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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第12章 死亡遊戯編
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45 悲嘆と希望

久方ぶりに長文になりました。

私は幼い頃からずっと一人だった。

両親を事故で亡くし祖父の元に引き取られた。

古式刀術の達人である祖父は私を徹底的に鍛えた。

思えばあれは闘う事しか知らない祖父の愛情だったのかもしれない。

しかし幼い私にはそんな事は分からず祖父に疎まれていると思っていた。

小学校中学校と修行の成果が出てきていた私はクラスから孤立した。

私が習っていたのはスポーツとしての剣術ではなく殺人剣だ。

上達すればする程剣呑な雰囲気を纏うようになる。

そんな私に近づきたがる者などいなかったのだ。

だから高校では剣道部に入って友達を作ろうと思っていた。

中学までの子供の遊びではなく大人の剣術を教えていると勘違いしていたからだ。

祖父が私に教えているレベルが一般常識から遥かに逸脱していることを友達がいなかった所為で気付かなかったのだ。

我が家には木刀しかなかったので態々竹刀を購入して入学式に向かう程気合いを入れていたのだが後日やっぱり遊びレベルの延長でしかなかったため落胆したものだ。

しかし思わぬ誤算もあった。

入学式の日にこんな私に声を掛けてきてくれた女の子がいたのだ。

「こ、こんにちは。私は遠月加奈。貴方は?」

私にはない可愛らしさを持った彼女はやや上擦った声で話し掛けてきた。

「私の名は九条紗耶香。よろしく頼む」

私は努めて不自然にならないようにっこり笑って応えた。

それから私の世界は徐々に開けていった。

四六時中加奈が私の側にいたお蔭で話し掛けてくるクラスメートが増えたのだ。

上級生の剣道部の先輩にも竹刀を持って見学に行っていたのを見られていたらしく勧誘の声を掛けられた。

これまでは私の持つ剣呑な雰囲気のため勧誘をする者もなかったのだが加奈の存在が中和作用を果たしたらしい。

一度手合せして私の腕前を知った先輩達にしつこく勧誘されたのには閉口したが。

偶にレベルの高い高校との練習試合に助っ人として参加する事で勘弁してもらった。

思えばあの頃が一番楽しい時期だった。

二年になって加奈と一緒のクラスになって喜んだものだ。

そしてそれが悲劇に変わった。

異世界にクラスごと召喚され隷属の首輪で自由を奪われ加奈やクラスメート達と殺し合いをさせられた。

そして私は又一人となった。

その私の前に現れたのが帝国の勇者と聞いていた勇気という同じ元の世界から来た男だった。

私と同じように召喚されクラスメート達を殺し召喚した皇帝も殺したが帝国に女をあてがわれ飼われている無能な愚か者。

そんな男に対抗するため私達が召喚されたと知って憎しみと怒りで隷属の首輪による強制がなくとも殺す気になった。

結果は惨敗。

いいようにあしらわれた上に隷属の首輪まで外してもらった。

しかし私は彼と決着をつける事に拘った。

セラス老王や召喚に関与していた者を皆殺しにした後しつこく探した。

成り行きでセラスと帝国の国境上空で再会した。

そこで彼が帝国の勇者でない事を知り戦わないでいい取引を持ち掛けられたが拒否して戦う事に固執した。

又いいようにあしらわれた。

彼は彼なりに紛争を収めようとしていたのを後で知った。

彼が義侠心で動いていた事も知った。

そしてその直後に彼の死亡が伝えられた。

私は目の前が暗くなった。

彼の身を案じたのではない。

この異世界でたった一人になってしまった恐怖に身が竦んだのだ。

思えば最初に出会った時隷属の首輪をしていたとはいえ自分の意志でも殺す気でいたのを彼は私を接近させるリスクを冒してまで助けてくれた。

その時点で彼が私の思っていたような人物ではなく巻き込まれただけの私達と同じ被害者の一人に過ぎないと気付くべきだった。

いや本当は気付いていたのかもしれない。

ただ我儘に彼に八つ当たりをしていただけだったのだ。

そして彼は死んだ。

運び込まれた死体には頭がなかったが着ていた皮鎧はあの時の彼の物であったし使える状態の飛行ユニットもあった。

黒騎士の見立てでは身体の変色具合から毒を使われたとみられアルナス方面で殺されたのなら私達を襲撃し帰還中のセレンと接触して騙し討ちにされたのではないかとの事だった。

だが私はそんな事はもうどうでもよかった。

私はセラス王にあてがわれた部屋に籠ってただ孤独の深淵に打ち震えていた。


「紗耶香殿、いい加減出て来たらどうだ」

扉の向こうで黒騎士の声がした。

私はいつも通り無言だ。

「帝国の飛行船が到着したとの事だ。ユウキ殿の縁故の者も乗っているはずだ」

私はピクリと反応した。

ユウキの縁故?

