第十六話:最終承認
「最終解放まで、残り六十秒。」
白銀剣の声が戦場に響く。
アレンは静かに息を吐いた。
「六十秒……。」
長いようで短い。
その時間を稼がなければ、全てが終わる。
■時間を稼ぐ者たち
「ハハハハハッ!!」
レヴァルが笑いながら敵陣へ飛び込む。
大剣が唸る。
ズガァァァン!!
王血兵が何十人も吹き飛ぶ。
「全員まとめて来い!!」
「一分くらい俺が止めてやる!!」
黒狼式・戦域圧縮。
戦場が狭まる。
王血兵は身動きが取れない。
しかし──
「排除対象変更。」
処刑騎士団二体がレヴァルへ向きを変えた。
「ようやく本気か。」
レヴァルは口角を上げる。
■剣姫
セラは一人で右翼へ走る。
押し寄せる王血兵。
数百。
「ここは通させない。」
黒剣が閃く。
一人。
二人。
十人。
それでも敵は尽きない。
肩を斬られる。
腕から血が流れる。
それでも剣を振るう。
「まだ……!」
「あと少し!」
■残り四十五秒
アレンは目を閉じたまま動かない。
白銀の光だけが広がっていく。
黒影はその姿を見つめる。
「危険度。」
「最大。」
「優先排除。」
黒影が動く。
一直線にアレンへ。
だが。
その前へ巨大な影が立ちはだかった。
■黒狼対黒影
「どこ見てんだ。」
レヴァルだった。
処刑騎士団を二体まとめて吹き飛ばし、
黒影の前へ立つ。
「相手は俺だ。」
黒影が剣を振るう。
ドォォォン!!
レヴァルは受け止める。
足元の大地が割れる。
「ぐっ……!」
腕の骨が軋む。
それでも離さない。
「行けぇぇぇ!!」
アレンは動かない。
ただ光だけが強くなる。
■残り三十秒
「最終承認、進行中。」
白銀剣の文字がさらに輝く。
アレンの周囲へ無数の光の剣が現れ始めた。
一本。
十本。
百本。
兵士たちが息を呑む。
「あれは……。」
「全部……剣?」
■限界
レヴァルの膝が沈む。
「チッ……。」
黒影の力が強すぎる。
押し返される。
「まだ……!」
その時。
横から黒い剣が走る。
ガキィィン!!
セラだった。
「一人で背負わない!」
二人で黒影を押し返す。
レヴァルが笑う。
「遅ぇぞ!」
「文句は後!」
二人は並んで黒影へ斬りかかる。
■残り十五秒
黒影の背後。
二つの黒い分身が、
ついに姿を持ち始める。
「第二個体。」
「第三個体。」
「起動。」
アレンが目を開いた。
「まずい……。」
このままでは間に合わない。
■決断
レヴァルは空を見上げる。
「セラ。」
「十分暴れた。」
セラが振り向く。
「何をする気?」
レヴァルは笑った。
「俺は"壊す"のが得意なんだ。」
大剣を地面へ突き立てる。
「黒狼式。」
「最終破砕。」
戦場全体が揺れた。
「なっ……!」
アレンが振り返る。
レヴァルの足元から無数の亀裂が走る。
一直線に黒影へ。
「全部まとめて落ちろォォォ!!」
ドゴォォォォォン!!
大地そのものが崩壊した。
巨大な穴。
黒影も、
生まれかけていた分身も、
すべて飲み込まれていく。
しかし。
レヴァル自身も穴へ落ち始めた。
「レヴァル!!」
セラが叫ぶ。
レヴァルは笑う。
「気にすんな。」
「俺は頑丈だ。」
その姿が土煙に消える。
■残り五秒
「最終承認完了まで。」
「五。」
「四。」
「三。」
黒影が瓦礫を突き破る。
鎧は砕けている。
それでも立ち上がる。
「排除……。」
「排除……。」
ゆっくりとアレンへ歩く。
セラが立ちはだかる。
「来なさい!」
しかし。
限界だった。
黒影の一撃で吹き飛ばされる。
「きゃあっ!」
もう誰も止める者はいない。
黒影がアレンへ剣を振り上げる。
「二。」
「一。」
その瞬間。
白銀剣が眩い光を放った。
「最終承認──完了。」
世界から音が消えた。
白い光だけが、
静かに戦場全体を包み込んだ。




