第十三話:黒影融合
黒い光が空を埋め尽くす。
王血兵。
処刑騎士団。
倒れた兵すら。
全ての身体から黒い粒子が抜け出し、一つの場所へ集まっていく。
黒影。
「……何だ、あれ。」
レヴァルが笑みを消した。
セラは剣を握る。
「あれを完成させたら駄目。」
アレンは白銀剣を構えたまま答える。
「融合だ。」
「王血兵全員の力を、一体に集約している。」
黒影は静かに告げる。
「第二演算。」
「戦場統合。」
「開始。」
ドォォォォン!!
黒い柱が天を貫く。
大地が揺れた。
■融合体
光が消える。
そこに立っていたのは、
さっきまでの黒影ではなかった。
全身を覆う漆黒の鎧。
肩から伸びる黒い外殻。
背中には六本の刃のような翼。
その姿は、人とも騎士とも呼べない。
「……化け物。」
セラが思わず呟く。
レヴァルだけが笑う。
「いいじゃねぇか。」
「最初からそれで来いよ。」
融合黒影は静かに剣を構えた。
「戦闘能力。」
「更新完了。」
■瞬殺
姿が消える。
「速――」
レヴァルが言い終わる前だった。
ドゴォォン!!
地面へ叩きつけられる。
鎧が砕ける。
土煙が舞う。
「レヴァル!」
セラが叫ぶ。
返事はない。
融合黒影は止まらない。
次の瞬間にはセラの目前。
「っ!」
剣を合わせる。
ガキィィィン!!
受け止めた。
だが。
衝撃だけで吹き飛ばされる。
森を貫き、
巨木を何本もへし折りながら止まる。
アレンの額に汗が流れる。
「……ここまで。」
「強化されるのか。」
■白銀剣
アレンは静かに息を吐く。
「父上。」
「ここから先は。」
「あなたの力ではなく。」
「俺の覚悟です。」
白銀剣が眩く輝く。
その光は先ほどよりも強い。
戦場全体を白く染めた。
融合黒影が初めて反応する。
「高出力確認。」
「危険度上昇。」
■一騎討ち
アレンが踏み込む。
白銀。
黒。
二本の剣が激突する。
ガガガガガッ!!
火花ではない。
白と黒の光が爆発する。
一撃。
二撃。
十撃。
二十撃。
互角。
兵士たちは目で追えない。
「見えない……。」
「速すぎる……!」
融合黒影が静かに言う。
「解析。」
「完了。」
アレンの剣筋を完全に再現する。
しかし。
アレンは笑った。
「それでいい。」
融合黒影が止まる。
「?」
■策
レヴァルが瓦礫の中から立ち上がる。
顔中血だらけ。
それでも笑っていた。
「よう。」
「時間稼ぎ、ご苦労。」
アレンが答える。
「十分だ。」
黒影は二人を見る。
その瞬間。
セラが背後へ回っていた。
「そこ!」
一閃。
黒い翼の一本が斬り落とされる。
融合黒影が初めて大きく体勢を崩した。
「損傷確認。」
「修復――」
「させるか!!」
レヴァルが飛び込む。
黒狼式・戦域圧縮。
空間が軋む。
融合黒影の動きが鈍る。
アレンが叫ぶ。
「今だ!!」
三人が同時に飛び込む。
白銀剣。
黒狼の大剣。
剣姫の黒剣。
三方向から放たれる渾身の一撃。
ドォォォォォン!!
爆発。
黒い鎧に大きな亀裂が走る。
戦場が静まり返る。
煙の向こうで、
融合黒影が初めて片膝をついた。
レヴァルが息を吐く。
「……効いた。」
セラも笑う。
「やっと。」
だが。
アレンだけは剣を下ろさない。
「違う。」
「まだ終わってない。」
亀裂の奥から、
赤黒い光が漏れ始める。
融合黒影がゆっくり立ち上がる。
「第三演算。」
「解放条件達成。」
「――王命権限、実行。」
その言葉と同時に、
戦場全体に禍々しい鼓動が響いた。
アレンの顔色が変わる。
「まずい……。」
「本体と繋がる気だ。」
遠く離れた王都の空に、
巨大な黒い魔法陣が静かに浮かび上がった。




