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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第8章 ローアン亡国編
46/119

23 国際会議

ニーズがないんじゃないかとボツネタにしようかと思ったのですがUPしときます。

間章です。

時系列の都合で章番号を訂正しました。


シュルト王国の王太子は随員を従え難しい顔をしてラード王国内の国境近くの領主館に設置された会議場に向かっていた。

王太子といっても現国王の在位が長いため既に三十歳を越えており今回の会議の参加者の中では最年長者になる。

今回の会議の目的は表向き去年の翼竜(ワイバーン)災害の復興計画と国境線の見直しということになっているが実際にはラード王国とその友好国によるシュルトの吊し上げの場となる可能性が高い。

会議の正式参加国はシュルト・ラード・レインディアの三国だがオブザーバーとしてトーアとシュナの代表者と国ではないが翼竜(ワイバーン)討伐の功労者である勇者も出席している。

国力が充実している時ならいざしらず翼竜(ワイバーン)災害によって国土の1/3以上が壊滅し著しく弱体化している現状ではどれか一国に対しても強く出られない。

怒らせてしまえば国家存亡の危機である。

特に昨年まで戦争状態にありその前は国家併合によるシュルトの過酷な圧制で徹底的に搾取されていたラード王国は恨み骨髄であろうことが予想される。

トーア王国にしても先の侵攻の講和も行っていない状況でありトーアと軍事同盟関係にあるシュナ王国も冷たい態度に出る可能性が高い。

レインディア王国にしても謝罪と賠償が済んでいるとはいえ昨年のトカゲ人(リザードマン)奪取事件の影響はあるだろうし秘密裡に計画されていた侵攻作戦がバレでもすれば激怒するのは間違いない。

各国に強い影響力を持つ勇者にしても翼竜(ワイバーン)の王都襲撃を救って貰った形になっているがトカゲ人(リザードマン)奪取事件で標的の一つとされたことに恨みを持っていることはその後の嫌がれせを見ても明らかだろう。

この四面楚歌の状況で各国を怒らせないように立ち回りかつ国益も守らなければならないのだから苦虫を噛み潰したような顔にもなろうものだ。

やがて会議場に着き扉が開かれた。


侍女に案内されて自分の席に着く。

妙に華やかなで印象的な侍女服に身を包んだ可憐な少女で他にも同様の姿をした可憐な少女達が随員の案内をしたり他の出席者の後方に静かに佇んでいる。

物凄く興味を引かれるが今は会議に集中せねばならない。

鋼の意志で少女達から目を逸らせ他の出席者を確認する。

会議場中央に設置された円卓の正面にはラード新女王が座り向かって左側にはレインディアのルシア王女、右側にはオブザーバーであるはずの勇者が座っていた。

勇者の後ろにテーブルがありそこにトーアのライザ王女とシュナのレイリア王女が座っている。

随員を除く出席者は勇者とシュルトの王太子を除いてはいずれも美しい女性ばかりであり各国の別の思惑も透けて見える。

落ち目のシュルトの王太子には関係のない話しではあるが。

王太子の席はラード新女王の対面になる。

其々の随員はその後ろに置かれた席に座っている。

「これで全員が揃いましたね。それでは早速会議を始めましょう。議事進行は私が務めさせて頂きます」

ラード新女王が本来なら行う長い前置きもなしに開催の宣言をした。

元より講和もしていないシュルトの代表を前に社交儀礼をするつもりもないという意志表示だろうか。

王太子は只黙って頷いた。

「それでは第一の議題ですが今回の翼竜(ワイバーン)災害の復興計画についてです。まずほぼ無人の野と化したローアンについては我がラード王国とレインディア王国により国土を分割して併合いたします。その後新規入植者を段階的に入れていき国土復興を目指していきたいと考えております。異議のある方はおられますでしょうか?」

その問いに参加者は沈黙を持って答える。

シュルトとしても今は国内の復興が優先されるため余力のない現状では欲をかいても仕方がない。

むしろ下手に口を挟めばなんらかの負担が回ってきかねない。

ここは沈黙の一手だ。

「それではシュルト王国の復興計画ですがシュルトの予定をお聞かせ願いますか?」

「現状は半壊した王都復興を最優先に行う。そこからローアン国境に向かって順次復興と他の領地から入植を行っていくつもりだ」

「資金繰りはいかがなさいます?」

「現在シュナと交渉中だ」

下手をすれば尻の毛まで抜かれかねないが止むを得ない。

国土を復興せずに放置すれば他国に付け込まれることになる。

今はラード王国も荒廃した国土復興で余裕はないだろうが将来的には分からない。

復興は急務だ。

「他の国からの融資は必要ですか?」

その言葉に王太子は怪訝な表情をした。

国土復興の資金は幾らあっても足りない。

業突く張りのシュナとは別に借入が出来れば助かるのも事実である。

しかしラードから助け船のような提案が出るとは思わなかったのだ。

「ウ、ウム、出来れば・・・」

「レインディアのルシア様、貴国にはその余裕がございますでしょうか?」

「はい、ラード女王様、勇者様のお蔭で大空洞の開発も順調に進み生産された大量の農産物も国内は元よりラード・トーアに輸出され国庫も潤っています。要請があれば資金提供は可能です。しかしよろしいのですか?」

シュルトとラードの関係を考えれば当然の確認である。

「構いません。今は私情を捨て復興を優先させるべき時です。それでは詳細については後程二国で詰めてください」

王太子も了承しシュルト王国は思わぬ助けを得た。

この女甘いのか?

それとも他に思惑があるのか?

見極めがつかず迷いどころである。

「ちょっといいか?」

その時勇者が口を挟んできた。

「はい、ご意見があればお願いします」

ラード新女王が了承する。

「俺の世界での故事でな。ある国が飢饉の時に他国に助けを求め援助してもらった。翌年援助した国が飢饉になって昨年援助した国に助けを求めたところ逆に弱みにつけ込み攻めてきたそうだ。俺の言いたい事は分かるな」

「フフッ、貴方らしい忠告ですね。シュルト王国が復興して力をつけてもその頃には我がラードはそれよりもっと力をつけて攻め込ませはしません。それにレインディア王国とトーア王国と強固な友好関係を築き弱みが出来てもつけ込まれる隙は見せません。これでよろしいですか」

「了解した。進めてくれ」

王太子はそのやり取り聞いて甘さはあるがつけ込む隙を見つけるのは難しそうだと判断した。

こうして各国は腹の探り合いをしながらも相互理解を進めていくのであった。

話し合いは相互理解の第一歩。

次回「第12.4章 小話:仁義なき国際会議」に続く予定です。

会議前の話しです。

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