第109話 帰路
メルドゥースを出発したアルクス達は久しぶりの帰郷を振り返り、今の思いを話し合っていた。
「久しぶりのメルドゥースだったけど、あの時の料理があんなに流行っているとは思わなかったよ。」
アルクスは初めて「雷吼狼牙」に出会い、宿屋の親父さんと帝国料理を試行錯誤して作り出した時のことを思い出した。
「アルクスのおかげだよ!商会も協力して他の街に売り込んだりしているみたいだよ。」
「そういえば王都にも支店を準備しているって言ってたね。」
「メルドゥースの森は全然魔獣がいなかったけど王国にはあまり魔獣がいないの?
魔獣がいないけど動物が多くてなんだか賑やかだった。森全体に活気があふれていた。」
「へぇ、そんなこともわかるんだ。魔獣は奥の方に行けばいるけど、街の近くまでやってくることはほとんどないかな。昔、修行のためにブラッドタイガーと戦ったりしたよ。」
「そうなの…、結構昔から大変な思いをしていたのね。あと皆採集を全然していないのか実りが豊富だったわ。子ども達には採集に良いポイントを教えておいたけど。」
「ありがとう、孤児院の子ども達には自分で生きていく力を身につけてもらわないとね。でも採集のために森には定期的に入っていたんだけどな、僕達がいた頃から気づけてなかったのかな。」
アルクス達がメルドゥースでのことを話している中、バルトロは普段以上に静かで、何かを考えているのか無言であった。
何かあったのかと思い、アルクス達が尋ねるも「これは自分で解決しなければいけない問題だ」と言われ、皆追求しないことにした。
スペルビアは上手くやっているだろうかという話になった際にはバルトロも反応していたが、そんなにすぐに状況は変わらないだろうと結論付けて旅路を急ぐことにした。
王都を目指す道中、前回の旅路とは違った静けさをアルクス達は感じ取っていた。
クリオから「王国って帝国と違って静かなのね」と言われたが、アルクスは今が特別で普段はもう少し賑わっていることを伝えた。
そして何事もなく王都へと辿り着いた。
「まずはルーナに会うためにも家に向かおうと思う。」
「私もルーナに会いたいから一緒に行くよ!」
「アルクスの妹よね、ちゃんと挨拶しておかないと。」
アルクス達が家へと向かう途中、ゲネシスの教会を覗くと戦地から避難してきたらしい人々が集まっていた。
アルクスの父、クレメンテクスも戦争で傷ついた人々に優しく奉仕している様子だった。
「アルクス、会いに行かなくていいの?」
アルクスは自分が幼い頃から知っている厳しくも弱きものに優しい父の姿をそこに見た。
そしてアリシアに今はいいとだけ言い、匿名で寄付を置いて立ち去った。
家紋を記された袋に金貨が入っているため、誰が寄付したかは一目瞭然であったが。
「アルクスのお父様って強そうね。優しそうに見えたけど何だか覇気に溢れていたわ。」
「昔は結構武闘派として活躍していたらしいよ。聞いた話では今ではすっかり大人しくなったらしいけど、僕からするとまだまだ結構荒っぽく感じるけどね。さて、もうすぐ着くよ。」
その日の夜、匿名の寄付を見つけたクレメンテクスはアルクスが教会に立ち寄ったことを察した。
周囲に息子の影を探すも、時既に遅く見つけることはできなかった。
「立ち寄ったのであれば挨拶くらいすれば良いと思うが、難しいか…
明日は久しぶりに家に帰ることにするか。ルーナに呆れられてしまうかな。」
クレメンテクスは皆が寝静まった教会で、近くにいるもののバラバラになってしまった家族に思いを馳せるのであった。




