第四話:セラ・ヴァルディス
白銀の髪が、血煙の中で揺れた。
黒い剣。
傷だらけの鎧。
それでも彼女は立っていた。
セラ・ヴァルディス。
“剣姫”と呼ばれた女。
かつて王国騎士団の頂点に立ち――
命令を拒んだその日、すべてを失った。
だが、彼女はまだ剣を握っている。
「アレン……理想を振りかざす反乱」
「レヴァル……世界を壊すための反乱」
どちらも危うい。
背後から声。
「だったら、どっちに付く?」
振り返ると、黒衣の男。
アレンの密偵だった。
「私は傭兵だ」
「……どちらにも?」
「違う」
彼女は空を見上げる。
遠くで、王都の灯りが揺れている。
「“一番マシな未来”に賭ける」
■王軍十万、接敵
角笛が鳴るより早く、動いた。
黒い波。
鉄と馬の奔流。
「来るぞ!!」
誰かの叫びは、すでに遅い。
戦争が始まったのではない。
“戦場が飲み込まれた”のだ。
■アレン右翼
「三重陣形!!絶対に崩すな!!」
声は冷静。
だがその奥に焦りはない。
アレンは“見えている”。
戦場全体が。
一つの盤面として。
「ここで止める」
彼が手を振る。
次の瞬間――
補給路が爆ぜた。
王軍の“呼吸”が一瞬止まる。
「戦争は力じゃない」
「“速度”だ」
静かに言う。
その声だけが、戦場の理を支配する。
■レヴァル正面
「はっ、来たか」
黒狼の旗が風を裂く。
王軍本隊。
黒い鎧の壁。
だが――レヴァルは笑った。
「全部、まとめて来い」
「一人ずつじゃ退屈だ」
部下が止める間もない。
次の瞬間。
彼は“戦場に落ちた雷”だった。
一歩。
一閃。
十人が消える。
二歩。
二閃。
戦列が裂ける。
「……化け物だ!!」
「違う」
レヴァルは笑っている。
「これが“現実”だ」
■セラ・ヴァルディス
三体。
王国特殊騎士。
無言の殺意。
“死の塊”が同時に迫る。
セラは動かない。
恐怖もない。
迷いもない。
ただ――剣を抜いた瞬間。
世界が静止した。
一閃。
風が割れる。
三体、同時に崩壊。
着地。
血が一滴も飛ばない。
■戦況崩壊
王軍、十万。
ただの数字ではない。
“質”もある。
黒鎧部隊が前に出る。
空気が変わる。
「来るぞ……本物が」
誰かが呟いた瞬間。
■レヴァル単騎突破
「邪魔だ」
一言。
そこから先は“地獄の道”だった。
剣の軌跡が空間を切り裂く。
敵が避けるのではない。
“避けられない”。
「あれは人間じゃねぇ……!」
だがレヴァルは止まらない。
「王がいる場所はどこだ?」
それだけを見ている。
■アレン戦域
「押さえ込め!!時間を稼ぐ!!」
声は戦略。
戦場は理性。
だが――押し潰されていく。
「想定以上だ……」
副官の声が震える。
アレンは一瞬だけ目を閉じる。
そして言う。
「まだだ」
「“時間”はこちらにある」
■セラ介入
黒鎧の群れ。
十。
二十。
それでも止まらない。
だが――その中心に“空白”が生まれる。
セラが歩いていた。
戦場の中心を、まるで散歩のように。
「……邪魔」
一閃。
道が開く。
■三者、中央到達
そして――運命の一点。
王軍中枢旗。
そこに三人が同時に立つ。
アレン
レヴァル
セラ
一瞬、戦場が“止まる”。
「ここを落とせば終わる」
アレン。
「壊せば全部終わりだろ」
レヴァル。
「守るなら、ここだ」
セラ。
三つの刃が、同じ一点を見ている。
■沈黙
風が止まる。
血の音だけが聞こえる。
そして――
同時行動
爆発。
斬撃。
突撃。
三方向からの“終わり”。
王軍中枢、防衛線崩壊。
その瞬間
空が“黒く”なる。
地面に影が落ちる。
「……来る」
レヴァルの声が低くなる。
アレンの目が初めて揺れる。
セラが剣を構え直す。
「これが……王の本気か」
■王都
玉座。
王は笑っている。
「ようやく“遊び”が終わる」
「出せ」
「処刑騎士団」
戦場沈黙
大地が割れる。
黒い影。
一人。
二人。
三人。
いや――“人ではない何か”。
戦場の空気が死ぬ。
レヴァル
「……面白くなってきたじゃねぇか」
アレン
「想定を超えた」
セラ
「ここからが本番だ」
三人の視線が、初めて完全に一致する。
そして――
剣が、同じ方向を向いた。




