのかもしれない。
「…そっか…。」
うれしいな。
「…じゃ、あたしがここから出るまで待っててよね。こっから出たらまた、一緒に勉強しようよ。」
「…ここから出たら?」
「ああ。」
一か月後までにはヒメユリちゃんがどうにかしてくれるだろう。
「ほんとうに?」
「もちろん。」
「絶対?」
「そうだよ。」
なんだよ、しつこいな。
「そんなに信じられないのか…。だったら、はい!」
そういいながら、ミコとあたしを隔てるガラスに手をあてる。
「ほら、あんたも!!」
ミコとあたしの手がガラス越しに重なる。
「指切りげんまん 嘘ついたら はりせんぼん のーます!ゆびきった!!」
ミコはぽかーんとしている。
「…なに、これ?」
「絶対に破っちゃいけない約束のときにやるやつ。約束をやぶったら針千本のましてもいいですよ、ってこと。」
あたしもよくわかんないけど。というか、本当は小指同士でやるものだけど。
「…わかった。信じる。」
よかった。
「じゃあ、
……じゃあ?




