25 けじめ
前章の解説章です。
「しかしまあ、よくもあれだけ嘘八百を並べ立てられるものだな」
ソファに気だるそうに横たわっているシオンが言った。
クーイアン帝国の残存艦艇を根こそぎにしてシオンをハリボテから回収した後現在はシュナ王城の貴賓室で休憩していた。
「嘘とはどれのことだ?」
俺はシュナ王城の侍女が最高級茶葉で淹れたお茶を啜りながら聞き返した。
双子メイドは移動させる時間がなく今回もラード王城で留守番中のためシュナ王より俺達につけられた侍女に淹れてもらったのだが香り高く味わい深い絶妙な飲み心地になっていた。
シュナ王からメイド達をシュナで研修させたいので送ってくれとの要望が来ていたがこの淹れ方をマスターさせるだけでも十分価値がありそうだ。
「ハリボテ戦艦スサノオの動力とスサノオビームの話しだ」
「ああ、それか」
シオンは胸元に入れていた使い魔で一部始終を聞いていたのだ。
実はスサノオに動力なんてない。
強いていえば俺から目一杯魔力譲渡され中に入っていたシオンだろう。
浮上もシオンがバラストを切り離しただけであの場から動くことすら出来なかった。
「奴をあの場に釘付けにするためのはったりだからな。どうせ吐くなら嘘はデカいほどいい」
俺の実力を知りながらクーイアン帝国が攻めてくるなら俺と同程度の戦力を隠していると考えた。
前皇帝も死んでいたことから可能性の一つとして勇者召喚を疑った。
それで魔法鍛冶師のダンのところに行き飛行ユニットの設計図を確認してもらった。
今の俺を相手にするなら同じ飛行ユニットがなければ太刀打ち出来ない。
すると金庫の中に厳重に保管していた飛行ユニットの設計図だけが紛失していた。
その時ダンが無くなった設計図よりしきりにシオンが一緒じゃないのかと確認していたが惚れでもしたのだろうか?
見た目は美人でプロポーションもいいからな。
それはともかく敵戦力がこちらと同程度の魔力量を保有した人間、勇者であると想定した。
人数が分からなかったがこちらに隠しているなら人数は一人か二人で奇襲を狙っていると見るべきだ。
それ以上なら超大陸でも派手に勇者を使いダンのところから設計図を盗むのももっと荒い方法を取っていたかもしれない。
だが戦争もないのに魔力量を増やす方法が明確には分からなかった。
それにそんな方法があるなら幾らでも魔力保有量を増やして正面から力押しをしていたはずだ。
三十人ぐらいは召喚出来たのに現在は一人か二人、しかも魔力量が俺並みになっているがそれ以上増やすことも出来ないらしい。
希少で特殊なマジックアイテムかそれとも・・・。
とにかく敵戦力になった奴以外の生き残りの確認と魔力量を増やした方法を割り出さなければならない。
敵艦隊と戦っているところを奇襲してくるだろうから敢えて攻撃を受け瀕死の重傷を負った振りをして相手から情報を引き出す。
但し相手の攻撃を受けても本当にダメージを受けては反撃出来なくなる。
そのためには敵の攻撃を物理だろうが魔法だろうが確実に防ぐ必要があった。
そこで以前シオンから聞いていた巨竜の龍鱗はその牙で切り裂く事が出来るかもしれないって話しを思い出した。
龍鱗は物理・魔法無効だったが巨竜の牙は神すら引き裂く絶対の刃であるとのことだった。
矛盾のような気もしたが龍鱗は物理・魔法無効だがどちらの方法でもなければ切り裂くことは出来るのかもしれない。
巨竜の牙が物理・魔法を超えた力で同様に物理・魔法の概念を超えた神すら引き裂いたのならそれもあるのだろう。
なら龍鱗を使った究極の防具を作ることも可能になる。
そこでシオンに縫製してもらい龍鱗の鎧を作ることにしたのだ。
これさえあれば敵の奇襲も確実に防げるし攻撃に転じた時有利に運ぶことも出来る。
巨竜のことは三人しか知らないし詳細を知るのは俺とシオンのみ。
シオンが裏切る可能性も考えたが今まで成果を出していた俺を切って能力未知数の勇者、しかも奇襲を掛けなければ俺を倒せない程度の力の相手なら乗り換えられる心配もなかった。
つまりバレることもない。
そこでシオンを伴って巨竜の遺骸を回収に向かい龍鱗が鎧に使えることを確認した後思わぬ発見があった。
引き上げた巨竜の遺骸の中の吐息発生器官が生きていたのだ。
4億℃の超々高温と大量の中性子やαβγ線を受けなお機能を保つとかさすが最強と呼ばれるファンタジー生物というべきか。
もちろん頭蓋の寄生体も含めて他の部分はきれいに消えていたが。
そこで氷結戦艦スサノオのアイデアを思いついた。
巨大な氷山を氷魔法で生み出しその中に巨竜の吐息発生器官と予め俺から魔力譲渡を受けたシオンを埋め込む。
シオンの防寒器具として強化トカゲ人から回収しておいた保温用の魔道具を使った。
はったりを事実と思わせるために一発で魔力譲渡を受けたシオンが魔力切れになる吐息を浮上と同時に撃たせる。
後はハリボテ戦艦スサノオの動力が核融合でスサノオビームがそこから何度も発射出来るという嘘をローアン方面に幾つも立ち昇ったきのこ雲を引き合いに出して事実のように思わせる。
そしてスサノオビームの射程が長大かつ強力で逃げられず核融合を支える俺に致命傷を与えることも出来ないと相手に思い込ませた。
奴はそのため切っ先が鈍りまともに剣技の実力を発揮することも出来ずに俺に斬られた。
龍鱗の鎧を着た俺に物理攻撃が通用しないことすら気付かなかった。
最初に雷撃が通用しなかったことで疑うべきだった。
相手が楽をしてきて頭をフルに使わなければ生き延びることが出来ない状況に晒され続けていなかったのも勝因だった。
俺ならはったりが事実であってもなんとか距離を取って海水に火弾を撃ち込み目眩ましを掛けその隙に海中に隠れて逃げただろう。
俺の方は咄嗟にその程度の判断が出来なければ生き残れなかったのだ。
それに頭を使わなければ例え隷属の首輪から逃れられてもいいように使い潰されるだけだ。
「なんにしても役者が違っていた訳だ。だがあまりやり過ぎないようにな」
アンニュイな雰囲気のシオンが気の入っていない口調で言った。
「ああ」
俺も気のない返事をしておいた。
いずれクーイアン帝国には今回の勇者召喚と俺の命を狙った件でけじめをつけさせにいかなければならない。
やつらは皇帝と魔導師が殺されたことで召喚の呪いが解けたと思い安易に勇者を使ったのだろう。
だが奴らは勇者召喚を安易に行った結果をこれから本当に思い知ることになる。
勇者召喚の呪いはこれから本格的に始まるのだ。
前章のボツネタ。
男「なんて危ないモノを造りやがるんだ!」
勇者Y「大丈夫、どっかの事故を起こした国の新安全基準よりも安全だ」
男「全然信用出来ねぇー!それに動力源からエネルギーを直接取り出して使って放射能とかは大丈夫なのか」
勇者Y「どっかの国でメルトダウンを起こして環境中にヤバイ核種を撒き散らしても直ちに影響がないって話しだからクリーンな核融合ならもっと問題ない」
男「もっと信用出来ねぇー!」




