小話31 シードラゴンを撃破せよ!
なんでもドラゴンを出せばいいものではないかもしれませんが。
大海原である。
水平線の彼方まで海が広がり空の青に交わっている。
その中をシュナ王国の御用船が帆に風を受けて軽快に進んでいた。
本来なら随行するはずの護衛艦はいない。
勇者が同行するので不要とのシュナ王の判断である。
どこまでもケチ臭い狸親父である。
しかしシオン達はこれ幸いと船旅を楽しんでいるようだ。
シオンはまず甲板上に風魔法に水魔法を複合させた風は通すがマジックミラーになっていて中は見えない衝立を作りプライベートスペースを確保した。
次に適当な空の木箱を見繕ってきて木魔法でビーチチェアとパラソルを作りそこで真っ裸になり潮風と日光を満喫している。
中を一目見ようと船員達が帆柱の見張り台に詰め掛けようと殺到したが船長が追い返した。
そして素知らぬ顔で昇ろうとした船長が今度は船員に引き摺り下ろされ袋叩きに合ったりしていた。
今は双子メイドがスカートをカボチャにして見張り台に昇って大海原を飽きもせず眺めている。
メイド服のカボチャは邪道だと思うがロケーションとすらりと伸びた脚のマッチング故に大目に見ている。
それに下手に禁止するとシオンを覗き損なった飢えた狼、もとい船員達が最後の希望を失った怒りで暴動を起こしかねない。
俺もシオンの横で水着を着てビーチチェアに寝転び水魔法でサングラスを作ってリラックスしていた。
暑くなれば飛行ユニットでシオンと共に海に飛び込んだり氷魔法を使い果実酒に氷を入れたりして涼をとっていた。
船員の嫉妬の目が凄まじいことになっていたが放置している。
シオンの極上の肢体を明るいところで見放題だなどと正直に言ったら切れた船員達が玉砕覚悟で俺に挑んでくることだろう。
『『何かが南西方向から近付いてきます』』
突然双子メイドがその方向を指しながら警告の声を上げた。
船員達と俺達は一斉に南西方向を見た。
暫くは分からなかったがやがて何かが跳ねながら近づいてくるのが見えた。
それは徐々に大きくなっていった。
初めはトビウオの群れかなにかと思ったが近づくにつれ大きく大きくなっていった。
まだ距離があるのに遠近感がおかしくなる大きさだ。
かなりの巨体である。
「なんだありゃ」
「海竜の群れだな。滅多に遭遇するものじゃないのだが」
「海竜?あれがか?」
シオンの返答に俺は首を傾げた。
確かに竜のフォルムはある。
流線形の背に竜の鱗、大きく突き出た顎、少しぽっこりした胴体。
しかしどう見てもあれは・・・タツノオトシゴにしか見えない。
ただし全長十m、かなりでかい。
それが数十頭の群れを成して海面から飛び跳ねながらこちらに向かってきていた。
生態はタツノオトシゴと全然違いトビウオだ。
「危険があるのか?」
慌ただしく進路変更で避けようとしている船員達を尻目にシオンに尋ねた。
「奴らは獰猛だ。特に海面上の敵を見ると襲い掛からずにはいられないらしい」
「仕方ないか」
俺は素早く飛行ユニットを装着すると御用船を飛び立った。
そして海竜と御用船の中間点に降り立つ。
奴らは御用船をターゲットに定めたようだ。
俺は海面に手を当てた。
海面下で流し込まれた魔力が薄く発光する。
海面が盛り上がり巨大な人型を形成していく。
海竜達は突然現れた水ゴーレムに獲物を変更し襲い掛かってきた。
「ガーッ!!」
吠え声を上げ海面から跳ね上がると一気に水ゴーレムの胴体に次々に齧りつく。
俺はゴーレムの頭上で水魔法をコントロールして一頭一頭を海水の結界に封じ込めていく。
やがて全ての海竜を捕えると氷魔法で急速冷凍を掛け氷結させた。
俺はそのまま海竜の氷山を放置すると御用船に戻っていった。
「珍しいな。確実な止めを刺さないなんて」
船から一部始終を眺めていたシオンが言った。
「凍死しているとは思うがそれでも生きていたなら構わんさ。あれもこの世界の生態系の一部だろう。黒化して明らかに暴走しているのでなければ確実に殲滅する必要もない」
「それもそうだな」
シオンも納得した。
さてそれから船員達の俺に対する嫉妬の視線が無くなった。
その代わりに恐怖に怯えた視線になっていたが。
あッ、水の吐息を使わせるのを忘れていた(笑)




