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黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-  作者: 八束ノ大和
第五章 中央編

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第103話 白黒

 アルクス達は都の中心の巨大な建造物の謁見の間へと案内され、巨大な白い龍と出会った。

龍が眼を開くとアルクス達の足元が光り出した。光はアルクス達へと絡みつき、体の中を探る様に動き回った後、消えていった。

その時、何かを感じ取ったのかアーラも龍珠の中から外へと出てきた。


『ふむ、どうやら神の手先はいない様子じゃな。よくぞお越しくださった、若き龍騎士達よ。

 そして龍の御子よ。

 我が名は純白龍と呼んでいただこう。

 まずは八竜震天の試練達成おめでとう。道中の試練はいかがだったかな。』

『ありがとうございます。すみません、あの…今の光は一体なんだったのでしょうか?』

『あぁ、すまない。説明しておらなかったか。

 神の手先が入り込んでいないかを調べるための、ちょっとした習慣である。』


アルクスは神の手先という言葉が気になったが、深く追求せずとも必要あれば教えてくれるだろうと思い、先に質問に答えることにした。


『八竜震天の試練はそうですね…最初は最低限の力を試しつつ、その後は少しずつ成長を促している様な感じがしました。』


純白龍は驚きと共に嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。


『ほぉほぉ、そうか理解しておったか。其方の感じた様に八竜震天の試練は昔は龍騎士見習い達の修練の1つであった。今となっては龍騎士になる者もほとんどおらぬからな。』


それは何故かとアルクスが口に出して問おうとしたところ、純白竜は話を続けた。


『我がここを治めてからもう長くなるが、以前とはすっかり様変わりしてしまった…

 昔の話をしたいところだが、話が長くなるのでまたの機会にしておこう。

 其方達は藍碧龍に見出され、天空竜に案内されてここに来たのだったかな。』


おそらく藍碧龍か他の龍王から話を聞いたのか、純白龍は経緯は理解しているといった様子で話していた。


『長話をするのも良くないな、とりあえずは見てもらいたいものがある。

 ついてくると良い。』


純白龍は人型になり、知的な壮年の男性の姿になったかと思うと、広間の中央に立ち地面に手をかざし、アルクス達が聞き取ることのできない言葉を発した。

するとアルクス達が過去に転移を行なった時と同様の感覚に包まれた。



しばらくすると今までいた場所と似たような空間へと辿り着いた。

そこには純白龍と似た巨大な龍が寝そべっていた。ただ純白龍とは違い、その身は黒々と輝いていた。

アルクス達に気がついたのか、眼を開けると咆哮の様な大欠伸をした。


『兄者か。

 なんだ、そこにいるのは人の子か?珍しいな。龍の御子もいるのか。なかなか面白いじゃないか。俺の名は漆黒龍と呼んでくれ。そこにいる純白龍の弟だ。』


漆黒龍はそう言うと人型へと姿を変えた。

純白龍と同じ顔をしているものの、肉体は逞しく、目はギラギラとして戦いを求めているかの様にも見えた。


『どれ、ここまで来たのなら細かいことは抜きだ。とりあえずお前達の全力を見せてくれ!』


漆黒龍が地面を踏みしめると強力な龍陣が展開され、アルクス達は自分達の力の維持で精一杯になった。

どういうことかと思い、アルクスが純白龍の方を見ると苦笑していた。


『すまないが、拳じゃないと語り合えないというやつなのだ。付き合ってもらえないだろうか。』


アルクスは覚悟を決めて、皆を鼓舞した。


『八竜震天の試練の続きだと思えば良い。今までに得た力を漆黒龍様にお見せしよう!』


全員が頷き、双竜を倒した以上の全力を出して、アルクス達は漆黒龍へと立ち向かった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


結論として、アルクス達は全く歯が立たなかった。

龍陣を展開して龍脈の力を使って渾身の一撃を何度も放つも漆黒龍に届く前に攻撃が流されてしまい、そもそも攻撃を当てることができず、漆黒龍のそっと撫でる様な動作で1人ずつ気絶されて行き手も足も出ないとはこういうことかと理解した瞬間にアルクスも意識を失った。


『お前の見立てはどうだ?』

『弱い、が最低限の基礎はちゃんと学んでいる様子だな。』

『ならば成長の余地があるということだな。任せたぞ。』

『あぁ、たまには若人を鍛えるというのも良いもんだ。

 もうすぐ夜になるし、見せてやるとするさ。』


純白龍は姿を消し、そこには漆黒龍と気を失ったアルクス達が残っていた。


しばらくして全員が起き上がると漆黒龍が『そろそろ時間だな…』と呟いた。


『これからいいと言うまでお前達は俺の後ろでじっとしていることだ。決して動くんじゃないぞ、動いたら命の保証は無いからな。』


アルクス達が頷くと漆黒龍の前の空間に亀裂の様なものが入り、すぐに扉の形へと変わった。

そしてその扉が開くと中から形容し難い魔獣とも言えない触手の生えた何かがズルりと這い出てきた。

アルクス達はその姿を見るだけで、精神にダメージを負っていく様な感覚になった。


『さて、今日はどんなもんかなっと!』


這い出てきたものに向かって漆黒龍が殴りかかると簡単に砕けてその身が弾け飛んだかと思うと、飛び散った肉塊は個別に動き始めて敵意を持って漆黒龍へと襲いかかった。


『そうこなくっちゃな!』


漆黒龍は周囲一帯にブレスを吐くと肉塊達は燃え尽きて本体らしきものだけが残った。

怒り狂ったかの様に触手を振り回すも、アルクス達の攻撃をいなしたように全く漆黒龍には届かずに徐々に触手の数を減らしていった。


『今日はハズレだな。』


触手がなくなり成す術もなくなった様に見えた何かは漆黒龍を倒すことを諦めて自爆することを選んだのか、徐々に体を大きく膨張させていった。


『ヤベッ、まずそうだが仕方がないか。』


漆黒龍はそう言って龍の姿に戻るとバクンと残った本体を飲み込んでしまった。

その直後、口から爆風が少しだけ出て何かが爆発したことがわかった。

そして何事もなかったかの様に扉を閉めると扉はそこには何もなかったと言うかの様に虚空へと消えていった。


『さて、今の見てどう思った?』


突然の漆黒龍からの質問に何を答えたら良いかはわからなかった。

だが1つだけ明確に感じた感情があったため、アルクスはそれを答えた。


『怖かったです。魔獣の様なものもそうなのですが、それがやって来た扉の奥に言い知れない恐怖を感じました…』


アルクスの言葉に他の皆も同意を示した。


『そうか。それは正しい感情だな。

 あれはこの世界の生き物ではないし、あれがやって来た場所もこの世界ではない。』


突然の言葉に皆理解が及ばなかったが、漆黒龍は今はそれで良いと言った。


『しばらくあれを退治するのに付き合ってもらう。

 もちろん今のお前達だと無理なので、最低限強くなってもらうし、強くしてやる。

 まぁ八竜震天の試練を合格した褒美だと思って楽しんでくれ。

 戦いの報酬は戦いってな!』


漆黒龍は笑いながらアルクス達に今後の話をしたが、苦労して乗り越えた試練の報酬が見たこともない生き物との戦いの日々だと聞かされて、アルクス達は少し今後に不安を覚えたのだった。

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