もしかして・・・。

私はのろのろと動き扉を開けた。

「私と同じ世界の人がいるの?」

私は藁にもすがるような思いで聞いた。

そんな事があるはずがないのは分かっている。

しかし聞かずにはいられなかったのだ。

「それは自分の目で確かめる事だ」

それだけ言うと後ろにいたアイという名前のメイド服の少女に私の身支度を整えるように指示して去っていった。

私は少女のするがままに任せた。


身支度が終わり少女に引っ張られるように城外に連れ出された。

城外の広場に以前私が襲った飛行船が着陸しておりそこから降りたと思しき四人の女性にセラス新王と黒騎士が相対していた。

アイは近くまで私を案内するとさっさと城内に戻っていった。

私は自主的に進まなければならずよろよろと歩いていった。

周囲を囲む護衛の近衛騎士達は私のやつれ果てた姿に驚きながらも道を開けてくれた。

セラス新王も私を見ると少し驚いた顔をしたが喪服姿の女性に私を紹介した。

「こちらが勇者サヤカ殿です。サヤカ殿、こちらが帝国の皇女殿下です」

「始めまして、レティシアと申します。以後お見知りおきを」

「勇気の縁故の者というのは誰?」

私は挨拶を返しもせずに後ろの三人を見た。

一人は魔導師姿の美女、二人は喪服を着た少女達で顔に黒いベールを被っている。

少女の一人はアイと同じ背格好でもう一人は何故か魔導師の女性に口を塞がれモガモガ何か言っている。

「こちらの三人がそうです。勇者の水先案内人である大魔導師のシオン様、そしてユウキ様の侍女達です」

私の無礼を無視して平然とレティシア皇女が紹介する。

私はガックリと肩を落として背を向けた。

そして部屋に戻り鍵を掛けベッドに倒れ込んだ。


コンコン。

扉をノックする音で目を覚ました。

返答はしない。

「サヤカ、起きているか。私は先程会ったシオンだ。お前の知り合いを連れてきた」

私は又のろのろと起き上がった。

何度失望すれば自分は諦めるのだろう。

今度は幻聴だろうか。

この世界に私の知り合いなど殆どいない。

そしてその中に会いたい者などいない。

私は何も期待しないつもりでそれでも切望しながら扉を開けた。

「紗耶香ちゃん!」

聞き覚えのある少女の声がした。

そして彼女は抱き付いてくる。

「・・・加奈?」

ベールがめくれその下によく知った少女の顔が現れる。

私が殺した少女。

今はもういないはずの少女。

私は夢でも見ているのだろうか?

それとも今度こそ気が狂ったのだろうか?

「加奈!加奈!」

「紗耶香ちゃん!紗耶香ちゃん!」

それでも私はその温もりにすがり抱き返した。

目から涙が溢れる。

彼女も涙を流しながら私の名前を連呼していた。


「感動の再会はそこまでにして少し話をしないかい?」

暫くしてシオンと名乗った女魔導師が私達にハンカチを渡しながら声を掛けてきた。

「これは一体どういう事なんだ?」

ひとしきり泣いて少し冷静になった私は問い掛けた。

「私とユウキで彼女を復活させた」

シオンがとんでもない事をあっさり言った。

「そんなバカな事あるはずがない。幾ら異世界だからと言って死んだ者が生き返るなんてありえない」

「今その抱き付いている彼女の存在を否定するつもりかい?」

「それは・・・」

私は腕の中でまだアグアグ泣いている加奈の存在を実感しながらこの異世界に対する認識を改め始めた。

「なら勇気や他のクラスメートも復活出来るんじゃないか?」

「残念ながら無理。カナの場合は彼女の特殊な素養のお蔭とユウキの厖大な魔力が使えたから運良く復活出来ただけ。素養のない者は無理だし今のサヤカの魔力量じゃ一人復活させるのにも全然足りない」

「そうか・・・」

私は加奈だけでも生き返らせてくれたことに感謝していた。

これ以上望むのは無理な話しなのだろう。

「さて君達の今後についてだが当然元の世界に帰りたいよね」

「ああ、そうだ」

「故セラス老王から帰還方法は聞いているかな?」

「他の勇者と協力して世界を危機から救えと」

「その通り。今まではユウキが対応していたのだがこれからはサヤカがやるしかない」

「そんな!」

「ユウキがいない以上仕方がない。それに幾ら異邦の地だからといって今現在生きている国や世界が滅びたら君達も困るだろう」

「それはそうだけど」

「私や黒騎士も最大限サポートするから頑張って世界を救ってくれ」

何か口先三寸で騙されているような気もするが私は止むを得ず“勇者”をする事になった。

ここで再会させてみました。

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