小話15 双子メイドの御留守番
アットホーム的なものは期待しないでください。
御主人様がシオン様とお出かけになられ十日以上経ちました。
今度ばかりは危ないとのことで私とマイはラード王城で御留守番です。
ラード新女王様のお世話と警護の仕事があるので退屈することはありません。
「また一人上級文官の方が亡くなったということです。かなり高齢だったのに私がローアン国境付近の避難のことで無理を言い過ぎたのでしょうか・・・」
女王様が憂い顔で仰いました。
麗人は憂い顔でもお美しいです。
御主人様が何故手を出さないのか分かりません。
御主人様が望めば拒むことはないと思うのですが。
「あの嫌味なお方でしょう。難癖をつけているだけに見えましたが」
何気無い顔で相槌を打っておきます。
アンナお姉様によると必要に応じて主人の話し相手をするのも侍女の仕事だそうです。
ただし出過ぎず主人を立てるようにとのことでした。
「あの方の言われていたことにも一理はあるのです。現在の財政難ではローアン国境付近の村々の住民達を避難させ生活支援をするお金がないというのも事実です。しかし民の窮状を救うために起った私が民を見捨てることなど出来ません。幾つかの公共事業を後回しにしてでも費用をねん出するしかないでしょう。中々納得してもらえなかったのですが翼竜の呼び水となり王国の被害が大きくなるということで了承してもらいました。シオン様の言っておられた通り感情ではなく道理を説く理論武装の必要性を実感しました」
「しかしあの方には業者から賄賂を受け取っているという黒い噂もあります。無料で土木工事を行う御主人様を親の仇のように睨んでいたのも覚えています。女王様がお気になさる必要はないと存じます」
「まあ、そんな噂があったのですか。よく知っていましたね。それなら故人には申し訳ないですが私が反対勢力を諸侯のように粛清したという噂は放置しておきましょう。罪科については監査官に徹底的に調査させることにしましょう。腐敗文官にはよい見せしめになります。粛清の言い訳と取られるでしょうが今更悪名を被るのも恨まれるのも恐れたりはしません」
「女王様がそれでよろしいのなら」
ご本人が納得されているのならこれ以上言うこともありません。
大空洞で御主人様に捧げられてからの環境の激変に私もマイも驚くことばかりです。
一番驚くべきは私達自身の変化でしょうか。
一年前にはこんなところでこんなことをしているとは思ってもいませんでした。
シオン様に言葉を始め色々な知識を頭の中に直接授けて頂きアンナお姉様には礼儀作法や貴人への接し方等を教えて頂きました。
御主人様に連れられてラード王国の悲惨な状況を見て歩き搾取していたシュルト王国の繁栄も目にしました。
かつては神として怖れていたトカゲ人を御主人様が瞬殺されるのも見ました。
御主人様の偉大さを再認識しました。
ラード王国を再興し諸侯を粛清するのもお手伝いしました。
御主人様はお手伝いする前に忌避感はないのかと尋ねられましたがトカゲ人に仕えていた頃にはもっと酷いことをさせられていたので今更ですと答えました。
御主人様は自分が人を殺して感情が壊れているとよく仰いますが私達も似たようなものでしょう。
トカゲ人が村に訪れた時特別料理を素材から準備させられたりしていたのですから。
だから御主人様も同じ匂いを感じ取って御側においてくれているのでしょう。
最終目標のメイド公国建国のためもあるのでしょうが。
御主人様がいなくなってもレインディアとトーアに預けてある資金を使って大空洞に残してきた二十二人の同志と一緒に悲願を達成するように厳命を受けています。
さて御主人様から出発前に伺った任務は女王様のお世話と警護ですが今現在マイは警護の任務で厨房にいます。
私はここでお世話と直接的な脅威からお守りしています。
大空洞の外の世界の人間は動きが遅く鈍いので森で野生動物を狩っていた私達でも十分対処出来ます。
もっとも私達が特別なのだと部族長は言っていましたが。
マイの方は女王様の食事に妙なものを混入する者がいないかを隠形し確認しています。
一日交代です。
先日も私の当番の時に妙なものを入れていた者がいたのでその部分を回収して食事は廃棄して背後関係を洗った結果、嫌味な御爺様に辿りつきました。
先の賄賂の話しも噂ではなく屋敷に潜入した時に本人と業者が話していたのを聞いたので間違いはありません。
一通り犯行の教唆を確認した後回収した妙なものをその御爺様の食事に混ぜておきました。
お亡くなりになったのなら自業自得でしょう。
御主人様達がいなくなるとネズミが騒ぎ始めるので対応するようにと方法も含めて指示されているのでその通りにしています。
その前の女王様を欲望に濁った目で見られていた方の手の者が入れたものをその方の食事に混ぜた時にはまいりました。
食事後いきなりでっぷり太ったその方が同じくでっぷり太った奥様を押し倒して行為に及んだのでした。
目が腐るかと思いました。
女王様との会食の時を狙っていたと言っていた意味が理解出来ました。
酷いものを見せられたのとそれだけでは悔悛しないのでその薬を瓶ごと回収して翌日王城の上級文官用食堂での昼食時にその方の食事に混ぜておきました。
給仕のおば様に襲い掛かり衛兵に取り押さえられていました。
今は罷免され奥様にも家を追い出され路頭に迷っているようです。
給仕のおば様には悪いことをしました。
因みにその薬は大切に保管してあります。
御主人様が戻られたら早速使ってみましょう。
その日が楽しみです。
この娘達は尊敬する御主人様でも良心の呵責なしに容赦なく薬を盛って目的を達成しようとします。
危うし主人公。




