拝啓 寡黙で一途なデュラハン(首無し騎士)様 【第4話】
あ、ちがった。元王太子殿下様の側近で、近衛騎士団長令息のデューン様。貴方様のご遺体があまりに印象的で、つい無意識にそのお名前に脳内変換しておりました。
元王太子殿下様からのご依頼にて、お手紙をしたためさせていただきます。王太子殿下と大変お親しい聖女とは別口の聖女でございます。
あなたに言葉を伝える術がわたしには無いかもしれません。だってわたしは書く文字で魂魄と交流し、懺悔を受け止め、道を指し示す……(ことは出来てないかもしれませんが)まあ、そんな者ですから。
ただ、元王太子殿下様が、貴方様のことをとことん哀れんでおられまして。貴方様は、側近の中でも最後の最後までくだんの聖女との交流に難色を示しておられたとのこと。最後には多数決の多勢に無勢&王太子殿下の権力ごり押しで押し切られちゃったみたいですけど。いやー唯一の常識人。まっとうな人間だっただけに残念ですホント。
んで、まともな価値観を取り戻して、反省した元王子殿下様が、貴方様が無事に次に進めるように計らって欲しいと、手紙書きを依頼してこられたってわけです。書いてくれないと成仏せずに、王国中の家と云う家の中でミシミシめきめき音を立ててやる、なんて安眠妨害な大迷惑霊障を起こすなんて言うから仕方なくのサービス残業ですよ。
貴方様が無惨な最期のお姿となった経緯は、この騎士団詰所の祈祷室へ来る前に、調査室管理官に揃えていただいた書類で確認させていただきました。
公爵令嬢様を乗せた修道院行の護送車を襲った一行と共に、討たれていたとか。
いやー⋯⋯おかしいですね。
貴方様がその場へ行く理由は、無かったはずなんです。公爵令嬢様の護衛は、公爵様が彼女をさっさと貴族籍から抜いたお陰で、ひとりも居ませんでした。その時点で彼女を嫌悪していた王太子殿下が、ご自身の側近を付けて護ろうとするとも思えない。逆に彼女を弑そうとすることはあっても、ですね。
どうなんでしょうね、貴方様は公爵令嬢様をひっそりと葬るために遣わされたのでしょうか?
あーっ! ちょっと、机を真っ二つは止めてくださいよ!! 幾らこんな席に慣れたわたしだって、怖いですからっ!
それに真っ二つだなんて、嫌でも貴方の姿とダブっちゃうでしょ。あれは今でも軽くわたしのトラウマなんですから。
否定したいんですね。そんな気はしてましたけど、やっぱりかぁ。
で、真相はどうなんですか? 護送車の襲撃犯は居た⋯⋯と。公爵令嬢様の命を狙った動きを察した貴方は、一人駆け付け、犯人を逆に討ち取った⋯⋯直後、とんでもないモノに襲われた、ですか。
単騎で八人の賊を倒す貴方が簡単にやられちゃうなんて、何者だったんでしょうね。え? 人じゃない? だからこそ、今の姿となった貴方が、彼女を人ならざるモノから護ることが出来た⋯⋯と。結果オーライではあったんですね。ちょっと、良かったなと思っちゃいました。
けど⋯⋯参ったなぁ。更に残業確定しちゃったかなぁ。はあ、仕方ないか。わたし聖女だし。
キレイな光が見えてきましたか? それは良かったです。その光に向かえば、すぐに来世への道に辿り着けますよ。
んん? まだ気になることがありそうですね。まあ、無理強いはしないですが。わたし面倒くさがりなんで。
けど、あまり寄り道せずに、光の方へ向かってくださいね。
あとね、ここだけの話、公爵令嬢様は貴方様のことをとても大切に思っていらっしゃいましたよ。貴方様も同じだったんでしょう。
義務や使命を重んじる貴方様方が、迂闊にそれを表に出すことは無かったんでしょうけど。
ちゃんと伝わってましたよ。
あ、遺影の前の花が小さく開きましたね。
ふふ、伝わったみたいで良かったです。
貴方様の一日も早い成仏を待ち望んでおります。
敬具
手紙の聖女 セシャト




