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風天使と話し合い

 エルとの話し合いが終わった次の日、スメラギ製薬の会議室で僕はエアロードさんと対面してこれからのことについて話しをしていた。これから大規模ライブ大会終わるまで付き人みたいな感じでいるよって話を。

 当然エアロードさんはエルについて心配していた。エルの親友だからかそこらへんの理解度はやはり僕よりも高いらしい。確かに何も言わずに来てたらギクシャクしていた可能性はあっただろう。でもちゃんと話せば彼女は分かってくれるんだ!!



「って感じで説得して来たからエルのことは大丈夫だよ!!!」


「いつか刺されるわよアンタ」


『それについては否定出来ないなぁ……』



 説得について話したら以上の反応をいただきました。しかも冗談抜きの真顔で、本気で心配しているのか冷や汗流しながら。

 あと否定して欲しいんだけどリルナ。それじゃあまるで僕が女心を弄ぶクソ野郎みたいじゃないか。僕は常に本心で接しているだけだし、恋愛的な意味で好きなのはエルだけだよ?



『でもお兄さん、結構女好きっぽいし。目の前の緑天使とかに告白されたら舞い上がるんじゃないかな?』


『否定はしない』


『そこは否定してほしかったなぁ……。あっ、否定して欲しいって思ったのこういう事か』



 いやだって可愛い女の子に好きって言われたらそりゃ嬉しくならない?それが僕の好みの頑張る女の子だったらなおのことだ。まぁそう上手くいくことなんてそうそうないからこそ人生って感じだし。前世でどんな行いをすればそんな幸運が舞い降りるんだろうね。



『魔王の一人でもぶっ殺したり?一人除いて大体被害規模デカい化物共だし。万年レベルで討伐されずに生き残ってる連中ばっからしいけど。あー、でも二千年前くらいに一人殺されたとかなんとか姉さん達に聞いたことがあるようなないような……』


『つまり世界を救うレベルで頑張らなきゃいけないという事では?実質不可能と言っているようなものでは?』



 そこまでやれる人というのはどういう人なのか。強い信念があったりするのだろうか。少し気になるが今大切なのはこちらをジト目で見てくるエアロードさんへの対応だ。

 今回スタッフとして活動する我が社の人と顔合わせを終わらせて僕が彼女のお世話をすることになった経緯を伝えている。まぁメンタルが弱っているとかそういう事を言えば確実に否定するだろうことは間違いないので顔見知りだからで押し通しているが。



「もう決まっていることにうだうだ言う程子供じゃないから受け入れるけど……。本当にエルのことはいいのね?」


「うん。普段だったら流石にエルを優先するけどね。だけど大勢の人が関わって成功させようとしている音楽フェスが近くにある上に、それにエアロードさんも参加する。それなら僕は成功させる手伝いをしたいよ」



 本来だったら関わることなどなかっただろう。精々テレビで配信を見て楽しむくらいだ。だけど縁があったのかこうして少しでもその活動に関わることになるのであれば全力で支えるしかない。頑張っている人が全て報われるのはありえないけれど、報われて欲しいと思うのは間違いではないと断言出来るのだから。



「ということでこれからしばらく僕は全力でエアロードさんを見続けて助けるから何かあったらすぐに言ってね!!パシリも化粧も髪の手入れもやるよ!!!」


「パシリはともかく他の二つは出来るの……?」


「うん、まぁ素人かもだけど。エルがそういうの無頓着だったから全力でやってるよ」


「あの子は、本当に……。プライベートで男に髪を触らせることの意味ってのを考えなさいよ……」



 エルにやってもらいたいことはいくつかあるが、特に銀色の輝く髪の手入れはちゃんとしてほしかった。折角綺麗な髪をしているのにお風呂上りタオルで拭いただけだったのを見た時は思わず絶句したものだ。みかねてドライヤーをかけるのをやり始めたらいつの間にかそれが日常になっていたけど。

 毎日毎日サラサラのいい匂いのする髪の手入れをすることになったものだから滅茶苦茶勉強したよ。僕のせいでこの髪が損なわれるとか考えたくもなかったし。

 タオルで髪をごしごしするのダメなんだってね。色々と勉強してたら楽しくなってきてドライヤー新調したのもいい思い出だ。流石に高すぎるのには手が届かなかったけど。高いので7万円超えるとか凄いね。



「男に対する警戒心のなさに関しては全力で同意するからエアロードさんからも一度言ってほしいかなって」


「それ言ったら余計なこと言うなって殺すような視線で射抜かれそうだから嫌よ。エルって一度怒ったら機嫌直るのに時間かかるんだから」


「確かに……プリン勝手に食べたら二日くらいむくれてた……」


「あの子人生エンジョイしてるわね。今までが頑張りすぎと言えばそこまでだけど」



 こうして話していると身長差でエルの方がお姉さんのようだと思っていたが、関係性的には逆なのだと理解出来る。天然過ぎるエルに対して世話焼きなエアロードさんという関係だ。ただし私生活はエアロードさんも大概なのでそこでバランスを取っているのかもしれない。



「なんか不愉快な事考えてない?」


「いや別に。ただ単にこれだけしっかりしているなら部屋もちゃんとすればいいのにって思っただけだから」


「思っていること垂れ流せばいいってわけじゃないって教えないと駄目なの???」


「いやこれに関しては言っておかないとまずいと思って……。部屋汚いとまた風邪ひくことあるかもしれないよ?体力ない時にあの部屋だと心も休まらないだろうし。なんなら定期的に掃除しに行こうか?」


「アイドルの部屋に男が度々来ることの危険性考えてくれないかしら……」



 呆れたようなジト目で見てくるエアロードさんの言葉に一応は納得する。でも同時にこの人絶対に変わらないなとも確信する。エルにしろエアロードさんにしろ、どちらも自分のことを後回しにする傾向が高いと思う。

 彼女達が過ごしてきた環境がどんな物なのか気になってくる。悪魔と戦うってことでかなり厳しいであろうことは何となく想像はつくが。



「さて、時間も近いしそれじゃあ行くわよ。私の付き人ならついてくるでしょ?」


「どこにでも行くけど、どこに向かうの?スケジュールとかまるで知らないんだけど」


「なんで知らないのよ。そこらへんの管理も仕事の内じゃないの?」


「だってエアロードさんの許可なくそういうの知るってどうかと思わない?この付き人仕事だってエアロードさんが拒否したらそれまでなのにその状態でスケジュール覚えてたら問題だと思うよ」


「それは。確かにそうね。ええ、その判断はいいと思うわ」



 うんうんと頷くエアロードさん。やはり納得出来る経緯とかあれば彼女の説得はやりやすい。感情的に見えてそういうところしっかりしている。

 しっかりしているように見えて結構感情優先するエルと合わせたらちょうどいいのかもしれない。彼女達の親友関係というのは絶妙な形で成り立っているようだ。



「私が向かうのはとあるホテル。海外のミュージシャンが何人か泊まっている高級ホテルよ。そこで人と会う約束をしているの」


「そんなところにいるミュージシャンなんてとんでもないVIPなんだね……」


「ええ、それは当たりよ。間違いなく彼女はVIPだもの」



 エアロードさんはニンマリと笑って指を突きつける。その仕草はその容姿に非常に合わさってとてもよく似合っている。



「私達がこれから会うのは『世界の歌姫』、ジャネット・シックその人よ!!!」


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