第十八話:核へ
赤黒い光が戦場を覆う。
黒影の身体は限界まで膨れ上がり、鎧の隙間から禍々しい光が噴き出していた。
大地は震え続ける。
兵士たちは立っていることさえできない。
「逃げろォォ!!」
「爆発するぞ!!」
各所で叫び声が響く。
しかし――
アレンだけは走っていた。
一直線に。
黒影へ。
■最後の援護
「行かせるかァ!!」
黒影の前へ王血兵が立ちはだかる。
数百。
いや、千。
だが。
「邪魔だ!!」
レヴァルの大剣が唸る。
**ズガァァァァン!!**
王血兵が一直線に吹き飛ぶ。
黒狼式・戦域圧縮。
狭められた戦場で敵同士がぶつかり合い、前線が崩壊する。
「アレン!」
「前だけ見ろ!!」
■剣姫の道
セラも駆ける。
黒影へ近づこうとする処刑騎士団を迎え撃つ。
ガキィィィン!!
黒剣が火花を散らす。
「ここは通さない!」
一撃。
二撃。
三撃。
処刑騎士団の猛攻を受けながらも、一歩も退かない。
肩から血が流れる。
それでも剣を振るう。
「あなたは……行きなさい!」
その声は、アレンへ向けられていた。
■核
白銀剣が静かに光る。
「核まで残り十五メートル。」
「右胸部。」
「装甲内部。」
アレンは頷く。
「分かった。」
黒影が腕を振るう。
巨大な衝撃波。
だが。
白銀領域がその衝撃を弱める。
アレンは止まらない。
十メートル。
八メートル。
五メートル。
「排除。」
黒影が拳を振り下ろす。
■黒狼の咆哮
ドォォォォン!!
拳は届かなかった。
レヴァルが受け止めていた。
腕から血が噴き出す。
骨が軋む。
それでも笑う。
「重てぇな……!」
黒影がさらに押し込む。
レヴァルの足元が割れる。
「だがよ……。」
「この程度で倒れるほど、俺は安くねぇ!」
黒狼の幻影が再び姿を現す。
「吠えろォォォ!!」
渾身の一撃。
黒影の拳が弾かれる。
「今だァ!!」
■到達
アレンが飛ぶ。
黒影の胸。
砕けた装甲の隙間。
そこには――
黒く脈打つ球体。
心臓のように鼓動している。
「これが……。」
「核。」
ルミナスが答える。
「確認。」
「破壊してください。」
■真実
その瞬間。
アレンの瞳に映像が流れ込む。
黒い玉座。
跪く騎士たち。
そして――
一人の青年。
白い鎧を身にまとった騎士。
その胸へ黒い核が埋め込まれる。
「……っ!」
アレンが息を呑む。
「あれは……人間?」
ルミナスが静かに答える。
「処刑騎士団は、人間を改造して造られた兵器です。」
「王家に忠誠を誓った騎士たちの末路です。」
アレンの手が震えた。
「そんな……。」
黒影の瞳が、一瞬だけ揺れる。
「……たす……け……。」
かすかな声。
機械のような黒影から、人の声が漏れた。
■決断
アレンは剣を握る。
「壊せば……。」
「この人も死ぬ。」
ルミナスが静かに告げる。
「はい。」
沈黙。
レヴァルが叫ぶ。
「アレン!!」
「迷うな!!」
セラも叫ぶ。
「早く!!」
黒影の身体がさらに赤く染まる。
自壊まで残りわずか。
黒影は苦しそうに呟く。
「……終わら……せ……て……。」
その言葉で。
アレンの迷いは消えた。
「……分かった。」
白銀剣を構える。
「あなたを。」
「必ず解放する。」
ルミナスが輝く。
「浄化機構、起動。」
白銀の光が刀身を包む。
「これは破壊じゃない。」
「救済だ。」
アレンは渾身の力で、
白銀剣を黒い核へ突き立てた。
ズァァァァァッ!!
白と黒、
二つの光が戦場全体を飲み込んだ。




