21 巨竜目覚める(前編)
再生怪人は前座というのがお約束です。
『ギャー』『ギャー』『ギャー』『ギャー』
黒い翼竜がこれまでにない大集団を結集し雲霞のように群がっている。
魔竜山の翼竜は一旦殲滅し奴らの卵も全部潰したのだが何故か又集っていた。
しかしさすがにこれで打ち止めだろう。
俺は小集団のはぐれた翼竜を狩りながらローアン王国を北西に向かっていたのだがいつの間にか魔竜山に辿りついていた。
子供達を運んで機動力が落ちている時にもここぞとばかりにはぐれの群れが集まってきて攻撃を加えてきたからそれなりに統制がとれているようだ。
既になんらかの枷をはめなければ幾ら数がいようと敵わないことは理解しているのだろう。
それなのにここに残存兵力を集めたのなら考えられる理由は、
『罠だろ』
使い魔がシオンの声を伝えてくる。
子供達をラード王国の安全圏にまで連れていった時再会したラード女王についていたシオンの使い魔だ。
これまでの高速移動で使い魔が追いつけず完全に見失っていたシオンがやっと俺を補足したのでそのまま俺の懐に入れて持ち運んでいる。
「なんの罠かわかるか?」
『さあね、元々翼竜達は魔竜山の周辺の自分達の狩場から出ることはしなかった。習性から変わっているものの行動を予測するのは難しい。ましてや未知の寄生体に脳を乗っ取られている。精々油断するなと言うしかないな』
「貴重な助言、ありがとうよ。なんの役にも立たんがな」
俺は急上昇して奴らの上を取った。
火裂弾
更に上空に向けて巨大な火球を生み出し放つ。
火球が弾け無数の 火弾を周辺にばら撒いて翼竜達を炎上させていった。
風台風
火裂弾で燃えている翼竜達を巨大竜巻で包み込む。
巨大竜巻は燃えている翼竜達を巻き込み火炎旋風となって大きく広がり周辺の翼竜達をどんどん呑み込んでいった。
しかし翼竜達もやられる一方ではなく火炎旋風に巻き込まれなかった集団が迂回して火弾を放ってきた。
俺は高速機動でそれらを難なく躱しながら風台風を解除した。
火炎が周辺に飛び散り被害を増していく。
都市の近くでは使えないがこの立地なら広範囲破壊魔法が使い放題である。
火炎大剣
両腕を横に広げ超高熱の閃光を放つ超火弾を魔力力場で包み込み横長に押し潰して10m程の長さの炎の大剣を作り出した。
そして旋回しながら周囲を取り囲もうとしていた群れを炎で喰い尽くしていく。
結局数度の広範囲破壊魔法と火炎大剣で黒い翼竜達の殲滅は終わった。
俺は周囲を確認する。
罠を発動させるならこのタイミングだと思ったからだ。
しかし来ない。
いや、空中にいるために気付くのが遅れたが大地が揺れていた。
揺れは徐々に大きくなり地響きが周囲に満ちていく。
こんなタイミングで只の地震のはずもなく千m級の大山である魔竜山が大きく揺れて崩れていく。
巻き上げられる土砂埃が魔竜山周辺を包み視界を悪くする。
「!」
何かの圧力を感じ咄嗟に横方向に最大機動を掛けた。
俺が一瞬前までいた位置に直径十mの光の筒が通り過ぎ遥か彼方の大地に突き刺さった。
凄まじい閃光と共にきのこ雲が上がり少し遅れて猛烈な爆発音と衝撃波が届いた。
俺は衝撃波が来る方向に魔力力場を展開し無理に流れに逆らわずに吹き飛ばされていった。
ローアン王国の魔竜山から北西に流され海上に出た。
かなり流されてから体勢を立て直す。
魔竜山の方を見ると包んでいた土砂埃も吹き飛ばされて視界が良好になっていた。
しかし魔竜山は消えておりその跡には同程度の大きさの巨大な物体があった。
『ゴォオオーン!!!』
大地を揺るがす吠え声と共にそいつは明確に俺の方を見ていた。
そいつは黒い竜だった。
しかも信じられないほどでかい。
千m級の魔竜山と同程度の竜とか常識外れにもほどがある。
「おい!あれはなんだ?」
『・・・魔竜山に関する古い伝承に巨竜の話しがある。天をつく巨竜が大地を割り国を吐息の一撃で滅ぼしいかなる攻撃も通用しなかったとある。そしてそいつが魔竜山の場所で永き眠りにつきその後土が積りやがて翼竜が住み着いたとのことだ』
「・・・で弱点とかはないのか?」
『ない。太古の神々ですら喰らい打ち滅ぼした魔竜だ。元々人知の及ぶところではない。ユウキの勇者としての力に期待するだけだ』
「信頼ありがとうよ。藁にもすがるってヤツだろうけど。しかしあれだけ強そうなのに翼竜を捨て駒にして俺の魔力を削りしかも倒し終わって俺が油断するだろうタイミングでいきなり吐息を仕掛けるとか中々小賢しい奴だな」
俺は軽口を叩きながら巨竜を睨んでいた。
竜退治の本番はこれからだ。
因みに巨竜の龍鱗は物理&魔法両方とも無効の不思議仕様です。
危うし主人公!
作者のネタかやる気が尽きていたら次回が最終回だ(笑)




