小話33 巫女
敬虔な信仰と狂信の違いってなんでしょう?
ついに来られた。
巫女様がこの地に降臨なされたのだ。
巫女様の存在を知ったのはほんの数ケ月前であった。
我らは直ぐに巫女様の姿に心奪われ帰依することを誓った。
その巫女様が我らの目と鼻の先におられる。
しかし油断してはならない。
かつての仲間、現在の潜在的敵である奴らに我らが巫女様に帰依していることを気取られてはならない。
それは我らの破滅を意味し巫女様へ危険が及ぶことを意味する。
我らは深く静かに潜伏して誰に知られることなく当の巫女様にも存在を隠し見守り続けなければならない。
我らの信仰は見返りを求めるものではなく只巫女様を見守り愛すことのみである。
クーイアン帝国情報部第二課、通称二課は帝国内での対諜報と対工作活動と情報管理が主な任務である。
二課の任務は過酷だ。
その任務は各国から送り込まれてくる諜報員や諜報組織を割り出し監視し必要に応じて摘発したり偽情報を流したり真実の情報を敢えて流して攪乱したりハニートラップを仕掛けたりと多種多様に及ぶ。
しかしそれだけではなく同じ帝国情報部諜報員の内偵、時には任務に失敗した不適格者の処分と非情さを要求されるものであった。
「我が帝国情報部の中で怪しい組織だった動きがあるって?」
二課の部長のごつく厳格そうな顔が驚愕に歪んだ。
部長室の席にどっしりと座る部長を見ながら若い部下は真剣な表情で答えた。
「はい部長、ここ数日情報部内の機密暗号文書の遣り取りが急造しています。初めは例のシュナ王国から到着した使節団関係の文書の遣り取りかとも思っていたのですが明らかに関係のない部署にまで多くの文書が廻っているのです。これは情報部内で使節団来訪に合わせた通常任務とは違う別の組織だった動きがあることを示しています」
「フム、そういう事か」
部長は目を瞑り思案していた。
「もちろん情報部内で私の知らない大きな作戦が行われておりそれを察知してしまった可能性もあるので部長にご確認願いたいのです」
「・・・分かった。不審な動きのある関係部署のトップにそれとなく確認しよう。資料は置いていってくれ。それとこの事は他言無用だ」
「はい、了解しました」
若い部下が部屋を出ていこうとした。
「いや、ちょっと待て」
「はい?」
部下が振り返った。
「やはり君には話しておこう」
「ではやはり大きな作戦行動があるのですか」
「ウム、先日三課からこのような資料が流れてきてな」
部長がデスクの上に数枚の絵画を出した。
「こ、これは何という・・・」
部下は絵画を見て顔色を変えた。
「これはなんなのです!是非教えてください!」
紅潮させ好奇心で張り裂けそうな顔で部下が聞いてきた。
「そうか。やはり君にも適性があったか」
部長はニヤリと笑った。
こうしてクーイアン帝国情報部内『メイドさんを暖かく見守ろう』の会は新たな会員を増やしたのだった。
浸透は順調に進行中です。




