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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第7章 ラード王国編
24/119

13 終戦

本編では主人公はまじめに殺っています。

短めです。

緩やかな丘陵の上から見える眼下の光景は凡百な将であれば絶望的に思える状況であったろう。

整然と隊列を組み猛然とこちらに迫ってくる騎馬軍団その数約三万。

丘陵の上に布陣している一万のこちらの三倍の戦力であった。

しかも相手のシュルト軍はせっかく手に入れたラードとの国境沿いの領土を一旦手放しこちらに国内再統治の時間を与えてでも十分な軍備を整え再編し集結した精強な軍であった。

前回の再編までの繋ぎとしてラード国内に駐屯させられていた予備役の再招集組と若兵ばかりの数だけ揃えた軍とは根本的に違うものであった。

新生ラード軍は核となるガイエス辺境伯領の騎士団五千は装備も充実しそれなりにまとまっているものの後は各地の寄せ集めで中には皮鎧すらない者もいた。

丘陵の上に位置取り多少の地の利があっても本来なら覆せない質と量の差である。

新生ラード軍の最尖峰に立つ異様な黒き鎧の巨漢、黒騎士がいなければ。

「新生ラード軍の諸君!敵は我が方の三倍、しかもよく統制のとれた戦意溢れる精強な騎士達である!しかし怖れることはない!諸君らには、新生ラード軍には我黒騎士がいる!ラード軍に我がいる限り勝利は約束されている!敵は勇猛果敢だが決して怯むな!奮起せよ!諸君ら自身がその力で勝利を掴め!」

ラード軍の騎士達が鬨の声を上げた。

先の勝利によって士気は高い。

「我が力で敵中央を切り開く!しかし今度の敵軍は怯むことなく遮二無二にこちらに向かってくるだろう!その戦意も我が打ち砕く!全軍我に続け!」

軍馬で駆け出す黒騎士に率いられたラード軍一万の騎士達が丘陵を駆け下りていく。

地龍召喚サモン・アースドラゴン

黒騎士が呪文を叫ぶと前方の土が盛り上がり巨大な蛇型の土で出来た龍が形造られる。

『グワー!!』

その巨大な龍は地を振るわす轟音のような吠え声を上げながら敵軍中央に突っ込んでいった。

魔導士の火弾(ファイヤーボール)も騎士の剣も意に介したふうもなく騎士達を魔導士達を吹き飛ばし踏み潰し噛み砕いて蹴散らしていく。

「今すぐ殺されたいヤツは掛かってこい!命が惜しいヤツは今すぐ全力で逃げろ!それ以外は皆殺しにする!他国を侵し民を踏み躙ってきたお前達が今度は踏み躙られる番だ!覚悟しろ!!」

地龍(アースドラゴン)が切り開いた道を駆けながら当たるを幸いに両腕の二刀の斬馬刀を振り回し両側から押し寄せる敵騎士や火弾(ファイヤーボール)を粉砕していく。

敵騎士は剣で受けようが盾で受けようが一瞬も耐えることも出来ずそれらごと斬り飛ばされ屍を晒していく。

火弾(ファイヤーボール)もその斬馬刀に傷一つつけられない。

強力な魔法剣のようであった。

地龍(アースドラゴン)も敵中央で暴れ狂っている。

他のラード軍の騎士達も前方から激突して奮戦していた。

しかし今回のシュルト軍は戦意を保ったまま持ち堪えていた。

地龍(アースドラゴン)には度胆を抜かれたが黒騎士の未知の魔法については前回の敗残兵から報告が上がっており多少の犠牲を覚悟し浮き足立たなければ数に劣る敵軍を壊滅させることは可能だと判断しているのだ。

