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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第16章 終焉編
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60 侵攻

この章は人がバンバン死にます。

神聖法国アルナスとクーイアン帝国とが国境を接する平原地帯。

半年前の人智を超えた激戦の傷跡が癒えぬ平原に全てを押し流す津波の如き白い波濤が突き進んでいた。

白の軍装を纏った神聖法国アルナスの騎馬軍団百万の大軍勢は戦意高く進軍していた。

結局先の戦いの後アルナス側が矛を収める事はなかった。

前回と同様にアルナス軍十万を壊滅させた責をクーイアン帝国と勇者達にありとして前回に十倍する大軍を動員して国境から雪崩込んできたのだ。

アルナスの騎馬軍団百万は前回の主戦場であった平原にぽっかりと数kmにも渡って開いた緩やかな窪地に差し掛かろうとしていた。

対するはずの帝国軍の姿は見えない。

「人間同士が争っている場合じゃないだろうに」

窪地の反対側で紗耶香は迫りくるアルナス軍を睨みながら憤然として呟いた。

世界の危機。

そう呼称されたこの世界各地を襲っている魔物群の脅威。

数年前から頻発し半年前には戦場に突如乱入しアルナス軍の切り札である火竜(サラマンダー)を瞬殺し両軍を壊滅させた三体のトライポッドについては勇気が倒したとはいえ脅威の全容は未だ見えていない。

それなのに人間同士が更に争おうというのである。

この世界の人間でもない勇気や紗耶香達が勇者召喚魔法で強制的に召喚され過酷な扱いを受けそれでも戦っているのにその当事者達がこの有様なのだ。

紗耶香が憤るのも無理はなかった。

「前回アルナス軍側はほとんど全滅だ。まともな状況報告がされていないんだろ。アルナスの現在の指導者達が世界の危機的状況をどの程度理解しているのかしれたものではないさ」

勇気が肩を竦めた。

「勇気はそれでいいのか」

「よくはないな。というかこういうふざけた言い掛かりを俺につけてきた事を文字通り死ぬ程後悔させてやる。今軍事行動を起こす危険性とその結果どうなるのかも帝国を通じて警告はした。それでもこの場に進軍してきている愚か者達については命で贖ってもらおう。デタラメな話しを何も考えずに鵜呑みにして状況も省みず他国に攻め入ってきたんだ。俺の理不尽な暴力に一方的に踏み潰されてちっとは自らが振るうつもりでいたその痛みと苦しみを思い知るがいい」

勇気は目を瞑り両手を大きく広げた。

空気が揺らめき周囲に無数の白熱化した魔力球が生まれていく。

それは窪地の各所に漂っていき横一列に並ぶと形状を変えていった。

それは変形しながら膨れ上がり表面の色は赤熱に濃く実体を持つかのように変わって全長五mの四足の大トカゲを形成していく。

その数百体。

「モデルとした火竜(サラマンダー)と違って魔力を注ぎ込んで超高熱化した魔力球を成形し偏光着色して見た目だけ整えた炎のゴーレムと言った方がいいような紛い物だが吐息(ブレス)の威力はそう変わらない」

百体の疑似火竜(サラマンダーゴーレム)の顎が一斉に開き唸るような吠え声と共に口腔の白熱光が高まっていく。

アルナス軍の前衛は前方の脅威に気付いたが既に何をする時間もなかった。

『『『『るるるるおーん!!』』』』

百本の白熱の槍がアルナス軍を焼き焦がし切り刻み薙ぎ払っていった。

見渡す限りが地獄の業火に呑み込まれ視界が塞がれる。

爆炎が晴れそこには大量のアルナス軍の騎士達と軍馬の炭化した遺骸が転がっていた。

直撃せず即死こそしなかったが白熱光が近くを掠めただけで燃え上がった騎士や軍馬がのたうち回り断末魔の悲鳴を上げ続けている。

アルナス軍前衛はその一斉射で忽ちの内に混乱の坩堝に陥った。


神聖法国アルナスの上将軍ダストンはその瞬間まで上機嫌だった。

前回の敗戦の責任をとって軍の重鎮達が軒並み辞職し上位の法衣貴族であり上将軍であっても軍内の要職では次席に甘んじていた彼に軍のトップのお鉢が回ってきた。

ダストンは直ちに軍内の敗北主義者達の粛正を始め主戦論者で軍の体制を固める事に成功した。

そして国論を操作し再戦を主導したのであった。

いわく法国の勇者を帝国の偽勇者が騙し討ちにした。

正当な懲罰を行おうとしたアルナス軍をクーイアン帝国内に誘い込み卑劣な罠に掛けて大打撃を与えた。

あまつさえそれを世界の危機によるものと騙りアルナス並びに全世界を騙そうとしている。

成り上がりの三等国であるクーイアン帝国の横暴をこれ以上許すな。

等々前回火竜(サラマンダー)の威力とゲイルの口車に乗せられた連中の口実と同様にデタラメで悪質な内容が流布され法国内を挙げての百万の出兵という大動員が掛けられていった。

