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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第10章 クーイアン帝国編
57/119

26 帝国Ⅰ

今回は分割形式です。

「クーイアン帝国への外交使節の護衛を俺にやれって?」

「はい、今回の交渉はかなりの危険を伴います。彼らを生きて帰らすために是非勇者殿の御力をお貸し願いたいのです」

この狸親父は低姿勢なのにいつも断わりにくい依頼をしてくる。

今回の交渉が只の交渉なら金を積まれても俺が動くことはない。

だがこれは和平交渉の使者だ。

向こうにその意志がなくても最低限生きて帰ってもらわねば事態が更にこじれる。

今回の侵攻だけでも帝国側兵士が十万人以上の人間が死んでいるのだ。

再侵攻を掛けられればそれ以上の人間が死ぬことになる。

それにいつまでも俺がこの世界に留まっているとは限らない以上外交的解決を図るのが一番ベストな選択であった。

帝国に匹敵する海軍力を増強する手もあるにはあるが一国ではそんな費用は支えきれないし大陸中の国家で金を出し合うにしても大陸全体が貧困状態に陥りかねない。

それにそんなバカな政策を長期間維持することも出来ない。

かつてのシュルトや今回の帝国のように拡張主義を取り他国を搾取し続けられる状況でもなければ何も生産せず厖大な資金を消費し続ける強大な軍事力など自国の富を削り続けなければ維持出来ないのだ。

結局この方向に舵取りすれば未来はないし民は困窮し続ける。

俺がそういうのを嫌っているのを知ってこの手の話しを持ってくるからコイツは狸親父なのだ。

「しかしいいのか。俺は帝国に対して容赦なく喧嘩を売りかねないぞ」

「それは構いません。勇者殿個人で戦線布告をなされる場合にはシュナは中立の立場を取らせて頂きますが」

つまり俺が一人で敵対する分には構わない。

帝国側も敵を減らすため中立の立場を取るシュナに対して高飛車に出ることも出来なくなり交渉がまとめ易くなるからである。

俺が帝国を壊滅させたらさせたで軍事的脅威が只で消えるのだから儲けものと考えているのであろう。

「分かった。ただし交渉が済むまでだ。その後は好きにさせてもらう。それにそれなりの報酬はもらうぞ」

「もちろんですとも、我が娘レイリアを差し上げるというのはどうでしょう?」

「斬るぞ」

殺気を纏わせ断る。

帝国に使われていたバカ勇者のように骨の髄までしゃぶらせるつもりはない。

「お気に召しませんか。我が娘は親の欲目かもしれませんが見目良く女性的魅力にも溢れていると思うのですが・・・。それではどのような形でお支払すればよろしいのでしょうか」

