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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第9章 シュナ王国編Ⅱ
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小話27 旅路

今回もひねりはありません。

人の往来の少ない街道を一台の荷馬車が進んでいた。

牽引している二頭の馬を御者台の二人のメイド服の少女が馭していた。

双子メイド達であった。

先日シュナ王国に呼び出された御主人様が帰ってきてシオンを連れて又飛び立っていった。

その時シュナの王都で合流するよう命じられたので向かっているのだ。

ラード新女王のお世話と警護は前回の会議からこちらに常駐していた二十二人の仲間達に任せてあるので心配は要らなかった。

これまでの移動は誰かしら人と一緒だったが今回は二人だけの旅路である。

相変わらず世界は彼女達にとって新鮮さと驚異に満ちていたが寄り道することなく坦々と進んでいく。

彼女達にとっては御主人様の命令は絶対であるからだ。

偶に暴走することはあるけれど。

前回の翼竜(ワイバーン)討伐から帰ってきた御主人様に媚薬を盛った時もえらく怒られたものである。

媚薬を盛るなという命令がなかったからやったと言い訳したが実際にはいつまでも彼女達に手を出さない御主人様を刺激するためであった。

もっとも御主人様は鉄の意志で媚薬の効果を押さえ込み更に彼女達にも同量の媚薬を飲ませて縛り上げ一室に放り込んで放置するというお仕置きをされたのでこの方法を試すことは二度とないであろう。

因みにその部屋から漏れた彼女達の声を聞いた侍従や衛兵達は暫くの間彼女達を見掛ける度に股の辺りを押さえながらしゃがみ込んでいたものである。

馬車は進んでいきやがて林で見通しの悪い場所に入っていく。

人通りも完全に途切れいかにもアレが出そうな雰囲気である。

「嬢ちゃん達よぅ、たった二人でこんなところを通るとあぶないぜ~」

「そうそう俺達みたいなのが腹を空かせて待ち構えているからよ~」

茂みの中から薄汚れてガラの悪い男達が現れ立ち塞がった。

人数は五人。

手には錆びが浮いた鉄剣を持っている。

いかにもな盗賊達であった。

双子メイド達は同時に溜息をついた。

これでラード国内では既に七度めの遭遇である。

新女王の善政によって国土全体が活気を取り戻し立ち直り掛けているのにこういう輩は絶えることがない。

それでもシュルト支配時代よりはマシであろう。

シュルト支配時代にラード国内を抜けた時は枯れ木のようなお爺さんが餓死寸前の孫のために御主人様一行に挑み掛かってきたものだった。

あの時には普段冷酷非情で鬼畜な御主人様が同情して見返りなく食料を恵むという珍しい光景を見ることになった。

大空洞のトカゲ人(リザードマン)支配時代には孫を無理矢理喰らわされて発狂したお爺さんを見たこともある彼女達にとってはそれほど心動かされることではなかったが。

トカゲ人(リザードマン)を支配者の地位から蹴り落とした御主人様には感謝の念が絶えない。

「ヘヘッ、恐くて声も出せないのかい?可愛い服を着た綺麗な嬢ちゃん達よぅ」

溜息をつき馬車を停めた彼女達に男の一人が下卑た笑いを浮かべながら近づいていく。

「「一回だけ警告します。命が惜しければ道を開けて立ち去りなさい。さもなくば実力で排除します」」

冷酷に彼女達の声が響いた。

男達は面白い冗談を聞いたかのようにドッと笑った。

「嬢ちゃん達、頭がいかれているんじゃないか?」

男は更に近づき・・・、唐突に倒れた。

そしてその下から血が広がっていく。

双子メイドが動いたようには見えなかった

「何しやがった!!」

逃がさないように囲んでいた男達が身構えた。

しかし次々と倒れていき何をする間もなく全滅した。

彼女達は御者台から降り前方の死体だけ道の端に避けると礫を幾つか拾って戻った。

彼女達の狩人時代の得意技で他の動作なく指先だけ使って礫を飛ばし小動物を仕留める方法だった。

盗賊達は目から脳を礫で貫通されて死に至ったのであった。

そして少女達は何事もなかったように馬車を進めていった。


それから暫くしてラードの王都からシュナの国境に向かう街道を往来する旅人達の間で妙な噂が立った。

妙に目を引く侍女服を着た双子の美しい少女達の馬車が通り過ぎた後には血の涙を流して息絶えている盗賊達の死体が転がっていたと。

その少女達は悪人を裁くために神が遣わした死の天使で悔恨させて血の涙を流させ死に至らしめているのではないかと人々は噂した。

こうして噂は尾鰭がついてラード国内に広がっていった。

これに恐れをなした盗賊達はある者は悔悛しかたぎになりある者は逃亡しラード国内の治安は徐々に回復していくことになる。

めでたしめでたし?

勇者Y「霞みの礫・・・」


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