31 再生
少し季節がズレているような気もしますが。
私の名前は遠月加奈。
現在親友の紗耶香ちゃんに首を刎ねられ生首になっています。
正確には自分の生首の上でフヨフヨ浮いています。
俗に言う幽霊というものになったのでしょうか。
首を刎ねられる寸前までは恐怖で気が狂いそうでしたが今は驚くほど冷静です。
身体を失った所為でしょうか。
本能に刻まれている感情というのは身体に帰属し魂だけになった私には感情がないのではないかと思います。
本来なら感情を持たない私は周囲に関心を示すどころか思考することすら必要性を感じないはずです。
しかし魂の記憶の中の感情の残滓が周囲に関心を向けさせ能動的に考えることを促しているようです。
私も紗耶香ちゃんも隷属の首輪というものに操られて殺し合いをさせられました。
と言っても私は何も出来ず瞬殺されたのですが。
頭が爆発したような激痛が一瞬した後気付いたら現在のような状態になっていました。
紗耶香ちゃんは私を殺した後勝ち残っていた他のクラスメート達を目にも止まらない速さで瞬殺していきます。
地の実力が違い過ぎます。
子供の頃からお爺様に殺人剣を叩き込まれた紗耶香ちゃんに敵う高校生などクラスメートどころか日本全国を探してもいないでしょう。
しかも隷属の首輪で皆が潜在能力の全てを引き出せるようになっていても使い熟せていない他のクラスメート達と違い紗耶香ちゃんは完全にものにしているようです。
不思議な事に紗耶香ちゃんや他のクラスメート達が勝ち残る度に負けて死んだクラスメート達の身体からも霊体のようなものが立ち上ってますが私と違って勝った相手に吸い込まれています。
その度に勝った方が放つオーラの輝きが増しているのが分かります。
結局予想通り紗耶香ちゃんが勝ち残りオーラの輝きは最初の頃の何十倍になっていました。
セラス王が私達を殺し合わせたのはこれが目的だったのでしょうか。
闘いが終わり紗耶香ちゃんは倒れてしまいました。
気丈な紗耶香ちゃんでも心理的負担が大きかったのでしょう。
私達の遺体は騎士達によって思っていたより丁寧に運ばれ城の側の空き地に埋葬されていきました。
セラス王も立ち合い黙って最後まで埋葬を見守っていました。
私も埋葬が終わるのを見届けてから紗耶香ちゃんを探しに移動しました。
自分の遺体や殺された場所に縛られることなく自由に思った方向に移動出来るようです。
紗耶香ちゃんが寝かされている部屋を見つけ近寄っていきましたが一定の距離まで近づくとそれ以上進めなくなりました。
理由は不明ですがこれが他の霊体のように私が紗耶香ちゃんに吸い込まれなかった原因のようです。
仕方ないので接近限界のぎりぎりの位置で静かに見守っていました。
やがて紗耶香ちゃんは目を覚まし侍女に案内されてセラス王と面会しました。
紗耶香ちゃんはセラス王に襲い掛かりたそうですが隷属の首輪に阻まれています。
セラス王は紗耶香ちゃんの態度が当然であるとして気にせずに状況説明を始めました。
セラス王はこの国は超大陸にある小国であり隣国の大国であるクーイアン帝国に軍事的圧力を掛けられている事、帝国側にも勇者が召喚され極秘にされている事、召喚を命じた者と召喚を実際に行った魔導師は召喚の代償として命を勇者に奪われてきた事、それを阻止するために首輪に細工した事を説明しました。
最後に紗耶香ちゃんの要望を聞き刀を作るために鍛冶師を呼ぶ事になり出撃の準備を整えるように指示されていました。
それから何ケ月も紗耶香ちゃんの魔力の訓練を眺めていました。
ある程度魔力制御が可能になった時点で紗耶香ちゃんは私の存在を感じ取るようになりましたがはっきりとは認識出来ず魔導師のお婆さんの説明で自然に出来た魔力溜りが見えることがあるとの説明で納得していました。
