小話5 被害拡大
前回の後日談です。
暗い室内に衣服を脱ぐ微かな衣擦れの音がした。
「そこまでだ」
俺は寝たまま声を掛けた。
「「御主人様、申し訳ありません。起こしてしまいましたか」」
双子メイドが声を揃えて謝罪してくる。
「いや、構わない。又明日も頼む」
「「分かりました」」
双子メイドは衣服を着け直し大人しく出ていった。
あれから自らの増上慢に気付いた俺は取り敢えず判明した察知の未熟さを鍛えるべく毎夜双子メイドに忍び込むよう頼んでいる。
彼女達の隠形レベルは高く忍び込んだ時にはまだ察知出来ないが衣擦れの音がした時点では目覚められるようになっていた。
最初に忍び込まれたのは夜の魔法の訓練が終わってシオンが出ていった時に魔法で扉の鍵が壊され蝶番には音が出ないように細工されていたためでもあった。
俺の増上慢に気付いてお灸を据えるつもりだったのかもしれない。
単なる悪ふざけだったのかもしれないが。
以後は察知の特訓のため俺の意志で鍵は開けている。
俺は再び眠ることにし目を瞑った。
毎夜忍び込む双子メイドが自分達の部屋に戻る時には隠形を解くため目撃されており俺が幼女愛好者だというあらぬ噂が立っている。
不能と言われるよりはまだマシなので放置していたが後日俺はそれを後悔することになった。
大空洞内の住民は十二部族に分かれ其々その地域のトカゲ人に仕えていた。
トカゲ人達が大空洞の支配者の座を追われその跡を引き継ぎ新たな支配者になったのがレインディア王国の文官武官達でその実質的なトップがルシア王女であるというのが住民達の認識である。
そのルシア王女が目上の者のように接し又大空洞内の呪術師達とは較べものにならない桁違いに強大な魔法を振るって住民達の世界を日々大きく便利に変えていく俺は文官達の教育の成果もあって住民達に神のように崇め奉られていた。
双子姉妹を差し出してきたのは十二部族の一つで仮説庁舎近隣の部族に過ぎず相互に横の繋がりはなかった。
そのため件の噂が文官達を通じ各部族へと流れ供物として捧げられた娘達が神の寵愛を受けていると勘違いさせてしまった。
結果残り十一部族から二人ずつ計二十二人の身寄りのない美しい花嫁達が俺に捧げられることになったのである。
仮設庁舎前にぞろぞろと集まった大量の花嫁達を見た時は本当に眩暈がしたものだ。
だが自分の見通しの甘さによる結果については敢えて受け入れることとしよう。
只一つだけ文句を言いたい。
なんで全員十三歳以下なんだよ!これじゃ元の世界に帰る予定(二年以内)までにつまみ食いのひとつすら出来ないじゃないか!
以上である。
勇気の守備範囲は十六歳以上。
さて次回からは本編再開(予定)です。