34 戦場Ⅰ
主人公が・・・。
街道を怒濤のごとく進む騎馬軍団。
クーイアン帝国軍十万の勢いは凄まじい。
セラス王国国境の砦は一呑みにされ壊滅した。
街道沿い村々の逃げ遅れた人々が文字通り踏み潰されていく。
帝国軍はセラス王国の民の命などどうでもいいのだ。
村をほんの少し避ければいいだけなのにその手間すら惜しんでセラス王国の民を踏み躙っていく。
私は飛行ユニットで滞空し地上の様子を見ていた。
あれから春日勇気と決着をつけるべく飛行船を追ったのだが見つける事が出来なかった。
セラス王から襲撃前に聞いた移動予定ルートから飛行船が外れてしまったのだ。
一旦見失ってしまえば広大な帝国領で飛行船を見つけるのは至難の技だ。
一ケ月ほど帝国領内を探し回ったが見つからなかった。
食事や睡眠を取るため街や村にも入ってついでにこの世界の風俗や飛行船の情報を集めたりしている内に一ケ月経ってしまった。
そして帝国領内でセラス王国への侵攻の噂を聞き帝国軍の動きを追ってここまで来たのだった。
最初はセラス王国が滅びる様を高みの見物をするつもりだった。
国境の砦が壊滅した時はなんとも思わなかった。
しかし罪のない村人達が踏み躙られていく姿を見て心が揺らいだ。
確かに自分達がこの世界に召喚されたのはこの国の民のためであった。
死んだクラスメート達の無念を思えばこのまま見殺しにするべきだ。
私は唇を噛みしめた。
見ていると子供の手を引いて逃げる母親に軍馬の一団が近付いていた。
このままでは逃げ切れず踏み潰される。
その瞬間私は考えるのを止めた。
飛行ユニットのパワーを全開にして軍馬の先頭に向けて突っ込み地上に激突する寸前で立て直す。
先頭の軍馬が騎士と共に粉砕され肉片となって弾け飛ぶ。
飛行ユニットの進行方向に展開されている魔力力場がかすったのだ。
後方の騎馬は驚いて足が止まった。
私は親子の前に舞い降りる。
「助かりたい?」
「お願いします。助けてください!」
いきなり空から降りてきた私を呆然と見ていた母親はそれでも救いの手に飛びついた。
「しっかり掴まって離さないで」
私は二人を抱きかかえ足の飛行ユニットだけで飛び上った。
二人は必至に私にしがみつく。
そのまま帝国軍周辺から離脱して比較的安全そうなところに再び降り立つ。
「ここなら取り敢えず安全だと思う」
「あ、ありがとう」
子供が得体の知れない私に怯えながらもお礼を言ってきた。
私は微笑み直ぐに飛び上った。
もう頭で色々考えるのは止めだ。
したいと思ったことをやる。
私は帝国軍の前方に出て牽制の火弾を数発撃ちこみ上空から呼び掛けた。
「帝国軍に告げる!今すぐ非道な侵攻を止め自国に戻れ!さもなくば殲滅する!」
返答は魔導士からの火弾だった。
私は軽く躱した。
「では宣告を実行する!」
私は飛行速度を上げ帝国軍の中に突っ込み人馬共々に粉砕していった。
帝国軍が前衛からかき氷のように削られていく。
帝国軍側は高速移動する私に対応出来ない。
やがて死の咢の前に帝国軍の動きが止まり後退を始めた。
私は帝国軍が退き始めたのを察知すると攻撃を中止し上空に移動して確認する。
帝国軍は潮が引くように後方に下がっていく。
「私は何をやっているのだ」
私は小さく自嘲した。
次回かその次であの人が再び・・・。




