小話18 シュナ王の陰謀
今回は特にヒネリはありません。
最近トーア王国に放ってある間諜から妙な報告が入るようになった。
トーア王や王太子、それに一部の上級貴族までが『メイド』なるものに現を抜かしているとのことだ。
同盟国であってもシュルト王国の衰退著しいこの状況ではいつトーアが領土的野心を抱くか分かったものではない。
常に動向には注意を払う必要がある。
しかし『メイド』とは如何なるものであろうか?
勇者が異世界から持ち込んだ侍女の新しい形らしいのだがその着ている『メイド服』に特徴があるようだ。
今までの地味な侍女服ではないドレスのように着ているものの魅力を引き立てるものだとのこと。
しかも間諜の癖に我が国でも導入出来ないかと個人的要望を入れてくる始末。
こやつらも毒されているのではないだろうか。
経済重視で軍事力が他国に劣る我が国にとって諜報戦は特に重要である。
厳しい試練を耐え抜いて間諜になった者達が見ただけで魅了されるとは空恐ろしいものを感じる。
「勇者の庇護下にある『メイド』に手を出すのは事が露見した場合報復が恐ろしいから出来ぬ。シュルト王の二の舞は御免だからな。その『メイド服』なるもののサンプルは手に入らないのか」
諜報機関の長に尋ねる。
「それがレインディアの『メイド』達は見目麗しいだけではなく身のこなしも尋常ではなく察知能力にも優れ全く隙がないとのこと。事の露見が許されない以上強硬策もとれず・・・」
「ウーム、なんとかならんのか?」
「取り敢えず絵心のある者に描かせたものを送らせました」
「間諜であれば誰でも出来よう?」
「それが現地の間諜の総意として画才のない者に描かせてもその素晴らしさは伝わらないとのこと」
「やっぱりこやつら籠絡されているのではないか?」
「養成は万全でした。彼らの愛国の志は・・・」
「成果だけが問題なのでな。メンタルが脆すぎるようだ」
「申し訳ありません。以後徹底させます」
「それで肝心の絵はどうなっておるのだ?」
「先程届きました。私もまだ見ておりません」
そして巻物を広げた。
「ムッ、これは・・・」
木洩れ日の中見目麗しいメイド服の少女が庭園の中を只歩いているだけの絵であった。
だが描いた者の溢れんばかりの愛情が込められた珠玉の一点であろうことが分かる。
しかしシュナ王の琴線に触れたのはそれだけでなくショートスカートにフリルのついた黒いドレスに純白のエプロンが鮮やかに掛けられており頭には同じくフリルのついたホワイトプリムをつけその可憐さを引き立てている『メイド服』にであった。
「な、なるほど、これは何やら妙な魅力があるな。トーア王と王太子はこの者らを手に入れたのか?」
「それが勇者よりこの『メイド』達を預かっているライザ王女が頑として拒否したため止むを得ず『ブロンズメイド服』という最下位の『メイド服』を勇者に許可をもらって手にいれようとしているところだそうです」
「フム、儂も欲しいがこれは商機でもあるな。よし勇者と連絡を取れ!これらの宣伝と販売権、後、この『メイド』を我が国にも派遣してくれるように頼むのだ!幾ら金が掛かっても構わん!」
ショナ王は気を引かれながらも商機があるが故に商人根性によって平常心を保てたため気付かなかった。
厳しい訓練を耐え抜いた間諜達があっさり『メイド』に魅了され個人的要望を報告に混ぜてくるほどのぼせ込んでしまったことの恐ろしさを。
各種多様な娯楽や刺激のある現代日本ですらのめり込む者を出す『メイド』文化の力を。
娯楽や刺激の少ないこの異世界においては抵抗力のある者が少ないという事実に。
こうして勇気の持ち込んだ『メイド』文化は各国に広がり文化的パンデミックの兆候を見せ始めた。
これもトアる者の一つの形であった。
原文
T「しかし養成は万全でした」
K「・・・話しは信じるが成果だけが問題なのでな。脆すぎるようだ」
T「申し訳ありません。しかし彼らの○国の志は」
K「○○が○○○○○○にもっと早くお気づきであればな」




