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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第11章 セラス攻防編
67/119

33 再誕

マジで主人公が脇役になっています。

桜の花びらが舞い落ちる。

ひらりひらりと舞い落ちる。


生まれる前の母の胎内での安堵感。

生まれ出る不安と苦痛。

微笑む父母の若い顔。


降り積もる花びらは地を覆う。


初めての七五三、晴れ着ではしゃぐ自分。

母に連れられ通う幼稚園。

ファミレスで両親と食事。

顔についたご飯粒を取ってくれる母。

ほんの少しの違和感。

小学校に入り中学を卒業する。

加速する時間。


風が吹いて桜吹雪が視界も覆う。


高校の入学式。

桜舞う並木道を進んで行く。

スローになっていく時間。

強い風が吹き桜の花びらが視界を覆う。


桜吹雪が晴れそこに貴方がいた。



高校の入学式、桜舞う並木道で私は運命に出会ったと思う。

一目見て心奪われた。

端正な顔立ち、意志の強そうな目、艶やかな長髪をポニーテールで纏めすらりとした長身に竹刀袋を持つ姿はさながら女剣士のよう。

彼女は見蕩れて立ち止まった私に気付かず通り過ぎていった。

それが最初の出会い。

入学式が済み教室に入った時彼女がいて運命を感じた。

一年生とは思えない落ち着きと凛として気迫に満ちた雰囲気が彼女を近寄りがたい存在にしていた。

クラスの男子女子とも彼女に魅かれていたが皆声を掛ける勇気が出せなかった。

本来引っ込み思案の私は彼女に近寄りたい一心で自分から声を掛けた。

「こ、こんにちは。私は遠月加奈。貴方は?」

声は上擦っていたと思う。

「私の名は九条紗耶香。よろしく頼む」

やや時代がかった物言いだけど彼女はにっこり笑って挨拶を返してくれた。

それから私は彼女にべったりだった。

そんな私を孤高の彼女は数少ない友達として付き合ってくれた。

二年になってもそれは変わらずそんな幸せな時間がずっと続くと信じていた・・・。



私はベッドで目を覚ました。

涙に濡れた目を手で拭い辺りを見回す。

何処かで見た覚えのある鋭い目付きをした若い男性が傍らに座って私を観察していた。

頭がよく働かず反応出来ない。

「おーい、シオン。彼女が目を覚ましたぞ」

誰かに呼び掛ける。

暫くして美しい魔導師姿の女性が部屋に入ってきた。

「ようやく眠り姫の御目覚めかい」

彼女は近づき私の手を取った。

「自分が誰だか分かるかい?記憶はしっかりしているかな?」

彼女はゆっくり問い掛けてくる。

微細な魔力の流れが手から私の中に入ってくる。

私をセンシングしているのだ。

「わ、わ、私は・・・遠月加奈?記憶は・・・しっかりしている?」

何故か疑問形になる。

どうにも自分が自分自身であることに自信が持てない。

「加奈?紗耶香の友達か」

若い男性が呟いた。

その途端自分自身のことはどうでもよくなった。

「紗耶香ちゃんはどこ?紗耶香ちゃんに謝らないと!」

「まあ落ち着け。今はシオンの診察をおとなしく受けろ」

若い男性が宥めてくる。

「意識はしっかりしたようだね。これで記憶も定着するだろう。今までのことが分かるかい?」

女性が私に問い掛けた。

私はこれが終わらないと紗耶香ちゃんのことを教えてもらえないと思い深呼吸をして気分を無理矢理落ち着かせる。

私は紗耶香ちゃんに殺された。

その後紗耶香ちゃんはセラス王の命令通りに修行し帝国の勇者を倒すために出撃して帰ってきたら隷属の首輪が外れていた。

彼女は城の人間を皆殺しにして火を点け私を残して空の彼方に飛んでいった。

そしてこの二人が来てそれから・・・?

「私身体がある。どうして?確かに紗耶香ちゃんに殺され幽霊になっていたのに」

「ほう、幽霊になった自覚があるのか。その時の記憶もあるのかい?」

「記憶はあります。紗耶香ちゃんが飛び立ち三日経って貴方達が来ました。そして貴方が何かして・・・?」

「ほう、そこまで記憶があるのかい。やはり本来素養のない私とは違うようだ。興味深い」

そして手を離して言った。

「私達がカナを復活させた。君の素養と私の魔法、それにユウキの莫大な魔力量があって始めて可能になる事だがね。君は運がいい」

「私が復活した?でも身体は完全に死んでいたはずです。いくら魔法がある世界でも半年以上前に死んで腐り果てた身体を再生するなんて出来るはずが・・・」

「君は中々分かっている。確かにそんな状態からでは再生なんて不可能だ。そもそも私は君の死体が何処にあるのかも知らないし」

「ではどうやったのです」

「魂に刻み込まれている身体の情報から魔力だけで復元した。つまりその身体は元々の君の身体じゃない。もっとも寸分違わず同じだからそれ程気にする必要はない」

「そんな事言われても」

「私も君と似たようなものだよ。私の元々の身体は数百年前に失われている。既に何十回となく復元を繰り返しているけど私は私だよ」

「・・・」

「まあじっくり静養して身体を自分に馴染ませる事だ。その内気にならなくなる。それとサヤカの事だが現在所在は不明だ。しかしユウキの側にいればその内会えるだろう。必ず殺しに来るそうだから」

「ええッ!?じゃあこの人が女好きの無能な愚か者の帝国の勇者なんですか!」

「誰だ。そんな事言ってた奴は」

「セラス王が手に入れた情報だそうです」

「・・・ソイツは俺が殺した。俺は帝国の勇者じゃない」

「帝国の勇者を殺した貴方は何者なんです?」

「俺は只の勇者だよ。何処の国にも所属していない。俺を召喚した連中は皆殺しにした」

「・・・そうですか。貴方も紗耶香ちゃんと同じ苦しみを味わったのなら仕方がないでしょうね。同じ事をされた人間ならそれを否定出来ないしそれ以外の人間が否定するというなら私も我慢出来ません。でもそれなら何故紗耶香ちゃんは貴方を狙うのですか?」

「俺が召喚の切っ掛けとなったからだそうだ」

「でもそれは・・・」

「そう俺を召喚した奴が悪い。だが俺が切っ掛けとなったのも事実だ。今回最初に召喚されたのは俺でそれを知った他の国が召喚した自分達が死ぬ危険を冒しても勇者という戦力が欲しくなる原因を作ったんだからな。もっともこっちも黙って殺されてやるつもりもないから次回襲ってきたら殺す」

「私が紗耶香ちゃんを止めます。だから殺し合いなんてやめてください」

「期待しているよ」

彼は肩を竦めた。

彼は強い。

霊体になって見えるようになった魔力のオーラの輝きが紗耶香ちゃんの数十倍もある。

彼はそれだけ人を殺しているのだ。

前回紗耶香ちゃんが彼に負けたのも運ではなく実力の差だったのだろう。

なら今度紗耶香ちゃんが彼に挑めば確実に殺されることになる。

なんとしても止めなければならない。

彼に言いきった程には自信はない。

紗耶香ちゃんにとって私が憎悪と怒りを堪えるに足る存在であることを祈るのみだ。

実際にはかなりの比重を占めています。

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