第十七話:白銀の覚醒
世界から音が消えた。
風も。
悲鳴も。
剣がぶつかる音さえ存在しない。
白い光だけが、静かに戦場を包んでいた。
黒影の剣はアレンの頭上で止まっている。
いや――
止められていた。
■最終解放
パキン――。
白銀剣の刀身が砕け始める。
兵士たちが息を呑んだ。
「剣が……。」
だが砕けたのではない。
外側の刀身が剥がれ落ちていた。
その中から現れたのは、
純白に輝く細身の剣。
刀身には古代文字が刻まれ、
柄にはライゼル家の紋章が浮かび上がる。
「これが……。」
アレンは静かに呟く。
「本当のルミナス。」
白銀剣が応える。
「継承者、認証。」
「最終形態を解放します。」
■黒影、演算不能
黒影の赤い瞳が激しく点滅する。
「解析。」
「失敗。」
「演算不能。」
「未知の権限を確認。」
初めて。
黒影が後退した。
一歩。
二歩。
その姿に迷いが見える。
■白銀領域
アレンが一歩踏み出す。
その瞬間。
白い紋章が戦場全体へ広がった。
王血兵の動きが止まる。
処刑騎士団も足を止める。
黒影は剣を動かそうとするが、
身体が重い。
「機能低下。」
「原因……不明。」
アレンは静かに言う。
「これは支配じゃない。」
「命を守るための領域だ。」
■レヴァル帰還
崩れた大地の奥。
瓦礫が吹き飛ぶ。
ドォン!!
「痛ぇ……。」
土煙の中から、
レヴァルが立ち上がる。
額から血を流しながらも笑っていた。
「危うく生き埋めだったぜ。」
セラが安堵の息を吐く。
「本当に頑丈ね。」
「だろ?」
レヴァルは大剣を肩に担ぐ。
「主役を待たせるわけにはいかねぇ。」
■三人、再び
アレン。
レヴァル。
セラ。
三人が再び並ぶ。
黒影は静かに三人を見る。
「脅威度。」
「最大。」
「殲滅対象。」
赤い瞳が輝く。
「王命権限。」
「最終実行。」
空の黒い魔法陣が回転を始める。
だが。
アレンは白銀剣を掲げた。
「ルミナス。」
「応えてくれ。」
刀身がさらに輝く。
空から降り注ぐ黒い光が、
白い光に触れた瞬間、
霧のように消えていく。
「接続……不能。」
黒影が初めて焦りを見せた。
「王命権限……遮断。」
■反撃開始
レヴァルが笑う。
「今だ!」
黒狼式・戦域圧縮。
黒影の動きが鈍る。
セラが右から斬り込む。
黒い翼を切り裂く。
アレンが正面へ踏み込む。
白銀剣が一直線に走る。
ガキィィィン!!
黒影の大剣が真っ二つに折れた。
「武装……損壊。」
黒影が初めて膝をつく。
兵士たちから歓声が上がる。
「押してる!」
「勝てる!」
■黒影の最後の手段
しかし。
黒影はゆっくりと両手を広げた。
「最終命令。」
「自壊権限、起動。」
アレンの表情が変わる。
「まさか!」
黒影の身体が赤く染まり始める。
内部から凄まじい魔力が膨れ上がる。
セラが叫ぶ。
「自爆する気よ!」
レヴァルも顔色を変えた。
「この規模はまずい!」
黒影が静かに告げる。
「対象。」
「反乱軍、全滅。」
戦場全体を巻き込むほどの魔力が渦を巻く。
アレンは白銀剣を握り締めた。
「止める!」
その瞬間、
白銀剣から新たな声が響いた。
「継承者へ最終警告。」
「自壊権限を止める方法は一つ。」
「黒影の核へ直接到達してください。」
アレンは息を呑む。
「核……?」
白銀剣は静かに告げた。
「成功確率──二十一%。」
「失敗した場合、継承者は死亡します。」
アレンは迷わなかった。
白銀剣を構え、
燃え上がる黒影へ向かって駆け出した。