魔力制御や攻撃魔法がものになった時点で今度は飛行ユニットを使った飛行訓練に移りました。
さすがに何でもそつなく出来る紗耶香ちゃんだけあってあっという間に使い熟していました。
そしていよいよ出撃の日となりました。
紗耶香ちゃんはターゲットに向かってもの凄いスピードで飛んでいきました。
私はその飛行速度に追いつけないため御留守番です。
紗耶香ちゃんの出撃と同時に文官達と侍女が別れの挨拶をして城を退去していきました。
やがて帰って来た紗耶香ちゃんの首には隷属の首輪がありませんでした。
帝国の勇者に外してもらったとの事でした。
紗耶香ちゃんはセラス王と暫く話した後殺害し続いて魔導師も殺害しました。
二人はまったく抵抗しませんでした。
紗耶香ちゃんは城に火を掛け飛び立っていってしまいました。
後を追えるスピードがない私はそれを見送ることしか出来ませんでした。
私はこのままずっと一人で誰もいないこの場所で幽霊をやり続ける事になるのかと感情がないはずなのに暗澹たる思いになりました。
しかし予想外にもそれからたった三日でこの地に二人の人間が空より降り立ちました。
鋭い目付きをした私より二、三歳上と思われる若い男性と美しい魔導師姿の女性でした。
「さてここがシオンの言っていた目的の場所のはずだが・・・」
「見事に焼け落ちているな」
二人は城の焼け跡を見ながら話し合っていました。
「これなら写本も一緒に燃え尽きているだろう。帝国の写本も隙を見て処分する。付き合ってもらうよ。ユウキ」
「分かった、分かった」
男性の方は面倒臭そうにしていました。
「おや?」
女性が私の方を見て首を傾げました。
「ユウキ、面白いものがいるぞ」
「あの魔力溜りの事か?」
どうやら二人は私が見えるようです。
「いや、あれは只の魔力溜りじゃない」
女性が私に手招きしました。
私はゆっくり近付いていきました。
手で触れられる位置まで近付いた時女性が私の両肩の辺りに手を伸ばしました。
私はそれを抵抗せずに見守ります。
両手が肩に接する辺りで止まりそこから私に厖大な魔力が流れ込むのを感じました。
「ユウキ!サポート!」
女性が叫びました。
男性は女性を後ろから抱き締めました。
二人の間にも厖大な魔力の遣り取りが見えました。
段々身体が熱くなって来ました。
“熱い?”
霊体に体感などありません。
暑さ寒さなど関係ありません。
それなのに熱さを感じるということは・・・。
熱量が上がり徐々に体感が戻ってきます。
鼓動が脈打ち肺が空気を吸い込むのを感じました。
私は肉体が在ることを感じ同時に嬉しさと苦しさが入り混じった爆発的な感情が襲い掛かってきました。
神経が焼き切れるような灼熱感に堪え切れず私は意識を失いました。
「でこれは何なんだ?」
「私に近いものだな」
俺はシオンの腕の中に倒れ込んだ少女を見た。
歳は恐らく紗耶香と一緒。
全裸である。
「極稀に死んでも魔力で自分を保つ人間がいるのだよ。私の場合は勇者召喚魔法によって自我が固定されており魔力で受肉している訳だ。だから同じように厖大な魔力を流し込めば魂に刻み込まれた肉体の情報を元に身体を復元する事が出来る」
「まるで反魂の術だな」
「まあそんな人間は極稀だし第一厖大な魔力が用意出来ないから条件が揃う事もなく今まで試すこともない術式だったんだが成功したな。私という成功例があるから多分大丈夫とは思っていたが」
「しかしこの娘はどうする?見たところ俺と同じ日本人のようではあるが」
「連れていくしかないだろう。こんなところに放置しておくことも出来ないし」
かくして俺に又旅の仲間が増えたのだった。
気がつけばハーレム状態。