「・・・それは後ほど提示する。安くつくとは思うなよ」

「恐いですな」

にこやかに応じるシュナ王の目は笑ってはいなかった。

この手の人間は空手形の恐ろしさをよく知っているのだから。




・・・航海は途中海竜(シーサーベント)や海賊に襲われるという多少(・・)のアクシデントがあったが無事乗り越えクーイアン帝国に辿りついた。

シュナ王国の御用船から使節団の大使と随伴の上級文官達、俺とシオンのみが上陸し双子メイドは船に待機させている。

帝国王城に案内された俺達は謁見の間の大扉の前で足止めされていた。

主に俺の所為で。

「だから如何なる方であろうとこの謁見の間に帯剣して入室されることは許されておりません」

近衛騎士が頑固に立ち塞がる。

「お前達の国と“俺”はまだ講和していない。つまり戦争状態だ。戦争状態の相手にそっちの都合で武装解除しろだと?何様のつもりだ」

我ながら酷いごり押しだ。

しかし俺は続ける。

「実際俺としてはお前を斬って謁見の間に入りそこにいる全員を斬り捨てた方が早いのだぞ。さっさと退け」

近衛騎士もシュナの使節団の連中も顔を真っ青にしている。

近衛騎士はともかく使節団の連中は俺がそれをやれる人間だと知っているからだ。

近衛騎士の方もそこまでは知らなくても帝国軍艦五百隻をたった一人で沈め十万からの人間を皆殺しにした俺の情報ぐらいは聞いているのだろう。

「それでもお通しする訳にはいきません」

近衛騎士は頑なだった。

いい加減面倒になった俺は剣に手を掛けた。

「勇者殿。どうか・・・」

使節団の大使が俺を制止しようとする。

交渉に入る前に騒ぎを起こされては大使として面目が立たないのだろう。

しかし俺の知ったことではない。

「お待ちください」

扉の内から声がした。

そして大きな扉がゆっくりと開いていく。

扉の直ぐ側には黒いベールをした黒衣の女性。

そして居並ぶ貴族の間に赤い絨毯が敷かれておりその先に玉座があった。

そこに恰幅のいい大男が座っていた。

身長は2.5mはありそうだ。

周りに立つ大臣が子供のように小さく見える。

クーイアン皇帝である。

顔つきは整っているが獰猛そうな笑いを浮かべている。

「其方も大儀でした。控えなさい」

黒衣の女性が近衛騎士に声を掛け自らも横に下がる。

「そのままの入室を許可します。お入りください」

その女性の声に俺とシオンは堂々と、使節団の連中はおずおずと赤い絨毯の上を進んでいく。

やがて皇帝の目の前で止まった。

「よく来た、シュナ王国の大使殿、及び勇者殿と大魔導師殿よ」

体躯に見合った野太い地声で皇帝が歓迎の意を表した。

使節団の連中は片膝をつき頭を垂れていたが俺達はそのままだ。

周囲の貴族がザワザワと騒めくが皇帝が手で抑えるようにするとピタリと止まった。

「ハハハッ、噂に違わぬ傲岸不遜振り。我が帝国の勇者殿とは大分違うようだな」

俺を値踏みするようにじっくりと眺める。

帝国に使われていたあのバカは色と欲に踊らされ喜んで形だけの臣下の礼を取っていたことだろう。

俺はむしろ喧嘩を売りにきたのだから臣下の礼を取る必要もない。

もっともどこの王族の下にもつく気はないが。

「今回はシュナ王国の使節団の護衛として来ているから扉の前の茶番にも多少つきやってやったが次は容赦なく斬る。門番にはそう言っておけ」

又も貴族達が騒めき皇帝が再び抑える。

「帝国に正面から喧嘩を売る気満々だな。まったく面白い男だ。まあそれだけの力があれば出来るか。どうだ、その力を我が元で振るってみる気はないか?お前の力があれば我が帝国は超大陸一の大国に、いや超大陸全てを制覇することが出来るかもしれん」

「断る。俺にメリットがない」

「そこにいる我が娘レティシアを妻として娶り皇族として皇太子の地位を目指してみないか?我が帝国では婚姻によってでも皇族になれば功績しだいで皇太子の地位を得ることが出来る。お前なら造作もないだろう。いずれ我が跡を継いで皇帝になれば帝国を思うさまに出来るぞ」

「要らない。権力に興味もない。それに俺はいずれ元の世界に戻る身だ。そんなもの背負えるはずもない」

皇帝の娘というのは先程の黒衣の女性のことだろう。

ベールから透けて見えた顔はラード女王に負けず劣らず美しく身体はシュナのレイリア王女並みのプロポーションだった。

「一顧だにせずか。大魔導師殿、勇者殿が元の世界に戻る送還魔法は本人の意志で取り消せるのか?」

「送還を拒むことは出来るが二度と元の世界に戻ることは出来なくなる。今までの勇者で拒んだ者はいない」

「成程、それなら暫く滞在して帝国を見て回りその素晴らしさを識るがよい。さすればこちらの世界を気に入って留まる気になるかもしれん」

こうして俺達は帝国観光を行うことになった。

次章は現時点では白紙状態です(笑)

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