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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第8章 ローアン亡国編
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小話23 仁義なき国際会議

前章の前日談です。

「・・・そこで俺が口を挟む。“俺の世界の故事である国が飢饉の時に他国に助けを求め援助してもらった。翌年援助した国が飢饉になって昨年援助した国に助けを求めたところ逆に弱みにつけ込み攻めてきたそうだ”とな」

「はい。それで?」

「お前はシュルト王国が復興して力をつけてもそれ以上に自分は自国の力をつけレインディアやトーアと友好関係を強め弱みが出来てもつけ込まれる隙はみせないと答える」

「牽制するのですね。しかし素直に復興に協力して感謝してもらった方がよいのでは?」

「それだと甘い奴と思われるか裏を勘ぐられて疑心暗鬼になりかねない。自国が苦しい時には特にひがみ根性も強くなる。そこで私は甘い=優しいから貴国を助けますよ。でも隙はみせませんよと手の内を敢えて明かし納得させる。これで相手もこちらの支援に素直に応じやすくなる」

「お互いに胸襟を開いて素直に話し合えないものなのでしょうか」

「先日まで殺し合っていた仲だ。そんなことは仮初めでも友好関係を維持し続けて信頼関係を醸成してからだな。お前達しだいだが次世代ぐらいまでは掛かるんじゃないか。個人はともかく国民全てに浸透するのはな」

「しかし貴方こそお優しいのですね。ここまで復興に尽力してくれるなんて」

「そんなんじゃない。これも契約の内だ。お前は自国民の仇敵に塩を送った愚か者と恨まれる。それはラード王家が蔑まれることでもある」

「フフッ、今更悪評など怖れませんがそういうことにしておきましょう」

明日の復興会議に向けて会議場で打ち合わせを続ける。

ラードも多少持ち直したとはいえ荒廃した国の復興に全力を注ぎたいところだ。

シュルトを追い詰め過ぎて暴発されても迷惑だし下手に国を亡ばせばその後民の面倒もみなければならなくなる。

面倒なことだ。

この世界の戦力ファクターとして組み込まれている俺としては放っておくと更に面倒事に巻き込まれる予感がするので先手を打つことにした。

俺も進んで人殺しをしたい訳ではないのだ。


「トーアのライザ王女様、レインディアのルシア王女様がおいでになられました」

領主館の侍従が声を掛けてくる。

通すように指示すると間もなく二人が入ってきた。

「お久ぶりです、ユウキ様。それと・・・初めましてで宜しいのでしょうか?ラード女王様」

ルシア王女が探るように新女王の顔色を伺う。

前回会ったのはライザ王女を拉致した犯人の一味としてである。

警戒しても当然だろう。

「それで構いません。ようこそおいでくださいました。ルシア様」

新女王はにこやかに答えた。

俺は軽く頷くだけにした。

「初めましてラード女王様。それとお久しぶりです、ユウキ様」

ライザ王女がルシア王女の次に挨拶した。

こちらは手紙のやり取りで懇意にしているのに敢えて初対面を繕っている。

トカゲ人(リザードマン)奪取事件の方はシュルト王国から正式に謝罪と賠償がなされているがライザ王女拉致事件の方は公式にはなかったことになっている。

故に二人は初対面ということにしなければならないのだ。

「ようこそおいでくださいました。ライザ様」

新女王はこちらにもにこやかに答えたが少しだけ親しさが声に籠っている。

命の恩人でもあるし同年代で心の許せる友達といったところなのだろう。

「ああ、よく来た。それで例の者達は?」

「はい、ユウキ様のご連絡通り連れてまいりました。既にアンナの指揮でこの館の侍従長の方と打ち合わせに入っています。しかし各国要人の接待という重要な役をあの娘(メイド)達に任せてもよろしいのですか?」

「アンナはどう言っている?」

「大丈夫と太鼓判を押していましたが」

「なら大丈夫だろ。シオンが手伝ったとはいえ双子を短期間であそこまで仕込んだんだ。そのアンナが大丈夫というなら問題はない」

こういった場で要人を接待すれば経験値を上げられ宣伝効果も期待出来るし箔もつく。

それに各国の思惑はともかくシュルトを除き要人は女性ばかりだから変な悪さをしようとするバカもいない。

いたら見せしめのために叩っ斬る。

シュルトの王太子も涸れてはいないだろうがそれどころでもないだろう。

我が野望も順調に進捗している。

「おーい、シュナのレイリア王女を連れてきたぞ」

シオンがスリムなのに巨乳な美少女を連れて入ってきた。

貴人の到来の手続きが飛ばされているがシオンの顔パスで入ってきたのだろう。

レイリア王女の顔に見覚えはないがその巨乳とキュッと引き締まった腰には既視感を覚える。

「ユウキ様!」

レイリア王女は俺の顔を確認するとタッタッと駆け寄って抱きついてきた。

「お会いしたかったです!」

「「「「なッ!!!」」」」

女性陣から驚きの声が上がる。

俺は殺気もないし見たところ胸以外には暗器を仕込むところもなさそうなのでそのまま抱きつかせておく。

まあ気持ちはいいからな。

「で?誰だって?」

「だからシュナのレイリア王女だって。ユウキ、お前もシュナ王に一度紹介されていたじゃないか」

俺は記憶を探る。

確かに紹介された記憶はあるが顔は美少女だったとしか覚えていない。

胸の印象が強かった所為だろうか?

