↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓 婚約者を聖女に取られた公爵令嬢様 わたし別口の聖女です  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/6

拝啓 恩知らず聖女に手玉に取られた王太子殿下様 【第3話】


 公爵令嬢様からのご依頼にて、お手紙をしたためさせていただきます。王太子殿下と大変お親しい聖女とは別口の者でございます。


 いやーまさか貴方様を指名されるとは思ってもみませんでしたよ。


 しかもまだ幽閉されていた北の塔に留まっていらっしゃったなんて、びっくりするくらい近場過ぎて、ちょっとがっかり……いえ、こちらの話です。ちょっとだけ大神殿を離れて、お仕事の大義名分のもと初の地方出張! いざ辺境の離宮へ、ひゃっほう! って浮かれちゃってた部分もあったのは、わたしの勝手ですからお気になさらず。それにしても、離宮には辿り着けなかったって噂は本当だったんですねぇ。


 で、本当なら神様の赦しが無くて大神殿の敷地に入ることも出来ないまま、この塔をさまよっている王太子殿下へわたしがお手紙を書くことなんて、有り得なかったはずなんですけどね。貴方の婚約者であらせられた公爵令嬢様から、どうしても貴方に手紙を書けって訴えられるから仕方なくですよ。


 ああ、部屋中から音が鳴ってますね。ここは石造りの塔なのに、故郷にあった木造の馬小屋よりもメキメキ、バチバチと派手な音を立てて煩いですね。流石は王宮の夜会で婚約破棄劇を演じられた、目立つ演出大好き殿下。ここまで喧しい魂魄には早々お目にかかれませんね。


 ではさくっと本題に移ります。王太子殿下とは申し上げたものの、魂魄になられた直後、地位を剥奪されたことをまずはお伝えいたしますね。

 ガラスを割らないでくださいよ。わたしが何かしたわけじゃないんですから。文句があるなら、恩知らず聖女か、色香にまどい正体を見落とした迂闊なご自身にどうぞ。


 真実の愛だと思っていた、ですか。神に愛された彼女こそが、ご自分を輝かしい王道へ導く標となると信じていた、と。


 なんでそこまで信じちゃったんですかねー。盲目的過ぎません?


 はぁそうですか、公爵令嬢様の罪状に次々と証言が出て、証拠が出て、信じざるを得なかったと。ソレは聖女追放未遂の話ですよね。実行はされず、貴方様がこれ幸いに聖女を囲い込まれて、ますますお二人の距離を近付ける一助になっていた気もしますけど。結果として、追放は貴方様をはじめとした、くだんの聖女支持令息達に阻止されて未遂に終わりましたよね。逆に名誉を傷つけられた公爵令嬢様だけが命を失われて。まあ、最後には主だった面々が揃ってこの世から退場する事態になったんだから因果応報ってものでしょうか。


 それはさておき、危険人物が王太子殿下、ましてや自分の婚約者に近付いていれば引き剥がそうとするのなんて当然だと思うんですよ。


 あの聖女は、そんな悪辣なものじゃない? 清楚で可憐で、護ってやらなきゃ壊れてしまう? それ本気で仰ってますか。いまだに。


 そもそも、聖女になる修行はまず体力作りからです。健康的な食生活と睡眠、そして労働。未成年ならば勉強もそれなりにさせられますし、淑女教育も一応あるには有りますよ。それに付いていけた者だけが、晴れて王国を裏方として支える「聖女」の職に任命されるんですから。だから聖女を名乗ってる時点で、脆弱ではないんですよね。


 あと、気になったのが貴方様方が聖女と呼んだ彼女のことです。


「心を癒す聖女」でしたっけ。確かにその能力を持った聖女は在籍していましたよ。けど、貴方様がくだんの聖女と出会う少し前に、彼女は神殿に踏み入ることが出来なくなって罷免されたんですよね。その上、彼女が国王陛下や神官長が王太子殿下の元へ派遣した記録なんて無いんですよ。正式な依頼であるなら、神に認められた者だけが足を踏み入れることのできる、王都大神殿の中に派遣許可証が残されているんですけどね、どれだけ調べても無いんです。


 確かに見た? ならそれは、神に赦されない者が偽造したものなんでしょうね。正規品と置き換えることも出来ない、悪しきモノが作った偽物ですね。


 なら彼女は何者だって、そんなことわたしは知りませんよ。ただ公爵令嬢様の葬送の式典で、進行神官が説明していた内容によれば「怪しき魔の力に魅入られ、人の道を違えた存在」――魔物みたいですよ。その証拠に、そこの大神殿に足を踏み入れた途端、きれいさっぱり消えちゃったみたいですから。ああ、ってことは魔物だって証拠品も残らなくって、曖昧な口伝しか無いから、証拠として正規登録されるものは無いんですねー。だから余計に王国の皆さんに危機感が伝わらなくって、国王陛下は焦っておられるのかも。


 自分も知っていれば、って何を仰っているのやら。

 むやみやたらにガラスを割ったり、空気を鳴らしたりするくらいしか出来ない、魂魄でしかない今の貴方に出来る事なんて、もう何もないですよね。


 無辜の民のことを想うのなら、何でも壊し崩そうとする荒ぶる心を落ち着けて、見守るのが一番なんですよ。


 そうすれば、光溢れる地も、何十、何百年も先に見付かるやもしれませんからね。


 では


 ――って、え? 追加の依頼? 貴方様もですか⁉ はいはいわかりましたよ。引き受けるんで、未練はこれで断ち切ってくださいね。

 貴方様の一日も早い成仏を待ち望んでおります。



 敬具







 手紙の聖女 セシャト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。