第十九話:救済の白と黒
白と黒が、ぶつかり合う。
光でもなく、闇でもない。
“意志”そのものが激突していた。
ズァァァァァァッ!!
戦場の音が消える。
兵士たちは目を覆い、レヴァルでさえ一瞬息を呑んだ。
■核の内部
アレンの意識は落ちる。
気づけば、そこは戦場ではなかった。
真っ白な空間。
その中心に、一人の騎士が立っている。
白い鎧。
壊れた剣。
そして胸に刺さった黒い核。
「……ここは。」
アレンが呟く。
騎士がゆっくり顔を上げる。
「……夢ではない。」
かすれた声。
だが確かに“人の声”だった。
■失われた騎士
「俺は……王国騎士団、第七隊。」
「……だった。」
男は笑った。
苦しそうに。
「名も、もう……思い出せない。」
黒い核が脈打つ。
彼の記憶を削っている。
アレンは一歩近づく。
「まだ……戻れる。」
騎士は首を振る。
「戻れない。」
「戻る前に……何百人も殺した。」
沈黙。
「それでも……」
「まだ、意識だけはある。」
■現実の戦場
外では。
黒影が暴走していた。
赤黒い衝撃波が大地を削る。
セラが叫ぶ。
「アレンは!?」
レヴァルが歯を食いしばる。
「まだ中だ!!」
黒影が拳を振るう。
ドォォォォン!!
レヴァルが吹き飛ぶ。
「ぐっ……!クソが!!」
「長くは持たねぇぞ!!」
■選択
核の中。
騎士が静かに言う。
「頼む。」
「終わらせてくれ。」
アレンは剣を握る。
しかし――
手が震える。
「あなたを……殺すことになる。」
騎士は微笑む。
「もう死んでるさ。」
「ただ……終わらせてほしい。」
「王に使われたまま終わるのは……嫌だ。」
沈黙。
アレンの目が揺れる。
■白銀の答え
その瞬間。
ルミナスが光る。
「継承者。」
「この存在は既に“人”ではありません。」
「しかし。」
「完全な破壊は推奨されません。」
アレンが顔を上げる。
「方法は?」
ルミナスは答える。
「核の再定義。」
「記憶の解放。」
「成功率:極めて低い。」
アレンは即答した。
「やる。」
■解放
アレンは剣をゆっくりと騎士へ向ける。
「あなたを。」
「終わらせるんじゃない。」
「取り戻す。」
白銀剣が震える。
空間が割れる。
記憶の奔流が流れ込む。
戦場。
仲間。
笑顔。
そして――命令。
「……やめろ……」
騎士が苦しむ。
「思い出すな……!」
核が暴走する。
黒い力が膨れ上がる。
■現実崩壊
戦場で黒影が叫ぶ。
「処理不能!!」
「内部異常!!」
セラが叫ぶ。
「何が起きてるの!?」
レヴァルが睨む。
「……賭けてるんだ。」
「アイツは。」
黒影の身体がひび割れる。
■最後の記憶
核の中。
騎士が涙を流す。
「俺は……守りたかっただけだ……」
アレンは剣を握る。
「なら。」
「今守れ。」
白銀剣が光る。
■救済
ズァァァァァァッ!!
白銀の光が核を包む。
黒い力が崩れていく。
騎士の姿が少しずつ戻る。
「……ああ。」
「そうか……。」
微笑み。
「ありがとう。」
その瞬間。
光が弾けた。
■戦場へ帰還
アレンが目を開く。
黒影の胸。
核は――消えていた。
赤い光が静かに崩れていく。
黒影が膝をつく。
「……システム。」
「停止。」
巨大な身体が崩壊を始める。
セラが呟く。
「終わった……?」
レヴァルは笑う。
「やっとかよ……。」
しかし。
アレンだけは空を見上げていた。
その視線の先。
王都の黒い魔法陣は――まだ消えていない。
そして玉座の王が、
ゆっくりと立ち上がる影が見えた。