道理で既視感を覚えるはずだ。

「酷いですわ!婚約者の顔をお忘れになるなんて」

「「「婚約者ですって!!!」」」

女性陣が双子メイドのようにシンクロしている。

「いったいどういう事ですの!ユウキ様!」

しかしライザ王女が一歩先に踏み出した。

「いや、さっぱり分からないな。そんな話しは初耳だ」

「あら、お父様に貴方の元に行って嫁にしてもらえって言われましたのよ。だから婚約者でしょう?」

悪びれもなく目を瞑って顔を近づけてくる。

これはあれだ、親愛のキスを求めているのだ。

シオンの肉食系と少し方向性の違う積極的アプローチだ。

こっちに来る前は普通の高校生をしていた俺にはこういうのは捌ききれない。

妹のようにからかうのは得意なんだがな。

ウチの妹は兄貴に対して色仕掛けなんぞしないし。

「公衆の面前ではしたない!離れなさい!」

戸惑っている内にライザ王女が引き剥がしてくれた。

助かったような胸の感触が惜しかったような。

「あら、ライザ様、シュナの王都でお会いして以来ですわね。お久ぶりです。でもズルいですわ。ライザ様は以前長期間一緒にいらしたのでしょう。私にもこのぐらいのことは許されていいと思いますわ」

「私だってユウキ様と抱き合ったことなんてありません。精々手を繋いだぐらいです」

「あら?長期間一緒にいらしてその程度しか進展がなかったのですか。それはユウキ様が貴方に魅力を感じていないからではないのですか」

「・・・私はユウキ様に告白して心を通い合わせました。恥ずかしい姿だってお見せしています」

おい、話しを盛り過ぎだ。

あれは王族としての心構えを持つ話しの中でのことだったろう。

恥ずかしい姿も姿見の鏡越しに見るのは見たがお前の言っているのは別のことだ。

しかし俺自身がスカトロフェチと勘繰られるかもしれないので突っ込まない。

「まあ、貴方方、落ち着いて・・・」

ルシア王女が仲裁に入ろうとした。

「なんですの貴方は?胸のない方には関係ない話しです!」

レイリア王女の暴言にルシア王女のいつもにこやかな顔がピシリと凍りついた。

確かにレイリア王女に較べると慎ましく見えるがスリムで長身だからそう見えるだけで普通サイズだろう。

しかし本人の自己評価とは必ずしも一致しない。

明らかにトラウマスイッチが入ってしまっている。

「・・・それをいうなら私は直接ユウキ様に操を捧げる約束をしています。一度会っただけの貴方とは関係の深さが違います」

はいはい、その話しもその場で辞退しました。

しかし俺は巻き添えを怖れやはり突っ込まずジリジリと後退り始める。

「皆様、冷静になってください」

新女王が呼び掛けた。

「長期間一緒にいて進展のない方は黙っていてください!」

今度はライザ王女が口を滑らせた。

女の友情って脆いものだな。

「・・・私はユウキ様に接吻してもらっています。この身もユウキ様のものです。心も捧げると申し上げました」

新女王は火に油を注いだ。

後は坂道を転がるが如く・・・。

「なあ、シオン」

シオンのいる位置まで退避した俺は傍観者に徹しているシオンに呼び掛けた。

因みに四人は既に俺のことを忘れ去ったかの如く互いの目鼻立ちやプロポーションなどの自慢や悪口を言い合っている。

ひょっとして俺を出汁にしたストレス解消なのかもしれない。

「なんだい色男勇者」

「ライザは分かるんだがルシアと女王は本当に俺に気があるのか?ルシアとは何か特別に親密にしたつもりはないしデリラの方は苛めていただけで優しくした記憶がない」

「レイリア王女はいいのか」

「ありゃ腹黒だ。顔は覚えていなかったが最初に会った時明らかに俺を見下していた。大方勇者としての名声が高まりシュナ王から勧められたから来ているだけで喧嘩を売っているのも自分の印象を強めるために計算してやっている。振り回されている三人ともまだまだ修行が足りないけどな」

「相変わらず悪意には敏感だな。そうだな、ルシア姫の方は今まで周りにいなかったタイプでしかも頼りになるから惹かれているのだろう。女王については結果でお前の内面を捉えて惚れたのだろうな。口では厳しいことを言っても彼女の望む結果を出すお前はそれなりにカッコいいし」

「そんなもんか」

「そんなものだ。ところでお前の世界の故事の話しだが恥知らずに攻めてきた国はどうなったんだ?」

「なんでシオンがその話しを知っているんだよ」

シオンは採光用の高窓を指差した。

そこから使い魔が顔を覗かせる。

「若い男女を二人きりにするのは不味いだろ」

「どっちかというと出歯亀のために見えるが」

「いいじゃないか、減るもんじゃなし。で話しの続きは?」

「攻められた方の兵士が相手の外道ぶりに発奮して撃退、攻めた国の王の血筋は最終的に潰されたらしい」

「結局因果応報って話しかい」

「さあな、歴史は勝った者が書き換えた可能性がある。正しく伝わっているかどうかは分からない。只不義理しまくったらロクなことにならないのは確かだな」

まあ不義理しなくっても収拾のつかない事態に追い込まれることはよくある話しだが。

俺は目の前の喧騒を見ながらため息をついた。

しかし明日の会議これでなんとかなるのか?

大いに不安である。

なんとかなりました(笑)

しかし本編より長い小話(笑)

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