18 竜は集う(中編)
すみません。
中編となります。
燃え盛る村の中に焼かれていく翼竜の遺骸が見える。
異変を察知した黒い翼竜の群れは警戒態勢を取り村の周辺を滞空し始める。
すると村の裏山がムクムクと盛り上がっていった。
翼竜達はギーギーと警戒の唸り声を上げてそれを取り囲む。
やがて裏山は身長十mの巨大な人型のゴーレムを形作る。
『ゴガーッ!!』
巨大人型のゴーレムは雄叫びを上げ口と思しき開口部から巨大な火弾を発射した。
火弾が向かってくる方向にいた翼竜達は回避行動を取って躱したかに見えた。
次の瞬間巨大な火弾が爆散し周囲の翼竜を次々に墜としていった。
翼竜達は開口部の方向を大きく迂回しながら巨大人型のゴーレムに突っ込んでいく。
巨大人型のゴーレムに次々と開口部が開き時間差で次々と巨大な火弾が放たれていく。
翼竜は怯むことなく巨大な火弾を数に任せて突破し巨大人型のゴーレムに取り付く。
しかしヒュンヒュンと風切り音がして翼竜達は細切れになっていった。
何頭かは巨大人型のゴーレムを突いたり鋭い脚爪で切り裂くのに成功したが瞬時に傷口は塞がり次の瞬間には細切れになっていた。
残った翼竜は巨大な火弾の射程外に後退し無数の火弾を放ち始めた。
火弾が一方的に着弾し巨大人型のゴーレムはしだいに赤熱化し始め融解していく。
翼竜は火弾を叩き込み続けそこは溶岩の沼のようになっていた。
翼竜は暫く様子を見るように周囲に滞空していたが止めを刺したと判断しローアンの西方に去っていった。
後には煮えたぎる溶岩のみが残されていた。
「フゥ、死ぬかと思った」
俺は溶岩の沼から大分離れた位置に穴を開き這い出す。
奴らが射程外攻撃に切り替えた時点でゴーレムの脚部分から地中に土魔法で穴を開けて全力で逃走に移ったのだがあそこまで執拗に攻撃を続けられるとは思わなかった。
判断は正しかったが俺の穴掘りスピードは尋常ではない。
俺も土木工事で鍛えたこのスキルがここまで活きるとは思っていなかったが。
しかし高空からの攻撃、しかも数の暴力つきと手持ちの手段ではどうにも対応出来ない。
リベンジ戦に向けて俺は頭を捻っていた。
「無事だったか」
国境で落ち合ったシオンは珍しくホッとした表情をしていた。
「俺は死なないって言ってたろ。甘くみるなよ」
「何言っている。あっちこっち焼け焦げているじゃないか」
シオンが皮鎧の焼け焦げた箇所を触る。
既に火傷の跡は治癒済みだ。
助けた子供達も生きて帰ってきた俺を驚きの表情で見ていた。
「この子らはどうするかな」
「ローアン側の警備兵が預かってくれるってさ。あの様子じゃ養子に迎えかねないな」
「そいつは良かった」
俺は素っ気なく答えた。
少年が近付いてくる。
妹も少年の服の裾を掴んで引き摺られるように寄ってくる。
「ゆ、勇者様、有難う・・・」
「・・・りがとう・・・」
妹の方の声は擦れがちだ。
兄の方も決して助かって喜んでいる風でもない。
両親が死んでいるのだ。
礼が言えるだけでも大したものだろう。
「いいって事よ。それよりお前達はこれからが大変だ。お前は妹のためにも気張って生きろよ」
俺はポンポンとその頭を叩く。
少年は泣き出してしまった。
妹もつられて泣き出す。
いろんな感情が混じり合って箍が外れたのだろう。
俺は抱き合って泣いている兄妹を困ったように見ていた。
これでは俺が泣かしたように見える。
そんな俺の様子をいつもの調子を取り戻したシオンがニヤニヤしながら見ていた。
「さてとこれからの方針だが」
「どうする」
「取り敢えずトーア王国に向かう」
「目的は?」
「魔道具製作。又設計を頼む」
「分かった、任してくれ」
シオンがその豊満な胸を張った。
シオンは魔道具の設計から錬金術まで精通している。
更にあらゆる魔術を幅広く使える。
さすが大魔導師様である。
前回はともかく今回は魔道具が使えないと本気で死にかねない。
こういう時は本当に助かる。
「おい、警備兵のオヤジ!」
「私はまだ二十代です!」
禿げ頭で強面の警備兵が直ぐに返してきた。
日頃から言われているのか反応が速い。
しかし二十代か。
人は見掛けによらないっていうのを地でいっているな。
「そんな事はどうでもいい」
「どうでもいいって・・・」
「この非常時に細かい事に拘るな。それより王都に連絡を送れ!現在のローアン王国の異常は数千頭以上の黒い翼竜ワイバーンが国土を蹂躙しているためだ。上空からの攻撃には通常の軍事力では対応出来ないため応戦せず国境線近くの村々の住民を至急避難させるように伝えろ。同じ内容をレインディア、・・・とトーアに送ってくれ。放っておくと奴らは餌を辿ってくるぞ。俺は奴らを始末出来る手段を手に入れるためここを一旦離れる。一週間で戻ってくるからそれまで持ち堪えろ」
「はい!至急手配します!」
最初のところが納得いかなげだが警備兵は手配に走っていった。
俺とシオンはトーアに向けて出発した。
「よう、ダン。又急ぎの仕事を頼みたいのだが」
「勘弁してくれ!」
魔法鍛冶職人のダンが頭を抱えている。
生え際が後退している気がするが気の所為としておこう。
三日ぐらいの完徹の突貫作業で人間の頭は禿げたりしないだろう。
してみると国境の警備兵のオヤジは意外と激務なのだろうか?
「・・・用件だけは聞いてやる。なんの用だ」
ダンがブスッとした顔で聞いてくる。
報酬は良かったはずだが前回の黒騎士の鎧製作がよっぽどきつかったのだろうか?
「今度はコイツを作ってもらいたい」
シオンが設計図を渡した。
「・・・なんだ、こりゃ?用途がさっぱり分からんぞ」
「この世界にはない概念が入っているからな。出来そうか?」
「前回より基本構造は単純だからなんとかなるとは思うが。納期は?」
「三日、早ければ早い方がいい」
「・・・これ一つならなんとかなるか」
「いや、それが全部で四ついるんだ」
「無理だ!俺を殺す気かぁ!」
「今度は本気でヤバイんだ。数千頭以上の黒い翼竜が人を襲いまくっている。既に生息地であるローアン王国は壊滅状態、周辺各国に被害が広がるのは時間の問題だ。この一分一秒が惜しい」
「・・・チッ、分かった。死ぬ気でやってやるよ」
ダンは覚悟を決めた顔で答えた。
中年のオヤジの決め顔で中盤終了。
誰得でしょう?




