第十四話:王命権限
ドクン――。
戦場全体が脈打つ。
地面ではない。
空でもない。
まるで国そのものが鼓動しているようだった。
王血兵たちが一斉に動きを止める。
黒影もまた、剣を下ろした。
「……何だ?」
レヴァルが眉をひそめる。
セラは空を見上げる。
王都の方角。
巨大な黒い魔法陣が回転している。
アレンの表情が変わった。
「繋がった……。」
■王命権限
黒影がゆっくりと口を開く。
「王命権限。」
「接続率――四十%。」
その瞬間。
黒い魔法陣から一本の光が降りる。
黒影の胸へ突き刺さった。
ズォォォォ……
漆黒の鎧が変化していく。
肩当てはさらに巨大になり、
剣は禍々しい大剣へと姿を変えた。
赤い瞳が光る。
「能力更新。」
「完了。」
■圧倒
何もしていない。
ただ立っているだけ。
それなのに。
兵士たちが膝をつく。
「立て……ない……。」
「息が……。」
セラでさえ一歩後ろへ下がる。
レヴァルだけは笑った。
「最高だ。」
「ここまで来ると笑うしかねぇ。」
■黒狼、限界突破
レヴァルは大剣を肩へ担ぐ。
「アレン。」
「時間くれ。」
アレンは頷く。
「三十秒。」
「十分だ。」
レヴァルは静かに目を閉じた。
戦場の音が消える。
呼吸だけが残る。
「黒狼式……」
「最終奥義。」
空気が震えた。
大地が軋む。
兵士たちが息を呑む。
「なんだ……?」
レヴァルがゆっくりと剣を握る。
「――狼王解放。」
ドォォォォォン!!
黒い衝撃波が戦場を駆け抜ける。
彼の背後に巨大な黒狼の幻影が現れる。
その咆哮だけで王血兵が吹き飛ぶ。
セラが目を見開く。
「これが……。」
アレンも驚く。
「隠していたのか……。」
レヴァルは笑う。
「一回しか使えねぇからな。」
■激突
黒影が動く。
レヴァルも走る。
ドォォォン!!
剣と剣が激突する。
衝撃で雲が裂けた。
レヴァルが押す。
黒影も押し返す。
互角。
「おおおおおっ!!」
レヴァルの雄叫び。
黒狼の幻影が牙をむく。
その一撃が黒影の胸へ直撃した。
バキィィィン!!
黒い鎧が砕ける。
「損傷率三十八%。」
黒影が初めて大きく後退する。
しかし
黒影は剣を地面へ突き立てた。
「王命権限。」
「追加承認。」
空の魔法陣がさらに輝く。
アレンの顔色が変わる。
「まずい!」
「まだ上がある!」
黒影の身体へさらに膨大な力が流れ込む。
砕けた鎧が再生する。
いや。
再生ではない。
さらに厚く。
さらに巨大に。
レヴァルが舌打ちする。
「チッ……。」
「キリがねぇ。」
■白銀の決意
アレンが前へ出る。
白銀剣が静かに輝く。
「レヴァル。」
「よく時間を稼いでくれた。」
レヴァルは息を切らしながら笑う。
「次はお前の番だ。」
セラも横へ並ぶ。
「三人で終わらせる。」
アレンは首を振る。
「違う。」
「ここは俺一人で行く。」
二人が驚く。
「白銀剣には……」
「まだ使っていない力がある。」
右腕が震える。
血が指先から滴る。
「これを使えば。」
「俺はもう後戻りできない。」
レヴァルがニヤリと笑う。
「だったら。」
「後ろは俺たちが守る。」
セラも剣を構える。
「行って。」
アレンは静かに頷いた。
白銀剣を両手で握る。
その瞬間。
刀身に刻まれた古代文字が次々と輝き始める。
「白銀剣――」
「第二解放。」
白い光が天を貫いた。
遠く離れた王都で。
玉座に座る王が初めてゆっくりと目を開く。
「……そこまで辿り着いたか。」
王は静かに笑う。
「ライゼルの末裔。」
「ならば、私も動こう。」




