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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第12章 死亡遊戯編
87/119

52 ペテン

説明回です。

「勇気!説明しろ」

「まあ待て」

セレン達の追撃から帰って来た勇気に紗耶香が詰め寄った。

勇気は制止し地竜(アースドラゴン)の遺骸の一体に無数の火槍(ファイヤーランス)を一遍に生み出し放った。

火弾(ファイヤーボール)を超える高熱の火槍(ファイヤーランス)を受けても地竜(アースドラゴン)はゆっくりとしか燃えていかない。

「火炎無効ってほどじゃないが高い耐火能力はあるようだな」

「何を・・・」

「まあ見てろ」

燃え上がった地竜(アースドラゴン)の遺骸の口腔部のやや下が割れ中から黒い物体が飛び出してきたが既に炎に巻かれており直ぐに燃え尽きた。

それと同時に残り八体の同じところが割れ中から黒い物体が飛び出してきた。

勇気は慌てず今度は無数の火弾(ファイヤーボール)を生み出し叩きつけた。

「これは?」

「シオンから聞いただろ。魔物達に憑りつき黒化凶暴化させている寄生体さ。こいつらは宿主が死んでも擬死でやり過ごそうとするからこうやって炙り出して止めを刺している。魔物騒ぎの直接的元凶はこいつらだが世界の危機そのものなのかははっきりしていない」

全て燃え尽きたのを確認した勇気が紗耶香から離れていく。

「おい!どこに行く。説明がまだ済んでいないぞ」

「向こうにここまで無理をしてきて力尽き動けなくなった連中がいる。まだ息のある奴がいたら助ける。紗耶香も動けるようになったら合流して手伝ってくれ。説明はその後だ」

人命救助優先と言われれば紗耶香も引き止める事も出来ずその背中を黙って見送った。


人は殺すよりも助ける方が難しい。

勇気は片っ端から大地にボロ雑巾のように転がっている人間の息を確認し助けられる者に治癒魔法を掛けていっていた。

当面大丈夫な程度に回復したら次の重傷者に移っていく。

人数が多過ぎて完治させるまで治癒させる時間が取れないのだ。

直前に息を引き取った人間には弱い雷魔法で電気ショックを与え強引に心臓を動かし蘇生させ治療していく。

何とか動けるようになった紗耶香はそんな作業を無表情に続けている勇気と合流した。

紗耶香も懸命に適性が低く弱い治癒魔法で生死の境を彷徨っている重傷者を勇気が来るまで持たせたり早く治療出来るように運んだりしていた。

バラバラに周辺に逃げた村人達の内まだ体力が残っていた者もポツリポツリと戻ってきて手伝っていた。

それでも治療が間に合わず死んでいく者もいる。

紗耶香は零れ落ちる命の重さに歯噛みするが勇気は見向きもせず坦々と治療していく。

自らの意志で治療に当たっているのだ。

何も感じないはずはない。

紗耶香はそんな勇気の姿に人間としての強さを感じていた。


結局勇気の治癒魔法を使った人命救助は翌朝クーイアン帝国の救援隊が到着するまで続いた。

クーイアン帝国の救援隊より先に到着した皇族専用飛行船のシオンを含む魔導師達も治療に加わり双子メイドや飛行船の船員達も積まれていた食材を使って炊き出しを行い死の縁を脱した病人達の体力を回復させていった。

合流したレティシア皇女は最初勇気に何か言いたそうだったが自国の民の救助を優先して追及は後回しにした。

加奈も紗耶香と話したがっている様子だったが二言三言言葉を交わしただけで救助の手伝いをしていた。

そして帝国の救援隊が到着し連戦の疲労が甚だしい勇気と紗耶香は後を任せて飛行船の寝室のベッドの上に倒れ込み死んだように眠った。


「で?やっと説明してもらえるのか?」

起き上がった二人はそれまで救助を続けて疲れ切ったレティシア皇女やシオン達に寝室を譲って飛行船から離れた。

足場が崩れやすく誰も近づかないカリオス伯都市跡のすり鉢状の大穴の縁で二人は底の方を見ていた。

大穴の底は地竜(アースドラゴン)の赤黒い血で染まっていた。

「ここの大物はどうなった?」

「土魔法で数cm単位にすり潰した。寄生体の方もそこまで細かく千切ると死ぬからな」

後方から帝国の救助隊の救護を受けている避難民達の喧騒が聞こえている。

勇気と紗耶香が間に合わなければ避難民の多くが地竜(アースドラゴン)の餌食になっていただろう。

「・・・何で態々黒騎士に扮していたんだ?セラスを助けたいならそのまま味方をすればいいだけじゃないか」

「別にセラスを助けたかった訳じゃない。紛争を早く鎮静化させて人死にを少なくしようとしただけさ。セラスに公然と加担したら帝国側が約定を守る保証がなくなるからな。正体不明の黒騎士に扮していればその問題はなくなる。それにセラス側に加担して帝国に睨みを効かすためにずっと足止めされる訳にもいかない。黒い魔物は国などお構いなしだしな。帝国と戦争を継続していたらレティシア皇女は城塞都市に滞在しておらず助力依頼が遅れたか助力依頼自体が来ずここの連中を助ける事も出来なかっただろう」

「なら私がセラスに加担したのは余計な事だったのか?」

「そうでもない。紗耶香が自分を召喚した国を助けないというなら放っていたさ。俺は召喚した国が滅びるに任せたからな。同じ立場の召喚者の意志は尊重する」

「その割にはえらく手荒に叩き墜とされたが?」

「ハハハッ、許せ。飛行ユニットにはメインパワー回路がいかれた時のセーフィティー回路が別の場所に組まれていて最低高度まで下がると働くようにしてある。最後にパワーが戻ってなんとか生きていたろう?」