実際前回の戦いの生き残りがほとんどおらず僅か数件の報告も要領も得ない狂ったような信じられない内容だったためダントンを含むアルナス軍上層部は自らが流したデマを信じ込みすらしていたのだ。

クーイアン帝国から発せられた世界の危機に関する情報も今軍を動かす事の危険性もその結果起こり得る未曾有の大災厄の警告も全て虚偽として否定した。

火竜(サラマンダー)を擁するアルナス軍が正面から踏み潰されるように壊滅した事実からも目を反らし前上層部が任命した指揮官の無能さ故に指揮を誤り敵の罠に掛って敗れたと断じ戦訓が活かされなかったのであった。

有能な指揮官が統率し十分な兵力があれば戦いには勝てる。

その信念の元百万のアルナス軍を率いて進軍してきたのであった。

ダントンにとって後は大軍をもって敵を踏み潰し凱旋するのは確定的な事実であったのだ。

それ故にそれが起こった時呆然としてしまったのである。

アルナス軍本隊中央で一際大型の軍馬に跨がり全軍をへい睨していたダントンは前衛のかなり手前にある大きく緩やかな窪地に立ち上る空気の揺らめきの壁を見た。

その下に白熱した球体が浮かび上がりそれが見覚えのある形になっていった。

軍の演習場で十一体の火竜(サラマンダー)のブレスの一斉射撃のデモンストレーション。

ダントンは当時の軍の重鎮達と一緒にそれを見学していた。

何の戦果も残せず同行していた軍と共に壊滅していたため忘れていたがその一斉射撃は数百の標的を一瞬の内に吹き飛ばしていたのだ。

その十倍近い数の火竜(サラマンダー)がいきなり現れその顎が一斉に開き唸るような吠え声と共に口腔の白熱光が高まっていく。

ダントンは全軍の指揮官でありながら次に起こるであろうこの世の地獄のような光景を幻視し恐怖のあまり青冷め凍りついていた。


前回アルナス軍側がクーイアン帝国軍十万+勇者二人を殲滅する戦術兵器として投入した火竜(サラマンダー)は十一体。

同威力の白熱光を放つ十倍近い戦力がいきなり現れたのだ。

その恐ろしさを実感として理解出来た事だろう。

百体の疑似火竜(サラマンダーゴーレム)は断続的に白熱光を放ち前進を始めた。

白熱の刃が荒れ狂い熱波が吹き荒びアルナス軍を蹂躙していく。

一瞬の内に炭化し消し飛ばされ粉砕され焼き尽くされ厖大な死が大量生産されていった。

アルナス側に視界いっぱいに広がっていた騎馬軍団は既になく燻る死骸とバラバラになった死骸の断片の焼け野原となっていた。

彼方には阿鼻叫喚の渦に呑まれ逃げ惑う敵軍の姿が見える。

アルナス軍の戦死者はこの時点で一割強十万に達し恐慌に陥った前衛部隊は本隊を巻き込み総崩れを起こし始めていた。

「勇気、さすがにこれは・・・」

「こっちも乾坤一擲の背水の陣だ。手加減する余裕も手加減するつもりもない。見ろ、本命がお出ましだ」

凄惨な大虐殺の様相に戸惑いの声を上げる紗耶香に勇気は上空空を指し示した。

天空より流星群のように幾つもの黒い塊が炎の衣を纏い白煙の尾を引きながら落下し近付いていた。

「奴らの全容は依然分からないが前回と似たようなシュチエーションで出て来るところを見ると衛星軌道辺りから高エネルギー反応を捉え何らかの脅威判定をして動いているんだろう。とにかく敵の力がこちらの予想を遥かに超えていればここが俺らの死地となるんだ。愚か者達に情けを掛ける余裕などない」

勇気はアルナス軍を放置し疑似火竜(サラマンダーゴーレム)を周囲に集め前回と同じ巨大な土の巨人(マッドゴーレム)の形成を始めた。

アルナス軍についてはこのまま逃げるならそれでよし逃げなければ前回と同様に巻き添えで壊滅するだけである。

二人が土の巨人(マッドゴーレム)に呑み込まれその全長が百mに達しようとする頃トライポッド群は続々と大地に激突するように地上に降り立ってきた。

まだまだです。

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