「黒騎士よ!我と尋常に勝負しろ!」

戦場に満ちる騒音を圧するような大声が響き渡った。

シュルト軍が割れその中から黒騎士を越える3m近い巨体の戦士が現れた。

軍馬には騎乗していない。

もっともあの巨体を支えられる軍馬もないだろうが。

後方に二頭立ての戦車が見えた。

「我が名はシュルト軍最強の戦士ゴート!面妖な魔法ばかり使う黒騎士よ!貴様にも戦士の誇りが少しでもあるのなら尋常に立ち合え!」

「・・・よかろう。掛かってこい!」

その返答を受けゴートは黒騎士に突っ込んでいった。

周囲のシュルト軍は邪魔にならないように下がる。

ゴートの手に持つ剣はその身長にも負けないぐらいの大剣を凌ぐ分厚い巨剣でそれを軽々と振り回していた。

尋常ならざる膂力であった。

実はゴートは故クロフト子爵による強兵計画で投薬による身体強化と治癒魔法を併用した人体改造を施したが期待通りの反応速度が得られずに軍に下げ渡された初期実験体であった。

とはいえ普通の人間より遥かに速い反応速度と膂力を持った戦士であることには変わりがなかった。

「ウオーッ!!」

ゴートは雄叫びを上げて突っ込んできた。

黒騎士はいつも通り無造作に斬り下ろす。

ギン!!

激しい剣劇が鳴り響き初めて黒騎士の剣が受けられていた。

「どうだ!」

そして受け流すように払い黒騎士に斬り掛かった。

またも激しい剣劇が鳴り響いた。

ゴートの一撃は黒騎士のもう一方の斬馬刀で受けられていた。

「いまだ!」

ゴートの胸元から一本の普通サイズの剣が伸びて黒騎士の胸を貫いた。

ゴートの胸元にはもう一本の普通の腕が生えておりその手に握られた剣が胸元を裂いて伸び黒騎士の胸を貫いたのだ。

「・・・それが貴様の尋常な立ち合いか?」

黒騎士が低く囁いた。

「ガハハハッ、戦いは勝てばいいのだ!俺の奥の手に気付かなかった貴様が間抜けだっただけだ!」

「そうだな」

黒騎士に致命傷を与えたと思って油断していたゴートの首があっさり刎られた。

「お前も俺の身体の構造に気付かなかった間抜けだったな」

そしてゴートの大きな頭を串刺しにして上に翳した。

「シュルト軍最強の戦士は討ち取った!我はこの通り不死身だ!死にたいヤツはドンドン掛かってこい!」

胸に突き刺さったまま血も流れない胸を誇示して叫んだ。

「ば、化け物だ・・・」

その成り行きを見ていた騎士が後退った。

そして黒騎士が進撃を再開すると今まで勇敢に挑み掛かっていた騎士達が怯み始め後退し出していた。

命を掛けて突っ込んで万が一に刃が届いたとしてもそれが無意味なら命を掛ける意味がない。

そして何より剣を胸に刺したまま普通に動き回る黒騎士が恐ろしい。

弱気が周辺に伝播し緊張の糸が切れた一人の騎士が喚きながら逃げ出すと一気に中央が崩壊した。

それは前線にも達し総崩れとなっていった。

「これで終わりだ」

黒騎士が呟くと地龍の口から普通の発光色とは違う青い火弾(ファイヤーボール)が上がった。

逃走を始めていたシュルト軍の先端が地響きを上げて迫る洪水に呑み込まれていった。

予め堰き止めていた川の水をタイミングを合わせて堤を切ったのだ。

シュルト軍上層部は戦場からやや後方の川の堰き止めには気付いていたが川がない方が進軍の邪魔にならずその位置を過ぎても堤を切る様子もなく絶対に撤退しない予定だったため無視していたのだった。

シュルト軍は激流に飛び込み溺れる者、やけになって突撃を掛けてくる者、剣を捨てて命乞いする者と既に統制を失っていた。

しかし黒騎士は容赦なく全軍に殲滅を命じて一兵残らず命を断っていく。

やがて大地は無数の惨殺体に埋まり一時の激流が収まり水量が減った小川には溺死体が浮かび大地から滴り落ちる血で朱に染まっていた。

これにより防衛戦はラード王国側の圧倒的勝利に終わり王国再興は完全に成ったのであった。

黒騎士「なんでシュルト軍最強の騎士じゃなく戦士なんだ?」

自称シュルト軍最強の戦士G「俺が馬に乗れないからだ!」

黒騎士「三本目の腕は手術でつけたのか?」

自称シュルト軍最強の戦士G「そうだ!異世界人が伝えた話しからヒントを得たそうだ」

黒騎士「・・・」

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