「どこまでも貴様の手の平か。黒騎士があの森に現れたという事は墜とす場所まで誘導されていたのだな」

「当然だ。幾らセーフィティーが働くといっても運が悪かったら大怪我だ。直ぐに治療出来るよう近くに降りていた。そっちは墜落の最中でこっちに注意を払っている余裕はなかったようだが」

「どうしてそこまで私を助ける事に拘った?帝国の勇者はあっさり殺したのだろう?セレン達を始末した様子では女であろうと容赦するタイプじゃない」

「帝国の勇者は隷属の首輪なしで俺を襲ってきたし仲間を喜んで殺したって言っていた。生かす余地はなかった。紗耶香は以前の俺と同じだったからな。全てを憎んでいた。俺の時にはいなかったがその原因となった同じ召喚者すらもな。セラスの故老王は毅然としたまま殺されたんだろうな。それで復讐が胸糞悪くなった。何もかもが嫌になったから俺を殺す事に固執した。実際には俺に殺されたかったんだろう?それで全て終わるから。しかし俺の死亡の報を受けた時この異世界に一人になった事に気付き自分の殻に籠った」

「だったらあの時正体を明かしてくれれば」

「俺は一人でそれに耐えてきたのでね。そこまで面倒は見ない。それに下手に正体を明かして依存されても困るし。特効薬である加奈も向かっていたからな」

「そうだ。何故加奈の事を知らせなかった。そうすれば私だって勇気を殺そうと思わなかったのに」

「自分が殺したはずの人間が生きていると言って素直に信じたか?むしろ怒らせただけだろう。不測の事態を考えれば戦場の真上に加奈を連れてくる訳にもいかなかった。現にセレンが仕掛けてきたろう?加奈を抱えていたら機動力の鈍ったこっちを襲ってきた可能性もあった。俺はともかくせっかく蘇った加奈を死なせかねなかったからな」

「それは・・・、仕方がなかったか」

確かにあの時加奈が生きているなんて言われても信じはしなかったろう。

むしろ怒りに任せて回避も何も考えずに突っ込んで死んでいたかも知れない。

「・・・それであの死体は何なのだ。セレンもはっきりと殺したと言っていた」

「加奈の時に気付いたんだが魂からでも人間を再生出来るなら血肉があるならもっと容易に少ない魔力で人ひとり作れるんじゃないかとな。治癒魔法で元の世界でも不可能な部位欠損ですら治せるんだ。不可能のはずがない」

「それで・・・?」

「皇室専用飛行船から出撃した後一旦ラードまで戻って黒騎士の鎧を回収、あの森に移動して俺の肉片から治癒魔法で俺のコピーを作成し使い魔契約で感覚をリンクさせた。俺のコピーと黒騎士の鎧をアイに任せて紗耶香との戦闘終了後戻って俺の装備をコピーに着せ俺は黒騎士の鎧を纏って紗耶香の救援に向かった。セレン強襲後紗耶香に手を出さないよう釘を刺しておくつもりでコピーを向かわせたんだがあっさり殺られた。本当は飛行船に戻してアリバイ証明をさせるつもりだったんだ」

「大方色仕掛けにでも引っ掛かったんだろう」

「そういうとこは察しがいいんだな。まあ、その通りなんだが。まさか古典的な毒姫を使ってくるとは思わなかった。コピーだから相手の手の内を見るつもりもあったんだがな」

「最初にセレンに襲われた時火弾(ファイヤーボール)を防げたのは黒騎士の鎧の魔法防御と考えてもいいが超高熱の火槍(ファイヤーランス)を背中に受けて大丈夫だったのは?」

「最初の時は確かに黒騎士の鎧の魔法防御だ。最初から火槍(ファイヤーランス)を使われていたらやばかった。火槍(ファイヤーランス)の時は中にいつもの装備を着込んでいたから大丈夫だった。装備が回収出来ていてよかった」

「金属鎧より防御力の高い皮鎧?そんなデタラメな」

「物理・魔法無効の龍鱗の皮鎧。ファンタジー世界特有だよな」

「なんでもファンタジーで済ませばいいものではないぞ」

「まあまあ、シオンに頼んで紗耶香の分も作ってもらうから」

「ムウ、なら仕方ないか」

「女の子ならドレスとか欲しがればいいのに」

「放っとけ。そういえばなんで加奈にメイド服を着せているんだ?」

「加奈の紗耶香分不足による禁断症状を抑えるためにメイド仕事をさせていたんだ。ただ不器用で皇室専用飛行船の高価な物品を壊しまくってくれたから後悔している。それと加奈が着ているメイド服は俺の装備と同じ物理・魔法無効の龍鱗を使ったドラゴンスケイルメイド服の試作品だ。加奈の安全には最大限気を使っているんだ。感謝してほしいな」

「紗耶香分・・・、ま、まあ加奈の安全に気を使ってくれた事は感謝する」

「分かってくれればいい。話しは以上でいいか?」

「ああ」

「それと皇女には多少事実を脚色して伝えるから話しを合わせておいてくれ」

「分かった。しかし勇気は思ったより面倒見がいいんだな。最初に会った時は血も涙もない冷血漢だと思ったが」

「俺は生来のペテン師さ。迂闊に信用しない方がいい。何か魂胆があるのかも知れないぞ」

「フフッ、警告してくれるなんて甘いペテン師だな。気をつけよう」

「そうしてくれ」

話しは終わったとばかり勇気は立ち去った。

後日ドラゴンスケイルメイド服マークⅡが届けられ紗耶香がまた騙されたと思ったかどうかは定かではない。

マークⅡなので普通のメイド服よりは鋭角的なセイバー風のデザインと思ってください。

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